第50話 戦後2
「では、次に国際情勢です。シールスト国とルシタニア連邦国を中心とした戦争はシールスト国の崩壊と言う形で幕を閉じました。シールスト国東部のテーラの街はルシタニア連邦国が配合、残りの街は魔獣の襲撃により壊滅しました。その後テーラの街に対する魔獣の襲撃は現在確認されていません。」
魔獣の襲撃によりテーラの街以外のシールスト国の都市は廃墟となり、王都も破壊され指導者が居なくなった為、自動的にシールスト国は崩壊した。
唯一残ったテーラの街はルシタニア連邦国に併合されたが、数年間は国際共同管轄都市となる予定である。
「戦争が終結した事により各国はルシタニア連邦国に派遣した援軍を撤収させ、我が軍も精霊使い300名の全員を確認し、撤収しました。現在ルシタニア連邦国に残留しているのはルクレール王国軍のみで、帝国に対する牽制かと思われますが、兵力を7500名から5000名へと削減しています。」
「確かにな、ルシタニア連邦国はフラント王国との統一が決まった所だ、その分国力も増大するだろう。単純計算で人口約1500万人の国家だ、兵力だけでも10万を超える。今の割合を維持したら兵力は15万だ。」
ルシタニア連邦国とフラント王国は統一する事で話が纏まっている。
その為、軍も統一するのだがルシタニア連邦国軍の兵力は8万、フラント王国軍は7万で合わせると15万となる。
しかしこれまでシールスト国の脅威があった為、そこまでの兵力が必要だったが、シールスト国が崩壊し、脅威が帝国だけとなった今削減する可能性も高かった。
統一予定の国家は西は妖精の森、東は海、北は大河、南はルクレール王国とルフ教諸国が妖精の森を突破して来ない限り脅威は少ないのである。
「我が国の2倍の兵力ですか、しかし帝国がどのような規模かも分からない以上備えとくのは必然でしょう。我が国も兵力の拡大は必然でしょうな。」
「だが、我が国は大陸国家ではなく海洋国家だ、大陸からは少なくとも本土まで1000km以上離れている。陸軍より海軍の方が重要では無いのか?」
そう、アルファス連邦国は大陸国家では無く、四方を海に囲まれた海洋国家である。
そうなると必然的に陸軍より海軍に力を入れるべきとの声が高まるのは自然の事であった。
「確かに海軍の拡充も必要だが、外交関係を考えると援軍として派遣する事も重要だ。今回は精霊使い300名で済んだが、帝国が動き出したらルクレール王国とてタダじゃあ済まない。」
「だが、陸は山脈と妖精の森、それ以外は海と大河で遮られている。陸は多くても十数万の戦力では無いのか?それ以上だと山脈を越えられないぞ。過去に侵攻してきたのも海からでは無かったか?」
エリフィス教諸国とルフ教諸国を遮るのは何も妖精の森と海だけでは無い。
ルクレール王国より南には大陸を二分するかのように8000m級の山々が聳え立つ山脈があるのだ。
過去に何度かルフ教諸国が聖戦と言う名目の元侵攻したきたが、山脈などの自然が邪魔をして大軍を送りこめなかったのである。
「確かに陸に関しては大陸国家が応援に駆けつけれる体制が整っている。我が国も島国で海洋国家なのだから、海軍力の拡充は必須だな。」
陸軍とてアルファス連邦国が島国の為、陸軍より海軍力に力を入れるべきという事は分かっているのである。
だが、分かっていても自分達の予算が減らされる事は面白く無いのだ。
「はい、その通りです。」
「だが、我が国と帝国の間には北西諸島がある、その防衛の為に陸軍の拡充も必要だ。帝国などのルフ教諸国との関係はすこぶる悪い。いつ開戦してもおかしくない状況だ。」
北西諸島はアルファス連邦国西アルファス島北部から帝国まで伸びているストラディア諸島の事である。
ストラディア諸島は沖縄本島並みの島が2つとその周辺に伸びている島々の事であり、独立前から帝国に対する重要拠点とされていた。
州で言うとリヒト州であり7500名配備されているうちの2500名はストラディア諸島に配備されており、機動旅団の一部の1500名も合わせて約4000名ほどがストラディア諸島に配備されている。
アルファス連邦国西島から帝国まで約4000kmほどあるが、ストラディア諸島から帝国までは800kmほどしか無く、3000km程続くストラディア諸島は軍事的に重要拠点であった。
「はい、それに備えて軍の近代化を含めて準備します。」
「うむ、頼んだぞ。」
「「「はっ!」」」
結果、海軍を重視とした軍備拡張が決定したが、陸軍も現在の兵力から更に拡張する事が決定した。
アルファス連邦国は人口と国の規模にしたら兵力は普通だが、付近の情勢を加味したら少ないくらいの規模である。
そして、国際情勢の話は終わり、次の議題へと移った。
「では続いてです。我が国を始め各国で人口の増加が続いています。この様子だと、現在我が国の人口は約840万人ですが、我が国も5年後には現在の増加率で進みますと1050万人となる予測もあります。」
「ご、1050万人だと!?今の約1.3倍じゃ無いか!そんなに増えるのか?」
今のこの世界の時代は1700年代後半から1800年代前半である。
日本で言うと明治時代になる頃である、明治時代の日本の人口は約3000万人、日本より広い国と考えると800万人は少ない気もするが、それは世界と成長速度の差なので仕方がないだろう。
明治時代の日本の人口増加率は4%〜7%、多い年では11%の年もあったほどである、その為アルファス連邦国の人口が5%で増加する事は何ら不思議では無かった。
最もアルファス連邦国の面積は約76万㎢であり37万㎢しかない日本より遥かに広い。
「これは年5%の増加率で計算した場合ですので、5%を超えるかもしれませんし5%を下回るかもしれません。ただ去年の増加率が4.7%で去年は800万人で今年が840万人と考えますと。」
この増加率5%は他のエリフィス教諸国でも同じであり、ほぼ全ての国家で人口が増加傾向にあった。
ルクレール王国の面積は約580万㎢であり、アルファス連邦国は76万㎢、ルクレール王国とアルファス連邦国の面積比は580:76で約8:1である。
人口は約2400万人と約800万人で24:8で3:1となる事を考えるとアルファス連邦国の人口は比較的多いと言える。
ちなみに人口840万人は現代日本の大阪府の人口とほぼ同一であり、大阪府の面積は約0.2万㎢である。
「独立が決まったからだろう。それに戸籍の整備が完全に完了したのは今年だ、去年の人口統計はあてにならんぞ!」
歴史を知っている現代人から見れば普通の人口増加率であるが、当時から見れば以上な程の人口増加であった。
地球ならば伝染病などにより数百万人が亡くなり増えても減るのだが、この世界では治癒師とポーションのお陰で伝染病らしきものが無い。
「去年の人口統計で94%が完了していました。国王、都市計画が必要です。公園や警察、役所や軍事基地などの重要施設を設置する予定の土地は先に押さえておくのがよろしいかと思います。」
「なるほど、確かにな。」
新設された国土交通省の担当者による説明に一定の理解を示した。
当時の日本やヨーロッパは戦争などにより国が強権を使い土地の強制収用もあったが、国難ほどの国難がルクレール王国時代にもアルファス連邦国時代も無い。
その為、有事でも無い今そう言う手段はなるべく取りたく無かった。
「はい、現在地価は上昇を続けています。早めに押さえておいた方がよろしいかと。」
「うむ、そうだな。個人の所有出来る土地に制限を掛けるという手もアリだな。」
アルファス領時代からアルファス連邦国は土地の使用に制限を掛けていた。
江戸時代みたいに土地の売買を禁止する事はしていないが、下手に自然を破壊して精霊の怒りを買いたく無かったのが一番の理由であろう。
その副産物として土地の値段が高く建物毎の高さも他の国や都市よりも高くなっている。
「そうですね、現在の制限に加えて計画に沿って行うのがよろしいかと、国が住宅を建設し、それを売却するのも一つの手です。他の国ではその方法を行なっている所もありました。」
いわゆる国営住宅の事である。
日本では1923年の関東大震災から、イギリスでは1949年に始まったのに比べたらこの発案者はかなり進んでいる考え方である。
現代の公営住宅は低所得者向けの為、収入により家賃に差があるが、ここでの公営住宅は都市の美観と住宅不足の為、当初の目的(住宅不足)と最近の目的(都市の美観)を足したような形となっている。
「何を言っている?売れなかったら国の負債になるのだぞ?」
当然ながら、その建設予算は国が出す事になる。
そうなれば不満が出るのは仕事が増える財務省からであった。
基本的にそれが仕事なのだが、本当に正しい使い道かどうか審査する事も仕事なのでやり方的には正しい。
「現在、我が国は住宅不足です。国が建設して貸し出せば借りる人は必ずいる筈です。その運用によっては利益が出る可能性すらあります。」
担当者の言う通りアルファス連邦国は現在住宅不足であった、幸いにもスラム街などが出来ていないのが幸いであるが、今後そうならないとは限らない。
「だが、利益が出るからといって精霊の怒りを買うわけにはいかないのでは?」
利益が出るからと沢山の公営住宅を建設すると、自然破壊を招き本末転倒である。
しかし自然破壊するほど公営住宅を建てるとは、一体どのくらい建てるのか財務省としては恐ろしい限りである。
「国ですから利益を出す事は目標ではありません。多少の損失も仕方がないかと思いますが?国が率先して建設すれば我が国の建築技術の進歩にも繋がります!」
この世界には魔法がある、その為現代のように数ヶ月や数年も掛からず数週間や1ヶ月程度で建物が完成する。
「どのくらいの規模で行うかも予算も全く分からん状態では話にならんな。次の会議までに計画書を纏めてくれ。」
「え?私がですか?」
そう言われ、まさか自分が担当する事になるとは思って無かった国土交通省の担当者は一瞬挙動不審になる。
「君が言い出したんだろ?」
しかし国王であるレイルズがそう言い、他の大臣や長官も「お前がやれ!」といった感じて睨んでくる為、その人が担当するしか無かった。
この雰囲気で拒否できるほど精神的に強い人では無かった。
「え?あ、はい。かしこまりました!」




