不思議な子ども3
リッチーを助けてくれた子どもは、名前を「白骨」といった。
少年のように見えたが、一応女の子らしい。
変わった名前だ。
ググっても載っていないような中国の山の方から来たらしい。
中国ではこのような名前はポピュラーなのだろうか?
中2の葵よりも背がかなり低く、小学校低学年くらいに見える。
ハンバーグを遠慮なく堪能した後、白骨は葵の家に泊まることになった。
中国から日本にやってきたばかりで身寄りもないらしい。
幼い見た目に反して尊大、かつ意外と図々しい白骨なので、身寄りがないと聞いても心配はしなかったが、リッチーを助けてくれた恩義もある。
葵は白骨とリッチーを連れて、帰途についたのだった。
しかし、見知らぬ子どもを連れ帰っては親がうるさいだろう。
ドラえもんのように公認の居候というわけにはいくまい。
幸い、葵の親は仕事も忙しくそこそこ放任主義である。
一般的な親と同様、葵の成績に口うるさくはあるが、妙に抜けたところのある、のほほんとした母親だ。
あの母あってのこの子あり、なのか。
葵が母親の目を盗み、白骨を自室に入れるのは造作も無かった。
――翌朝。
「あの~、バイグさん?もう起きました?」
白骨より早めに起きて春季講習のために支度をした葵が、再び部屋に戻ると、さっきまで寝ていたはずの白骨の姿がない。
「あれ?」
ベッドの上にはしわくちゃのままの寝具がある。
「なんだ?勝手に入ってくるな!」
なぜか頭の上の方から声のような音がした
葵の頭の中で聞こえる例の「念話」だ。
天井を見上げると、シーリングライトのところに忍者のように白骨がへばりついていた。
「?!」
思えば昨日、リッチーを助けてくれた(捕獲した?)時も、その身のこなしが素早すぎて何が起こったのか分からなかった。
体重が軽そうだとは言え、白骨は一体どうしてこんなことができるのか。
山奥の田舎育ちということだけで、説明できるのだろうか。
いずれにせよ、彼女は人並外れた身体能力を持っているようだ。
「バイグさん!?なんでそんなとこにいるんですか!?しかも入って来るなって、ここは私の部屋だよ!!」
「そんな警戒心のないことでよく今まで生きて来られたな?海に囲まれた孤島の娘よ!」
白骨はするりと音も立てずに床に降りてきた。
まるで虫か何かのようだ。
「警戒心って・・・。日本は安全な国なんですよ。とにかく!私は学校があるからそろそろでかけますからね!昨日のことがあるから帰ってくるまでここにいてもいいけど、変なことしないでくださいよ!」
白骨は葵の言葉を気にとめるでもなく、勉強机の上のスタンドライトをつけたり消したりしている。
そこに突然、
「何をひとりで喋ってるの?葵、また遅刻するじゃないの!?」
とノックもせずに、出勤の身支度を済ませた母が入ってきた。
「!!」
あわてて白骨を隠そうときびすを返したが、そうするまでもなく、既に机の上に白骨はいない。
「だっ、大丈夫、大丈夫!ちょっと独り言言いながら探しものしてただけだから~、ははは、行ってらっしゃい。」
「もー、早くするのよ」
母の足音が遠ざかったのを耳で確認すると、天井に目をやる…。
「いた!」
先ほどと同じく、白骨は天井に器用にへばりついている。




