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第56話、国際会議

 


「遂に帝国が動き始めましたか・・・」


 アルファス連邦国の王であるレイルズ•フォン•アルファスは執務室でそう言った。彼の前にはステータス表示の時のように未来のパソコンみたいな空中に表示される物が浮かんでいた。

 そしてその画面には他国のエリフィス教諸国の王や代表が映っていた。これはまず集まれ無いエリフィス教諸国の王や代表が会議をする為に使う魔道具であり、自国に居ながら会議ができる為、非常に重宝されていた。

 もちろん画像だけではなく直接会う事も重要な為、他国に行く事もあるのだが、今はこの魔道具で会議を行っていた。


『あぁ、帝国に潜入している密偵からの報告ではここ数年、物資の集積や徴兵が行われているようだ。』


 そう言ったのはルクレール王国国王であるグレン•レア•ルクレールである。ルクレール王国はエリフィス教諸国中最大規模を誇る大国であり、今回みたいな対ルフ教諸国の会議では情報を提供する国家でもある。最もそれぞれの諜報機関が収集してきた情報はエリフィス教諸国の各諜報機関で横の繋がりにより共有されるが、規模や練度が最大規模のルクレール王国の諜報機関は周りのエリフィス教諸国から見ても非常に優秀であった。


『また戦争ですか。』


『向こうから攻めてくるなら戦うしかありませんね。』


 そう言ったのはアルマス王国のセーラ女王である。アルマス国はいわゆる小国であり(大きさとしてはドイツ程)国家規模では到底帝国や他の国家に勝てない。だが、国民は愛国意識が強くアルマス王国軍は精強で有名であった。


『軍事力の強化は必須だな。装備の共通化は大方完了している。』


『ええ、ギルドの方も最大限、協力してくれるそうです。』


 ここで言うギルドは主に商業ギルドの事である。他にも冒険者ギルドなどあるが、冒険者ギルドは国と国の争いには不介入が原則であり、どの組織であっても協力してくれる事はまず無い。

 一方の商業ギルドはその国の王族や商会と密接に結びついている為、非常に協力的である。特にエリフィス教諸国に対しては自由貿易体制の為、商業ギルドとしては無くなってもらったら非常に困るのである。


『スウェード大陸にはルフ教諸国軍の侵攻は位置•距離的に考えてまずあり得ませんからスウェード大陸諸国を後方支援地としましょう。』


 スウェード大陸は地球世界で例えるとオーストリア大陸のような位置関係の大陸である。ルクレール王国などがあるエルクシオ大陸がユーラシアとなり、アルファスが日本となるが、大まかにはそういう位置関係である。

 エルクシオ大陸とスウェード大陸は1500km程離れているが、いくつもの諸島があり、それぞれが国家を形成している。基本的にスウェード大陸は亜人族国家が多い為、亜人族を認めているエリフィス教諸国とは非常に仲が良い。

 そもそもスウェード大陸にあるほぼ全ての国家の国教がエリフィス教な為当たり前なのだが、帝国などのルフ教諸国に対する防波堤とエルクシオ大陸のエリフィス教諸国を見ており、その防波堤が無くなると亜人族国家と友好的な国家が無くなってしまう為、戦争時には援軍を派遣するなど非常に協力的である。

 またスウェード大陸は魔石などの資源が豊富であり鉄鉱石の産出量も断トツに多い。またドワーフ族などの国家では非常に技術力が高く質の高い魔道具を他国に輸出しており、その性能は他国でも非常に重宝されている。


『我が国としては女神エリフィス様に誓い最大限協力しよう。ルフ教の教えは断じて認める事はできん!』


『同感だな。彼らの教えは我々としては危険過ぎる。』


 ルフ教諸国にしてみれば亜人族は獣と人が入り混じった汚れた種族という認識であり、そんな教えのルフ教は他のエリフィス教諸国より危険視されている。また基本的に奴隷を禁止しているエリフィス教と違い奴隷を推奨している為、それも危険視されている要因の一つでもある。


『海上からの侵攻はアルファス連邦国を拠点とするのがよろしいかと思いますね。』


『戦闘艦艇の整備なども可能だ。海軍としては最適な環境だな。』


 アルファス連邦国はアルファス領の時から交易などにより栄えた場所であり、その為艦船の整備拠点などや造船所が多数存在し、その能力は非常に高い。


「我が国としては問題ありません。」


『陸地からの侵攻はルクレール王国ですかな?』


 ルクレール王国は地理的に後方支援拠点国にピッタリであり、更にエリファス教諸国の中で国力•軍事力などのほぼ全てにおいて最大規模の国家であり、地球でいうとアメリカ的な立ち位置の国家である(ちなみにアルファス連邦国はイギリス)


『ルクレール王国が地理的にピッタリだろう。拠点国としての国力や軍事力も申し分ない。』


『敵の、ルフ教諸国軍の参加予想兵力はどのくらいになると推測している?』


 問題はその事である。帝国を含めルフ教諸国は10ヶ国程度とエリファス教諸国に比べて少ないが、軍事力は無視出来ない程の規模である。


「様々な情報を統合した結果陸上兵力が10〜20万。ワイバーンなどの航空戦力は200〜300騎。海上戦力は800隻程の戦列艦と20隻程の装甲艦程だと考えられる。」


 レイルズがそう言うといくつかの画面からため息が聞こえてきた。


『流石帝国。軍事力だけは強大だ。』


「我が国としては戦列艦は装甲艦の前ではただの的だ。こちらは装甲艦を中心とした方が良いだろう。」


 装甲艦の性能試験の結果、装甲艦は簡単に戦列艦を破壊出来るが、戦列艦は装甲艦を破壊出来ない事が明らかになっており、もはや戦列艦は戦力というより弾よけ程度にしか期待されてなかった。これがここ十数年で意識が変わったと言うから驚きである。


『そうは言うが装甲艦1隻辺りかなりの量の鉄が必要だ。1隻建造するだけでもかなりの国力が必要だ。』


 現実問題、近代国家には鉄がなければどうしようもないのである。日本も日清戦争で手に入れた国家予算3年分の賠償金を受け取り、真っ先に何をやったかと言うと八幡製鉄所の建築である。近代国家には何よりも鉄が必要なのである。


『だが、これからの時代。間違いなく戦列艦などの木造船は衰退する。代わりに台等してくるのは鉄で艦艇だ。古代文明の遺産を見たらそれはよく分かるのでは?』


 古代文明の魔導戦艦は材料は鉄、それを時空遅遠魔法により補強しているのである。その事は国家代表である彼等もよく知っていた。


『・・・・・・』


『多国籍海軍として戦うしかあるまい。何処の国も単独で帝国に勝てる国など無い。』


 地球の連合国やNATOと違ってエリファス教諸国軍参加国には仲が悪い国が無いというのが大きかった。普通、こんなにたくさんの国家が集まれば少なからず仲が悪い国家が参加するのだが、幸いにも全ての参加国が友好国であった。


「事後報告になりますが今回は精霊の協力を取り付けました。」


 レイルズがそう言うと画面から驚きの声が聞こえてきた。


『おぉ〜!!なんと!?』


『それは誠か!』


 精霊は基本的に人の争いには不介入であり、どちらか一方に就くことはあり得なかった。なのに何故エリファス教諸国に就くか?それは聖域のあるアルファス連邦国が帝国のすぐ近くにあるからという単純な理由だが、彼等はそんな事知る由も無い。


「全面的には支援出来ないが海流などでは出来る限り支援するとの事です。」


『流石アルファスだ。』


『自然がこちらの味方なら嵐で艦隊が全滅なんて事も無い!それだけでも海戦には多大な影響だ。』


 戦争に行った船を失う1番の理由は敵に攻撃されたからではなく、天候不良により沈没したのが1番の理由である。中には数百隻の艦隊が嵐に遭遇し1隻も戻ってこないなどもザラである。これが民間船なら海賊に襲われたなどあるが、軍船を襲う馬鹿な海賊など殆ど存在しない。

 

『問題は楽ですな。幾ら敵の侵攻する経路が限られているからとはいえ1ヶ所に10万などの単位で送り込まれたら戦線が崩壊する。さらに今回は魔導銃もある。シールスト戦役のようにはいかんぞ。』


『あれは敵が自軍の被害を無視して侵攻してきたから勝った戦争です。帝国はシールスト国程愚かでは無い。』


 彼等は帝国などのルフ教諸国を敵視しながらも侮る事は無かった。敵の戦力は非常に脅威であり、また戦術にも眼を見張るものがあるからだ。


『我々に戦争を仕掛けてくる時点で愚かですが。帝国の戦術には見るものがあります。帝国の国民軍。その方法を採用する事でこちらの戦力が増えたのも事実。友好国ならどんなに良かった事か。』


 そもそもまず初めに国民を兵隊にしたのはルフ教諸国が最初であった。向こうとしては戦力確保が目的だったのだろうが、当時のエリファス教諸国は騎士などが戦力の中心であり、今程実力主義では無かった。精霊術師に関しては例外的に今も昔も完全実力主義なのだが。


『だが、その一方で軍事に国力を注ぐあまり帝国民やその他のルフ教諸国民の生活は悲惨だそうだ。そもそも国民の為の貴族ではなく貴族の為の国民という考え方だからな。』


『反乱やクーデターが起きないのが不思議だ。』


 現代地球でいうと某半島北国家の事である。全く良くならない生活に度重なる徴兵、何故国民は蜂起しないとか?それはただ単に今を生きていくだけで精一杯でありとても蜂起なんかしている余裕など無いのである。更にどうせ蜂起を起こしても無理だと思い込んでおり、こういう国は意外にも中々しぶといのである。


「起こしたくても起こさない程、生活が悲惨なのでしょう。帝国を含むルフ教諸国にとって身分制度は絶対だ。生まれが全てを決める。奴隷が平民になる事は無いし、平民が貴族になる事は戦争で手柄を立てなければならない。その為には戦争に行くしか無い。」


 ルフ教諸国、エリファス教諸国、どちらにも貴族などの上流階級の人間は存在するが、そもそも理念が違う。エリファス教諸国は民の為の貴族であり、ルフ教諸国は貴族の為の民である。その為、ルフ教諸国の貴族は平民などの身分が下の人がいくら死のうと関係無いし、生活など関係無しに取れるだけ税をとっていく。


『悪循環ですね。とりあえずルフ教諸国の侵攻に備えて食糧などの備蓄を強化しましょう。』


「『『『『異議なし。』』』』」


 こうしてエリファス教諸国はルフ教諸国の侵攻に備えて準備を開始するのであった。




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