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第51話 不可解な事実

 


 ルクレール王国王都にある国立魔導研究所で何故シールスト国に魔獣が侵攻してきたのか研究を行っていた。

 モンスターテンペストという過去に数ヶ国を滅亡寸前にまでに追い込んだ人災、それがシールスト国で発生したからである。

 過去の文献によるとモンスターテンペストは妖精の怒りによって発生する事が既に判明しており、結果シールスト国は妖精の怒りを買って滅亡した事になる。

 シールスト国は妖精の森に対し何をしたのか?残念ながらシールスト国の人間は95%以上が魔獣の襲撃により死亡しておりテーラ地方の人々は何も知らなかった。

 しかしその証拠となる物が妖精の森付近で大量に放棄されていた、それは何かが入れてたと思われる樽であった。


「所長、この樽の中の成分は魔獣にとって強い拒否反応を示す成分でした。」


 顕微鏡みたいな魔道具で樽の中に残っていた液体を調べた結果を所長に報告した。

 この顕微鏡みたいな魔道具は解析鑑定の魔道具であり、古代文明の遺跡から発掘されたとても貴重なアーティファクトである。

 基本、セットするだけでほぼ全ての成分と効果が分かる優れ物であり、この施設でも2台しか無い魔道具であった。


「なに?じゃあこの樽の中の液体を妖精の森付近に撒いていたのか?」


「あ、いえ。この液体は一見ただの強い酸性の液体ですが燃やす事によりその成分を含んだ煙を発生させます。」


 そう言って職員は指を液体に付けると直ぐに皮膚が爛れた。

 しかし当の本人も所長も「なるほどな」と言うだけで気にも止めない、そして研究員は自分の指に回復魔法を掛けると爛れた指が元通りとなった。


「いや、だが。強い拒否反応を起こすような液体なら逆に襲ってこないんじゃないのか?」


「はい、そのはずですが。フィア?何か分からないか?」


 そう呼びかけると彼の身体からフワッと精霊が出てきた。

 フィアと呼ばれた精霊はこの研究員と契約している木属性の下位精霊である。

 研究員の殆どは何かしらの精霊と契約しており、その方が分からない事を聞けるからである。


『ん〜この液体は私達精霊からしても嫌な臭いがするよ。妖精なら尚更さ。』


 フィアと呼ばれた精霊は少しその液体の匂いを嗅ぐと嫌な臭いがだったのか直ぐ様離れた。


「それって遠く離れていても?」


『それは無いね、遠くに離れたら匂いも薄まる。』

 

「ますます分からんな。直接聞きに行くか?」


 所長が直接聞きに行くと言ったのは妖精の森に入って妖精に直接聞きに行くという事である。

 本来なら危険極まり無い行為だが、このまま調べても埒があかないと判断したようだ、しかし。


『それは辞めた方が良いよ。妖精の森、今凄く怒ってる。精霊王様や大精霊様じゃ無いと止められないよ。』


 精霊王や大精霊の言葉が出てきた途端直ぐに行く気は引っ込んだようだ。

 精霊王や大精霊レベルにしか止められない怒りに人間が首を突っ込んだって死ぬだけである。

 そもそも妖精に出会う前に魔獣に出会う確率の方が遥かに高かった。


「そんなにか!?いや、まぁ、モンスターテンペストが起きるくらいだからなぁ。」


「そうですね、大精霊と契約している人なんているわけありませんからね高位精霊なら多少なりともいますが。」


 過去の歴史を見ても契約した精霊の最高位は高位精霊であり、大精霊など1人もいなかった。

 大精霊に会うのは毎年アルファスで開かれている精霊祭に行けば大精霊がいる為簡単に会えるが、契約など過去に誰もいない。

 過去の文献で大精霊と契約したら寿命が縮まると書かれているが、大精霊と契約出来るなら縮まっても良いと思う人はたくさん居るが直ぐに死ぬ人間と契約する程大精霊は甘く無い。

 風属性の大精霊であるシルフィがレインと契約したのはシルフィがレインの事を認め、精霊視スキルを持っている為、寿命が縮まらない為である。

 また、精霊を可視化するには魔力が必要であり、下位精霊なら10程度、中位精霊なら30、高位精霊なら50程度である。

 しかし大精霊は1分間に100ほどの魔力消費の為、シルフィみたいに常に可視化する精霊はほぼいない。


「我が国に2人、アルファス連邦国に3人、スイレン聖王国に1人、フィーゼ魔法王国に1人の計7人か、」


「アルファス連邦国は実質4人でしょう。異常過ぎますよ。」


 ルクレール王国に2人居るうちの1人はアルファス家の人であり、実質的にルクレール王国は1人である。

 ちなみにルクレール王国の1人とアルファス家の1人を除き5人は軍の精霊使いである。


「全くだ。妖精の森は確か木属性の高位精霊だったよな?高位精霊なら大精霊か精霊王レベルじゃ無いと無理だな。ほんとシールストの奴らめ、何をしやがったんだ?」


「ほんとですよね。しかしシールスト国の連中もわざわざ妖精の森の怒りを買う事をしますかねぇ〜。」


 ただでさえシールスト国は14万の兵力のうち10万を投入したルシタニア侵攻作戦を行なっていた、負けたら国が傾く(実際負けたが)戦いで妖精の森にまでちょっかいをかけている余裕などあるはずが無かった。

 そもそも妖精の森に隣接している国家は定期的に討伐隊を組み魔獣を間引きする必要がある、だがシールスト国はそれを怠りルシタニア侵攻のみを考えていたと周辺諸国には見られていたのである。


「さぁな?それよりサッサとその液体の解析鑑定を終わらせて王宮に届けるぞ。」


「はい、分かりました。フィア、手伝ってくれ。」


 所長に急かされ相棒の精霊に手伝ってもらいながら、結局その日のうちに報告書を作成し、王宮へと提出した。

 他の国の研究所でも報告は同じであり、国の研究所では対応不可能な事態となった。


『はいは〜い!』


「大精霊様と契約している人か、そんな人居るわけないよな。あり得ん話だ。」


 研究者が自分の自室に戻っていった後、所長はそんな事を呟いた。

 そして、その大精霊と契約しているレインは学校がやっと始まり、第一次総合テストを受け終わっていた。


「レイン、テストどうだった?」


「まぁ、できたんじゃ無い?エルナは?」


 別にこの世界の学力レベルは地球に比べて低い。

 例えば基本教科の数学だと足し算•引き算•掛け算•割り算が出来ればほぼ全ての事が行える。

 文官として国に仕える試験でも中学1年レベルなのだ、大学を卒業した俺にとっては凄く簡単である。


「勉強する時間はいっぱいあったからね。ラーラは?」


「歴史がイマイチかな?カノンは?って、聞くまででもないか。」


「そうだね。」


 正直言って歴史が一番難しい。

 国語や数学、社会などは地球と対して変わらない為、簡単なのだが、歴史は一度地球の歴史を覚えている為、よくこんがらがって当初はよくミスをした。

 だが、言って千数百年の歴史で古代文明など殆ど解明されておらず、その内容は地球の二千年の歴史に比べたら非常に薄い。

 そしてエルナとラーラがカノンをからかっていると、ようやくカノンが話に入ってきた。


「ちょいちょい!なんで俺のは聞くまででも無いんだよ!」


「だってカノン、勉強苦手じゃ無い。今回のテストも上から数えるより下から数えた方が早いんじゃ無いの?来年も同じクラスだったら良いんだけど • • • • • • 」


 どんどん自信がなくなるように言うエルナに俺はカノンに一抹の不安を覚えた。

 1年に1回総合順位が発表され、Sクラスの上位20名から外れたらその時点で次の年は別のクラスに移動になる。

 更にSクラスとAクラスに関しては同じ寮の為、部屋が変わる可能性もあるのだ。


「そんな哀れみの目で見るなよ!ちゃんとこの夏休み勉強させられたよ。」


「自主的では無いんだね。」


「うっ!」


 恐らく、親に強制的に勉強をやらされていたんだろうが、カノンの為にもその方が良いと思う。


「レインはこの夏休みは大変だったね。」


「まぁ、仕方がないかな?精霊王様に会えたから俺は満足かな?」


「くそっ!俺も精霊王様に話しかけられたいよ!」


 僕がアルファス王家の次男という事はここにいる3人と先生くらいしか知らない。

 その為、あの式典には顔が変わる魔道具を持って挑んだ為、誰も第二王子だとは知らないはずだ。


「レインはシルフィがいるもの、仕方がないよ。でも、エルナも良かったじゃない!精霊と契約出来て。」


 そう、エルナはなんとかこの夏休み中に精霊との契約に成功したのである。

 契約したのは水属性の下位精霊であるスフィア、もしかしたら将来中位精霊に進化するかもしれない。


「う、うん。レインには及ばないけどね。」


 自信がなさそうにエルナが言うが、大精霊と契約したのは僕も予想外だったんだから仕方がないよ。


「エルナ、レインと比べたら駄目だよ。精霊の格で言えばあのニノ•リーティスより上なんだから。」


「精霊の格だけじゃなく身分もな。」


 精霊術師が一度は憧れる精霊使いニノ•リーティスはアルファス連邦国軍の近衛師団に所属している精霊使いである。

 風属性の中位精霊であるリルと契約しており世界最強の精霊使いと呼ばれている。

 僕がアルファス王族で風属性の大精霊と契約している為、身分も契約精霊の格も上になる。


「そこは私でも負けるわ。」


「はぁ、まぁ私は明日のテスト勉強をするわ。数学が難しいみたいだし。」


 僕にとっては非常に簡単な数学だけど、皆んなが行くなら僕も行こうかな?

 小説でも読もうかな。


「そうね、じゃあ図書塔に行きますか?」


 リフェルティア学園の図書室は校舎の1室では無く、独立した別の建物となっており、地上3階地下2階の5段構造となっており、スフィア城の図書塔並みの大きさと本の貯蔵数を誇る。

 自習室も兼ねており、テスト期間中の今は人も多いだろう。


「そうするわ。」


「じゃあ、僕も勉強しようかな。」


「レイン頼む!俺に数学教えてくれ。」


 くそ!俺の小説を読む計画が、まぁ仕方がないか。


「はいはい、カノン行くぞ。」


「ありがとうございますレイン様!」


 そして僕達は途中にあったカフェで飲み物を買って図書塔でテスト勉強をする事になった。

 ちなみに図書塔は飲食OKであり、それは本全てに防汚の魔術が捺印されているからである。







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