第4話 精霊の紹介と学園
「今、なんて言った?」
私のお父さんであるレイルズ•アルファスは驚きのあまり無表情で此方を見ている。
お母さんのアルシア•アルファスは無言のまま驚きを隠せないようであった。
「風の中位精霊と契約してました。黙っていてごめんなさい。」
本当は風の中位精霊どころか風を司る大精霊なのだが、もしそんな事言ったら驚きのあまり気絶する可能性があるので言わない。
だが、さっきからお父さんとお母さんの周りに漂っている精霊(恐らくお父さんとお母さんと契約した精霊)が少し緊張しているのか震えている。
「レイン、素晴らしいわ!流石私達の息子よ!」
「はぁ〜。レイン、今その契約した風の中位精霊を可視化させる事は出来るか?」
「はい、出来ますよ。シルフィ、お願い。」
僕がそう言うとシルフィが僕以外の人にも見えるように可視化した。
通常、精霊が可視化するには精霊本来の魔力が必要である。
しかしシルフィは自分と契約している為、シルフィが可視化する為の魔力は自分の魔力から取っている。
『はいはい、私が風の精霊のシルフィよ。』
「ほ、本物だ。」
「レイン、いつのまに契約してたのよぉ〜。」
お母さんが呆れたような感じで言ってくるが、顔を見るとどこか嬉しそうである。
「去年の秋くらいだったよね?シルフィ。」
『ふふふ。ええ、そうだったわね。』
前もって打ち合わせ通りに話す。
精霊と契約していると口に出さなくても、心の中で念話で話せるのである。
「仕事が忙しいとはいえ、1年間も気づかなかったなんて。まぁ、仲良くやれているからなによりだよ。」
「しかし、あなた。レインはもうすぐ教会でステータスの確認などをしないといけないのではなかったですか?人払いは必要ですね。」
「ステータスの確認?」
何かとても心が躍るワードが聞こえた気がする。
え?ステータス?それってあの体力とか攻撃力とか魔力などが書かれている物だよね?そんなのあるの?
「あらあら、レインにはまだ言っていなかったかしら。5歳の4月に近くの教会に行って神様に無事5歳になりましたって報告するのよ。そしたら神様が自分の実力が記載されているステータスを見る事を許可してくれるのよ。」
「だが、ステータスは名前や年齢など以外の情報は本人の許可が無いと見れないようになっているからな、だから大丈夫だと思うんだが、」
「4月ってあと10日後だよね?」
いやいや、今初めて聞いたよ?
前もって言って欲しかったよ、心の準備が出来ないし。
「そう、その日は家族全員で教会に行くのよ。ルーとシリウスも1週間後には学園から帰ってくるから、一緒に行けるわね。」
「春の長期休暇か、またお兄ちゃんやお姉ちゃん達と遊べる。ふふふ。」
「私はそれよりルーとシリウスが貴方の精霊を見て悔しがらないか心配だわ。」
ルーは現在11歳の僕のお姉ちゃんであり、シリウスはルーより1歳年上の12歳のお兄ちゃんである。
学園は10歳になったら入学出来るのだが、入学時点で精霊と契約している人はとても珍しい。
いくら国中から優秀な学生が集まるといえ、年間320名入学する学生のうち精霊との契約している学生は10名もいない。
「これを糧に更に学業に邁進してくれたら良いんだけどな。」
「あの、旦那様。ルーお嬢様とシリウス御坊ちゃまの学業は二人ともSクラスだった筈ですが。」
なんか聞いている感じSクラスってすんごく賢そうなイメージがあるのですが?
え?有名理系国立大学に進学したお前が言うなだって?はて〜何のことでしょう。
「あれ?そうだったっけ?この前シリウスが成績が下がったとか言っていたからSからAに落ちたんかと思ってたが、」
「恐らくクラス内順位の話でしょう。」
「Sクラス?Aクラス?」
「あらあら、ごめんねレイン。お兄様達が通っている国立リフェルティア学園はね、総合成績でクラス分けされていてね、上からS•A•B•C•D•E•F•Gの8クラスに分かれているの。」
って事は1学年8クラス編成なのか。
確か学園は初等部3年、中等部3年、高等部3年の計9年間で編成されている。
入学時に入試成績を鑑みてSからGのクラスに振り分けられるのである。
さらにクラスが決まっても年2回の試験で学年が上がるごとに学年成績ごとにクラスが毎年、再振り分けされるのである。
「それでお兄様とお姉様は1番上のSクラス?」
「そう。入学試験で成績に応じて振り分けられるのよ。筆記試験•実技魔法試験•面接の3つの試験で決められるのよ。貴方も9歳になったら試験を受けるから、今のうちにしっかりと勉強なさいね。」
「それなんですが奥様。」
お母さんの後ろにいたメイドのサラが言いにくそうに話し始めた。
サラは僕の家庭教師でもある。
「あら、サラ。どうしたの?」
「レイン様が現在お勉強なさっているのは現在初等部の内容なのですが、それにこの前書庫で本を読んでらっしゃいましたが、あれは中等部の内容でした。」
「本当なの?レイン。」
あれ?誰かの前でそんな難しい内容の本なんか呼んだ事無いんだけどなぁ?流石メイド恐るべし。
「う、うん。シルフィが色々と教えてくれるからドンドン読んでいっちゃって。」
「ははは、流石我が息子だ!試験に関しては心配する必要も無かったな。ルーもシリウスも優秀だったじゃないか!これは12歳になるのを待って中等部に入れた方が良さそうだな。」
「そ、そうね。そういえば私の精霊を紹介するのを忘れてたわ。おいで、ベル!」
忘れていた事を思い出すようにお母さんが自分と契約している土の中位精霊を呼ぶ。
当の呼ばれた精霊は半分寝かかっていた事を僕は知っている。
だってお母さんの後ろにいるのが見えていたもん。
『呼んだ〜?』
「あら、来たわね?この子が私の契約している土の上位精霊よ?ベルって言うの。」
『土の上位精霊のベルで〜す。よろしくシルフィ。』
『え、ええよろしくベル。』
どうやらシルフィもこのテンションは苦手らしい。
苦笑いしながら握手をしていたらしいが、そんなテンションでも大精霊と握手するのは気がひけるのか顔が攣っていた。
しかしどうやらお母さんはその事に気がついていないみたいだし、ベルという精霊もわざわざシルフィが中位精霊を名乗っているのを訂正させる気もないみたいだ。
「結構テンション高いんだねベルは。」
「そうなのよ。こんなんだけどベルは結構強いのよ。」
こんなんなのに?いや、これでも上位精霊だ、弱いわけが無い。
土属性は簡単に言うと土を操れる。
土を操ると言っても全ての土は操れないが、それでも他の精霊や木属性の人間とは桁違いに操れる範囲が広い。
ほんと、シルフィみたいな大精霊ならどうなるのか、恐ろしい。
「へぇ〜そうなんだぁ。お父さんのは?」
「ん?まぁいいか。フレアおいで。」
少し考える仕草をしたお父さんだったが、やっと自分の出番が来たかのごとく契約している精霊を呼んだ。
お父さんが契約している精霊は僕と同じ中位精霊であり、一応シルフィと同じ立場である、一応。
『ほーい、呼んだ?』
「この子が火の中位精霊のフレアだよ。」
「へぇ〜、父さんは火属性なんだ。」
お父さんが火属性の精霊と契約しているのは知っていたが、お父さんと契約している精霊を見たのは今日が初めてであった。
ちなみにお母さんの契約した精霊はちょくちょく見ている。
いや、見えている。
「あぁ、俺は火属性の精霊との相性が良かったみたいなんだ。」
「私は土属性の精霊との相性が良いみたいだわ。多分レインは風属性の精霊との相性が良いのよきっと。」
いや、シルフィは僕が精霊との親和性が高いって言っていたが、それはどの属性の精霊も同じなのかな?
っていうか僕がどのくらいの属性を持っているかまだ分からないし、普通は1つか2つらしい。
お父さんは火•風•光•雷の4つで、お母さんは木•闇•光•水•無の5つである。
お父さんは4つだが火属性との相性が1番良く、お母さんは5つだが土属性との相性が1番良い。
「やっぱりそうなのかな?」
「おそらくね、えっとシルフィだったかしら?これからもレインを宜しくね?」
『はい、全力を尽くします。』
シルフィはお母さんに可愛く敬礼をして僕の頭の上に乗った。
それを見てお父さんもお母さんもとても笑顔であった。
そしてお母さんは小さく呟いた。
「ふふふ、可愛い子。」