不思議な子ども2
愛犬リッチーとの散歩の途中、思わぬ事故に巻き込まれた葵。
リッチーを助けてくれたのは不思議な人物だった―。
リッチーは生きていた!
ようやく我にかえると、安堵と混乱の入り混じった感覚がこみあげ、葵の目から涙が自然と流れてきた。
「あの!助けてくれてありがとうございます。」
深々と頭を下げると、その人影が目の前の道路に降りてくるのを気配で感じた。
―男の子?
トラックの上に登り、逆光になっていたので分からなかったが、降りてきた人物は葵よりもずっと小柄だ。
髪の毛は長くボサボサで、眼光は鋭い。
しかも、よく見るとボロボロの布切れでできたマントのようないで立ち。
10歳くらいだろうか。しかし、なんとも異様だ。
「啧!这个小女孩无法理解我说的话。」
その少年の口から出てきたのは外国語らしきものだった。
何を言っているのか全く分からず、困惑する。
すると、葵の頭の中に直接語りかける何かを感じた。
(何を言っている!これは私の獲物だ。お前にわけるつもりなどない。文句があるならそのまま頭の中で言葉を綴れ。)
「えっ、獲物!?」
思わず声を出してしまった。
少年の声が直接頭の中に、はっきりと聞こえてくる。
(まさか、これ、テレパシー?)
声を出してもいないのにイヤホンで音を聴いたように自分の考えたことも頭の中で響く!
(そうだ、心の中で念じればいいのだ)
現実としては荒唐無稽なシチュエーションだが、ファンタジーにはよくある設定。
普段から漫画を読んだり、ぼーっと妄想したりしている葵には、なぜだかすぐにこの状況が腑に落ちた。
意外と順応が早いのが葵のよいところでもある。
(あの、その犬私のなんです。助けてくれてどうもありがとうございます。)
少年が「獲物」と言った理由が分からないが、そのまま念じ続ける。
(助けた?バカを言うな!捕らえたのだ。)
少年は即座に答える。
(え?助けてくれたんじゃないんですか?捕らえるって…どうするつもり?)
(食うために決まっているだろう!奴らからようやく逃れたが、もう何日も食べていない!こんなときに見つかってしまったらどうなるというのだ!返すつもりはないぞ!)
「食べるぅー!!!!!?」
思わず声が出てしまう。
(食べるなんてそんな!もっと…そうだ!美味しいものをあげますからどうかやめてください!)
――数分後。
二人の姿は葵の行きつけのファミレス「ジェリーズ」の中にあった。
目の前の不思議ないでたちの少年は、ものすごい速さでハンバーグをたいらげている。
(この食べ物はなんという!?犬の肉よりも確かにうまいな!!!)
葵は5枚目の皿の上のハンバーグが無遠慮に小さくなっていくのを眺めながら、財布の中身を頭で計算した…。
自転車置き場に繋いだリッチーは元気である。




