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第42話 いなくなった大精霊

 


 リレス•リフェルティア、アルファス連邦国の宮廷魔術師であり、更にレインが通っているリフェルティア学園の学長でもあった。

 また彼女は更に世界最高峰の魔法使いと呼ばれており、大賢者の異名を持つ誰もが認める魔法使いである。

 白銀色のロングヘアーであり、見た目の年齢は20代であるが、もう既に60年に渡りリフェルティア学園の学長を務めており、アルファス家前領主の時から仕えている為、相当年齢がいっている筈である。

 また、妹のエミリアリフェルティアも60年に渡りSクラス担任を担っているが、妹の方は魔法より剣が得意であり、アルファス家には仕えていない。

 ちなみに姉は白銀色のロングヘアーだが、妹の方は白銀色のショートヘアーである。

 そんな世界最高峰の魔法使いであるリレス•リフェルティアは現在、ルクレール王国国王に呼び出されルクレール王国王城へとやって来ていた。


「大賢者様、よくぞお越し下さいました。」


「来たく無かったんだけどね、グレンに呼び出されてね。案内してもらっても良いかしら?」


 ルクレール王国国王グレン•レア•ルクレールを呼び捨てにする辺り相当仲がいい事が伺える。

 そして門番の兵士は手荷物検査をする事なくリレスを王城内部へと通した。

 彼女は世界最高峰の魔法使いであり、隠そうとしたら手荷物検査など意味ない為、彼女は検査が省かれているのである。


「はい、どうぞこちらへ。」


「悪いわね。」


 そう言い、近衛兵に案内され王の執務室へとやって来た。

 そして近衛兵が扉をノックし彼女が来た事を伝えると中からどうぞ、と声が聞こえた。


「では、私はここに居ますので。」


「ええ、悪いわね。」


 そう言いリレス•リフェルティアは扉を開け中へと入って行った。


「久しぶりだな、大賢者。確か昨日までアルファス連邦国に居たんじゃないのか?」


「ええ、居たわよ。だから今日、帰って来たの。」


 アルファス連邦国からルクレール王国までは1200km程ある。

 船を使って約10日間かかる距離なのだが、何故1日も掛からずに移動出来たかというと大賢者は転移魔法の使い手なのである。

 転移魔法は無属性魔法に分類され相当な魔力量が無いと使えない為、大賢者のみの特権である。


「ははは、相変わらず無茶苦茶な人だ。で?我が国の宮廷魔術師になる気にはなったのかな?」


「あら、私は別にこの王城を瓦礫の山に変えても良いんだけど。」


「冗談だよ。この前ムセル公爵家の屋敷が何者かに瓦礫の山にされたばかりだしな。君を敵に回したくはない。」


 その言葉で誰が瓦礫の山に変えたか大賢者は直ぐに分かった。

 そもそもムセル公爵は反精霊派の筆頭であり、アルファス家と敵対していた家である。

 彼に恨みがある人は大勢いるが屋敷を瓦礫の山に帰る事の出来る者は精霊しかいなかった。


「あら、馬鹿な人も居たもんね。」


「本当だよ、こっちにまで被害が来る所だった。ところでどうするんだ?」


 ムセル公爵家の失脚により反精霊派は大きく勢力を後退させ精霊派が筆頭して来た。

 更にアルファス連邦国での独立承認式で精霊王が祝いにやって来たというのも精霊派が助長する理由である。


「どうするって?」


「アルファス家はもうルクレール王国の伯爵家じゃない。アルファス連邦国の王家なんだ。」


「それを昨日レイルズと話したのよ。別に独立したからって私のやる事が変わる訳じゃない。今まで通りリフェルティア学園の学長を続けるわよ。」


 リレスリフェルティアはルクレール王国のリフェルティア学園の学長をしているが立場的にはアルファス連邦国王家の宮廷魔術師である。

 独立前まではルクレール王国の配下の魔術師であったが、もうルクレール王国の配下では無いのである。


「そうか、それは何よりだ。」


「あと、一つ言っておくけど。貴方に私を呼び出す命令権は無いからね。あるのはアルファス家の人達だけよ。」


「命令書じゃなくて要請書にしたつもりだったんだがな。」


 命令書も要請書も対して変わらないが、わざわざ足を運んだのはそれなりに理由があると国王は考えていた。


「あら、あの文面は命令書の文だったと思うけど。」


「じゃあ、何故来てくれた?」


「エルナ王女にルシタニアでの戦争が終わるまで学園は休校にするって伝えに来たのよ。」


 リフェルティア学園はエリフィス教諸国中から生徒が来ているが、当然シールスト国やルシタニア連邦国から来ている生徒もいるのである。

 その為、情勢が落ち着くまで学園を休校にする事を決めたのである。


「ふふふ、相変わらずだな、お前は。」


「ところで、サッサと戦争を終わらせてくれないかしら?これじゃあ学校が再開出来ないわ!」


「私に言われても困る。我が軍が侵攻した戦争じゃ無いからな。だが直ぐに終わるだろう。なんせアルファス連邦国からあの精霊使いが派遣されているのだからな。」


「精霊使い?あぁ、ニノ•リーティスの事ね。でもシールスト国って10万の兵力なんでしょ?」


 アルファス連邦国近衛師団所属の精霊使いニノ•リーティスは立場的に大賢者の部下である。

 学園での学長という仕事がある為、殆どアルファス領に帰ってない彼女でも一応は宮廷魔術師なのである。


「お前が行けば簡単に終わりそうだが。」


「絶対に嫌。もう帰るわ。」


「あぁ、お前が学長を続けるという言葉が聞けただけで今日は満足だ。」


 国王がそう言うと彼女は満足したのか、「そう」と言い部屋から出て行った。




 大賢者と国王が話をしていた頃、精霊界ではシルフィが久々に精霊界へと帰って来ていた。

 久々と言っても10年程度なので、永遠の時を生きる精霊からして見ればあっという間なのであるが。


「あら、シルフィじゃない久し振りね。」


 そう声を掛けたのは精霊界を統べる精霊王アリフェスであった。


「お久しぶりです精霊王様。ところで他の大精霊達の姿が見えないのですが。」


「あぁ、ティリアは多分図書塔に居ると思うけど、他の大精霊達は多分人間界にまだ居るんじゃ無い?」


 精霊界にいる精霊達にとってアルファス領で毎年行われる精霊祭は1年に1回の楽しみであった。

 しかしアルファス領の人達は夢にも思わないだろう、まさか精霊祭に大精霊や精霊王が人化して紛れているなんて。


「はぁ、アイツらは全く。」


「ふふふ、年に一度の精霊祭だもの。たまにはいいんじゃ無い。所で話は変わるけどシルフィ、ちょっと良いかしら?」


 すると楽しい話から何処か真剣な顔つきになり、シルフィも大事な話だと思い気持ちを切り替えた。


「はい、なんでしょうか?」


「貴方達があの、ほら。地下遺跡に行ったじゃ無い?」


「ええ、行きましたけど。それが。」


「一瞬だったから確証は無いんだけどね。1秒にも満たないけどレイシアの反応があったわ。」


 レイシアは今ある風•水•火•木•土•光•闇•雷の8つの属性の中で1番新しい雷属性の大精霊である。

 雷属性は他の属性と違い特殊で1万年ほど前に風属性と土属性から派生した比較的新しい属性である。

 雷属性と言っているがつまり電気を操る属性であり、攻撃有利な属性である。

 しかしその雷属性を司る大精霊であるレイシアが5000年前から行方をくらましていたのである。


「れ、レイシアですか!?しかしあの遺跡には何もありませんでしたよ。あったといえば精霊結界とその奥にあった光石だけです、精霊結界がある場所にレイシアがいるとは思えません。」


 雷属性は風属性と土属性から派生した属性の為、レイシアはシルフィの言わば妹的な存在であった。

 5000年前にレイシアが失踪してから1番悲しんだのもシルフィであった。


「そうよね、悪かったわ。」


「いえ、お気になさらずに。では私は人間界に戻ります。」


 謝罪してきた精霊王に素っ気なく返すと、シルフィは時空間転移を使い人間界へと帰って行った。


「貴方も変わったわね、シルフィ。」


 そう発した言葉が誰かの耳に届く事は無かった。

 風属性の大精霊であるシルフィは人間が古代文明の事もあり嫌悪感を抱いており、ずっと精霊界に引きこもりっ放しだった。

 しかし十数年前に精霊王が無理矢理精霊祭に行ってこいと行かせたら人間と契約して帰ってきたのである。

 そして更にその契約が尊重契約と知って非常に驚いた。

 そしてそこからシルフィは精霊界に帰ってこなくなったのである。

 なんとまぁ極端な性格だろうかと思っている精霊王の顔は何処か嬉しそうであった。




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