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第37話 援軍の到着

 


 ルシタニア連邦国の首都スイードにあるスイード港は誰もが認めるエリフィス教諸国一の貿易港である。

 港の至る所に船の所属国を示す旗をなびかせながら巨大な帆船が停泊し、積荷の運搬をしていた、地球の17世紀のイギリスのような風景だが、当時と決定的に違う所がある。

 それは奴隷が居ないのである、そもそもルシタニア連邦国が国教としているエリフィス教が奴隷を禁止している事もあるが、エリフィス教諸国では犯罪奴隷を除く奴隷を禁止しているのが一般的である。

 その為、商会や国は人を雇うしか無く、『スイードで1年働けば他の国で2年間余裕で生活できる。』と言われるほど給金は良かった。

 現にスイードでは人は足りずに各地から人を呼び寄せている状況である。

 そんな貿易都市の一角、ルシタニア連邦国海軍が主に使用する埠頭に3隻の大型帆船が入港してきた。

 そんな大型帆船が停泊した埠頭では明らかにルシタニア連邦国の高級官僚と見られる女性が待っていた。

 そして帆船からアルファス連邦国軍の近衛師団に所属する事を示す制服を着た男性が3名降りてきたのである。


「我が国の危機にわざわざお越しくださいまして、誠にありがとうございます。私はルシタニア連邦国国防省大臣のセシル•ルフォークです。どうぞよろしくお願いします。」


「これはこれは、わざわざ大臣がお越しになるとは。友好国の危機に援軍に来るのは当然の事です。私はアルファス連邦国軍近衛師団所属精霊魔法部隊隊長のニノ•リーティスです、こちらこそよろしくお願いします。これより我々アルファス連邦国軍精霊使い300名はルシタニア連邦国の指揮下に入りますのでお願いします。」


 長ったらしい肩書きだが近衛師団4800名は軍の中でも特に優秀な人の集まりである。

 近衛師団は大きく2つに分かれており、国王や王族の護衛や城の警備を行う近衛部隊と精霊使いである精霊魔法部隊である。人数的に近衛部隊が4000人、精霊魔法部隊が800人と開きがあるが、精霊魔法部隊はアルファス連邦軍最強の部隊であり、そのトップがニノ•リーティスなのである。

 また、精霊魔法部隊も第1精霊魔法大隊と第2精霊魔法大隊の2つに分かれており、それぞれ400名づつの精霊使いを抱えている。

 ちなみに近衛部隊は剣を正式装備とする騎士団と銃を正式装備とする陸上総隊と分かれているがこの陸上総隊はレインが名付けた。

 陸上総隊とレインが名付けた理由は彼等が銃火器の扱いに非常に長けており、動いている敵でも外す事なく正確に当てることができるからである。

 ちなみに王族の護衛は騎士団、城の警備は陸上総隊の為、人数比は騎士団800名、陸上総隊3200名の約2:8の割合である。


「え、ええ。では、向こうは宿泊用のテントがありますのでご案内致します。」


「はい、ありがとうございます。実はこちらの2隻の帆船に貴国に対する支援物資が積載されていますが、どう致しましょう?」


 そう言われて駐アルファス大使から支援物資がある事を言われたのを思い出した。


「あ、失礼しました。中身を伺っても?」


「手前の方はレタール銃5000丁と弾薬になります。奥の方はポーションとなりますので。」


「ぽ、ポーション!?」


 駐アルファス大使から支援物資として言われていたのは銃とその弾薬類だけだった為、非常に嬉しい事であった。

 ルシタニア連邦はシールスト国との関係が非常に悪い為、薬草を原料とするポーションは非常に高価で手に入りにくい品であった。

 その為、これから戦争を行う国としては今一番欲しい物であったのだ。


「はい、残念ながら樽になりますが、その辺りはよろしくお願いします。」


「は、はい。お気遣い感謝致します。ルクス、彼等の案内を頼む。」


 普通店頭に並んでいるポーションはガラス瓶に入れられているが、波で揺れる船にガラス瓶など入れたら割れるに決まっていた。

 その為、船や馬車で運搬する時は樽に入れるのが一般的であったので樽に入れる事は何の不思議もない。

 ただ、使うにはガラス瓶に入れ替えるという手前がかかるだけであった。


「畏まりました。では、どうぞこちらへ。」


「はい、よろしくお願いします。」


「ま、まさかあのニノ•リーティスが来るとは。」


 精霊使いが彼女の部下であるルクスに全員案内され船から降りるとセシル大臣はポツリと呟いた。

 ニノ•リーティスは精霊使い全員が憧れる存在であり、その理由は彼が契約している精霊にあった。

 彼が契約している精霊は契約する事が難しい風属性の更に高位精霊である中位精霊である。

 彼は15歳で精霊と契約して直ぐにアルファス家に仕え、他の国や貴族から破格の報酬を提示されたが全て断り続けた。

 その実力は本物で風属性魔法が攻撃系統と言われるのも彼の活躍のお陰であった。

 数年前にルクレール王国が誇る精霊使い30人を相手に全滅判定を出したり彼は最強精霊使いの名前を欲しいままにしていた。

 しかし彼がその二つ名を拒否し続けるのは彼が使えるアルファス家の次男が自分が契約する風属性の精霊の最上位的存在である大精霊の更に自分より上の尊重契約という相当信用されていないと出来ない契約をしたからであった。


「ええ、私も驚きました。しかし何故彼ほどの人間が1部隊の隊長なんでしょう?彼なら近衛師団の師団長でもおかしくない実力のはずですが、アルファス連邦国が彼を冷遇するとは思えませんが。」


「大方、彼が拒否したんでしょ?彼は根っからの現場人間だからね。師団長になったら現場に出る事は少なくなるし、何より精霊使いだから精霊魔法部隊のトップで十分だと考えているのでしょう。」


 ニノ•リーティスは根っからの現場人間であり、上から命令する性格では無かった。

 その為独立が決まった時に上司から近衛師団長に推薦されたが、王族となったレイン•アルファスに直談判して精霊魔法使いの指揮官で抑えさせたのである。

 最も、近衛師団の師団長ともなると精霊使いだけでは無く騎士団や陸上総隊の指揮も必要となる為、上も彼が断る事を知っており形を取って敢えて推薦したのである。

 まさか、第2王子であるレインに直談判するとは思っても見なかっただろうが。


「よく、知っていますね。」


「あら?言ってなかったかしら?私はアルファス魔法学園の出身でね、彼は私と同じクラスだったのよ。」


「なるほど、納得しました。」


 その事を聞いて納得した部下であった。

 アルファス魔法学園はリフェルティア学園と同じく貴族や平民の身分を問わない学校であり入学時にその身分は一切考慮されない。

 その為、王族が試験に落ちる事もありエリフィス教諸国中から人が集まる学校であった。

 その代わりその学力レベルは非常に高く、卒業生は近衛師団や国立研究所など誰もが憧れる就職先が並んでいた。

 ちなみにアルファス魔法学園はエリフィス教諸国2位であり、1位はルクレール王国にあるレインが行っているリフェルティア学園である。


「えっと、書類によると此方がレタール銃と弾薬類のようね。」


「では、行きましょう。」


 そしてタラップを登り船に入ると船の船長と見られる人物が出迎えてくれた、そして彼の案内で船の積荷を確認していく。

 そして目的の船室に到着し船室内に入ると、そこにあったのはズラッと動かないように固定され綺麗に並べられたレタール銃であった。


「これって、ほんとに中古なの?新品みたいじゃない!」


 余りの綺麗さに中古と知らされていたセシルはレタール銃を手にとって見るが、銃口内部も綺麗に掃除されており直ぐにでも使えるほど整備されていた。


「はい、直ぐに使用できるように専門の整備士を乗せていますので。」


「流石だわ。」


「ええ、弾薬類も豊富ですね、これで鉄砲隊を増やせます。」


 別の部屋に確認に行ってきた彼女の部下達も戻ってきた。

 基本的に火薬類は危険な為、魔道具で囲われた部屋にしまうのが基本である。

 しかし魔道具はたいへん高価なので金のない商会や国ならそのまま蔵う事もあるが、この船はしっかりと魔道具が設置されていた。

 そもそもこの船自体、銃火器などを運搬する為だけに建造された魔導機関を搭載した蒸気機関船であり、その辺の対策も万全であった。

 アルファス家の得意先の商会が保有するこの船だが、非常時には優先的に借りれる契約の為、今回借りてきてアルファス連邦国からルシタニア連邦国まで銃火器類を輸送したのである。

 最も、この船の建造費用は一部アルファス家が負担しているが。


「大臣、ポーションの方も確認しました。樽で200樽です。」


「200樽も!?幾らになるのかしら。」


 ポーションは薬草を乾燥させ、その出し汁で作る薬である。

 その薬草の濃度によって初級•中級•上級となり、初級は軽度な怪我や欠損を治す程度であり100エル(1000円)ほどである。

 中級は中度な怪我や軽い依存症、骨折などを治せる、また毒の中和能力もあり1つ約500エル(5000円)ほどで買える。

 そして上級は重度の怪我や複雑骨折、手足などの部分的欠損を治す事ができ、中級で中和できない毒などを中和する事が出来るが数は少なく1つ辺りの価格も1個5000エル(5万円)と格段に上がる。

 そして最上級ポーションとして超級があるが普通の薬草では作れず、険しい山々などに生えている薬草により作られ全ての怪我や欠損、病気などを完治する事の出来るポーションで場合によっては1つの超級ポーションに1000万エル(1億円)の値段が付く事もある。

 どの国も超級ポーションは貴重であり、国宝として数個保有しているくらいである、ちなみにその超級ポーションの8割方はアルファス連邦国の聖域で作られたポーションである。


「分かりません、樽1つで500個のポーションと計算しますと中級ポーションだと仮定して1つで500エルそれが500個で25万エル、それが100個ですと2500万エルですね。単純計算で5千人分のポーションとなります。」


「す、直ぐに大統領に報告して!銃とポーションの保管倉庫には常に万全の警備体制を整えなさい!」


「は!畏まりました。」


 ここまでの大量のポーションだと盗んで売り捌こうとすると奴も出てくる可能性があった。

 結局、その日のうちに倉庫には500名の兵が配備され常に警備に当たった。


「もう、これ。負ける事無いんじゃない?」


「アルファス連邦国に感謝ですね。」


 セシル大臣の言葉に周りは頷く事しか出来なかった。



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