第30話 久々の帰宅
「ただ今帰りました父上。」
「仕事大丈夫ですか?お父様。」
「ただいま、お父様。」
僕達はようやく昨日中になんとかルーお姉様の力も借りてカノンの宿題を全て終わらせる事が出来、今日帰ってきたのである。
え?800kmの距離があるって?そこはシルフィの力を借りたよ。
「あらあら、シリウスにルーにレイン。おかえりなさい。」
「ルーお姉様、お父様はどうしたんですか?」
僕達にお母さんはニコニコと笑顔で出迎えてくれるは横にいるお父さんは書類を持ったままフリーズしていた。
「フリーズしてるわよね。」
「あ、すまんすまん、驚きすぎてな。おかえりって言いたいところだが、お前ら今日帰るって言ってなかったか?」
「だから帰ってきたじゃ無いですか。」
「いやいや、そうじゃなくて昨日まで学園で夏休みの宿題をしてたんだろ?それで今日から帰ると思ってたんだが?転移装置でも使わせて貰えたのか?」
転移装置はリフェルティア学園と各領地を結ぶ遠距離転移装置であり、古代文明のアーティファクトである。
しかし学園全員を転移するには莫大な魔力が必要であり、緊急時及び新学期時しか使用は出来ない。
「転移装置は新学期のみですよ?夏休みでは使用出来ません。」
「え?いや、じゃあなんでこんなに早かったんだ?いや、まぁ早く帰ってきたのは嬉しいのだが。」
「飛んで帰って来ましたよ。」
さも、普通に言う僕にお父さんはビクッと驚いており、横にいるお母さんはあらあらと驚きながらもどこか嬉しそうである。
「飛んで!?」
「はい。今日の朝出発してここまで大体4時間程でしたよ。そうですよね、シリウスお兄様。」
「あぁ、俺も最初はビックリしたけどな。ははは。」
何を言っているのか、最初は高いとが怖いのかビビりまくってたじゃないか。
ちなみに800kmを4時間の為時速200km/hである、本来なら音速も超えれるそうだが僕もお兄様もお姉様も初めての為、そこまで落としたのである。
「と、飛んでってどうやって?」
「普通にシルフィに頼みましたが。お父様はシルフィが大精霊だと知っているんでしょ?」
僕がシルフィの事を中位精霊だと説明したのにお父さんの契約精霊であるフレアが大精霊だとバラしてしまったのである。
「いや、まぁ知っているが。まさか大精霊を使って帰ってるとは、はぁ〜」
「流石、私の子ですね。貴方なら絶対にこんな事しないでしょ?」
「確かにこういう事はお前の血筋だな。昨日といい今日といい、心臓に悪い。」
「?昨日何かあったんですか、父上。」
今日の事は俺がシルフィを使って飛んで帰ってきた事だろ?昨日?何があったんだろう。
「「• • • • • 」」
「お母様まで一体何があったのですか?」
「あ、いや。独立おめでとうと言われただけだ。」
「誰にですか?」
「精霊王様よ。わざわざ直接来て下さったの。」
「せい『精霊王様が!?』」
僕が驚いたのにシルフィがいきなり僕の中から出てきた。
「ちょっと、シルフィ。」
『あぁ、ごめんなさい。でもまさか精霊王様がわざわざ直接言いに来るなんて、精霊王様が来たって事はまさか。』
「どうしたの?シルフィ。」
そうなんだ、あの女神エリフィス様の妹なら同じように軽い感じなのだろうと思ってたんだが、違うのかな?
『精霊王様がわざわざ直接言いに来るなんて普通はあり得ないわ。間違いなく女神様も関わっているでしょうね。』
「エリフィス様が!?」
予想外の展開にお父さんもお母さんもついていけてないようである。
後で僕だけにコッソリと教えてくれたら良かったのに、お父さん余計にプレッシャーがかかるじゃないか。
『多分。』
「父上、これ以上の加護はありませんよ。頑張って下さい!」
「頑張る前に胃に穴が開きそうだ。シリウス、手伝ってくれ。」
「はい、父上!」
シリウスお兄様は勉強が苦手苦手だと言っているが、何かと難関であるリフェルティア学園のNo.4に居るからな。
そりゃあ僕やルーお姉様のNo.1に比べたら影は薄いと思うけど、それでも十分にすごい事だ。
「あぁ、そうそう。ステラから連絡があって来年我が国はスイレン王国と同盟を結ぶ事になった。ルクレール王国と合わせて2ヶ国目だ。今ステラとフォルト殿下が部屋に居るからルーとレイン、行って来なさい。ステラはずっとルーとレインと会えるのを楽しみにしてたからな。」
「はい、お父様。」
「分かりましたわお父様。」
「あぁ、レイン。」
「何ですか?お父様。」
「大精霊と契約している事は秘密だからな。漏らすなよ。フォルト殿下には伝えてあるから心配しなくてもいいが我が国とルクレール王国、スイレン王国のみだ、くれぐれも気をつけてな。じゃあ。」
なんやお父さん、結構喋ってるな。
スイレン王国はステラお姉様が嫁いだ国であり、同盟を結んだのは恐らく僕の事が関係しているだろう。
「は、はい。」
「なんだかあの人、精霊王様が来てからやつれているよねぇ〜」
「お母様、精霊王様が来たなら当然ですよ。」
「ふふふ、明日は頼もしいシリウスに任せて休暇にでもしましょうかね。」
シリウスお兄様、ドンマイ!
「レイン!久しぶり〜会いたかったわ!」
2人が待っている部屋に入った瞬間、ステラお姉様に抱きつかれた。
ちょっとステラお姉様、その胸にあるものが苦しいです。
「お久しぶりですステラ姉様、それからフォルト殿下。」
「ん?どうしたの、あなた?」
僕を見て呆然としているフォルト殿下にステラが聞いた。
「あ、いや。また12歳でしっかりしているなと思って、流石風の大聖霊様と契約しただけの事はあるな。」
「当たり前よ!レインは私の弟ですもの。」
ステラお姉様が誇るように僕の頭を撫でてくれる。
「ふふふ、ステラは本当に弟が大好きだな。ステラの喜ぶ顔が見れて私は嬉しいよ。」
「ありがと、あなた。」
「仲良いですね。妹としても嬉しいです。」
ほんと、2人って仲良いよね。
ちなみに2人の出会いはスイレン王国で開かれたフォルト殿下の成人パーティーで、パーティーに参加したステラお姉様にフォルト殿下が一目惚れしたようである。
最初は断ったステラお姉様だったが、事あるごとにアタックしてくるフォルト殿下に次第に好意を持ち、見事ゴールウィンした。
2人の結婚式はスイレン王国にあるエリフィス教の大聖堂で行い、その大聖堂はアルファス領にある大聖堂より大きかった。
「あら、炎のアーシアと呼ばれた貴方にそう言ってもらえて私も嬉しいわ。」
「な、な、な、なんでその名前を!?」
「ふふふ、私の情報網をなめない事ね。」
ステラお姉様、恐るべし。
ステラお姉様もリフェルティア学園の卒業生だから恐らくそこからだろうな。
「と、ところでレイン。少し頼みがあるのだが。」
「はい、なんでしょうかフォルト義兄様。」
「ちょ、ちょっとシルフィ様にご挨拶をと思ってね。」
あ、さっきからソワソワして挙動不審だったのは風の大精霊に対して緊張していたからか。
「あぁ、そういう事でしたか。シルフィ。」
『呼んだ?あら、貴方は確かスイレン王国の国王じゃない。』
僕の身体から光の球となって出てきたシルフィは少し離れて人間体となった。
シルフィも最初に会った時より随分と話すようになったな、最初は僕としか話さなかったのに。
「せ、聖霊様。お会いできて光栄です!」
『まぁ、貴方の国は私達も嫌いじゃないわ。少なくとも他の国より遥かにマシよ。流石にここには劣るけどね。』
「そう言ってもらえて非常に光栄な限りです!」
そう、スイレン王国は精霊の事を聖霊様と呼んでいるほど精霊に関して妄信的な国家である。
ルクレール王国の南に位置し、国土は38万㎢とアルファス王国(仮)の46万㎢より僅かに小さいが、牧畜が盛んで地球世界のニュージーランドのような国家である。
そしてスイレン王国はあのエリフィス教の総本山があり、首都ではないがバチカンのような都市もある。
国教は当然エリフィス教であるが、エリフィス教の事と国家は別という完全ではないにしろ政教分離を行なっており、エリフィス教の事は聖典省という国の役所が管理している。
その為、エリフィス教のトップである教皇とスイレン王国の国王は別の存在であるのだが、国民ほぼ全てがエリフィス教徒であり(そもそもこの大陸で最大の宗教がエリフィス教)フォルト殿下もエリフィス教徒である。
ちなみに僕達も一応エリフィス教徒である。
『あぁ、そうそう。良い機会だからこれを渡しておくわ。』
「シルフィ、それ何?」
そう言いシルフィは何処から取り出したのか10枚くらいの書類の束をフォルト殿下に渡した。
『ん〜、言ってもいいか悩むけどこのメンバーなら大丈夫でしょ。スイレン王国で悪事を働いている奴らのリストよ。』
「な!?」
え?ちょっとシルフィ、ここ一応他国だよ?
まぁ、やっぱりっていうか宗教って利権とか発生し易いし、仕方がない事でもある。
でも悪事を働いている奴らが書類10枚くらいって結構、少ないのかな?案外スイレン王国も政教分離しているからその辺に関しては厳しい貸しているのかな?
『スイレン王国のような国は良くも悪くも不正などが起きやすいの。女神様もそれには気をつけてって言ってたわ。』
「はぁ、いつの間にそんなリストを。」
『この前に精霊界に帰った時に偶々エリフィス様が来てらっしゃったの、そしたら貴方に渡してってパシらされたのよ。スイレンまで行かなくてちょうど良かったわ。』
僕がため息をつきながらシルフィと話していると、突如フォルト殿下がいきなりシルフィに土下座をし始めたのである。
「あ、ありがとうございます聖霊様!この書類、しっかりと活かしてまいります!」
『精霊の加護はここにしか与えられないのは精霊界の総意だから諦めてね。でも、貴方達の気持ちはしっかりと受け取っとくわ。』
今、しっかりと釘を刺したな。
ってかアルファス領への精霊の加護って精霊界の総意なんだ。
「は、はい。有難きお言葉。」
「• • • •はぁ、あなた。ここは一応他国なの、感激するのは分かるけど場所を考えなさい。」
ステラお姉様の本質を知る者なら分かる。
ステラお姉様は表情には出していないが、相当怒っている。
口調は穏やかだが、言葉が発せられる度に周りの空気が凍っていくのが分かる。
流石にそれを感じ取ったのか、フォルト殿下はビシッと立ち、何事もなかったかのように謝ってきた。
「え、?あ、失礼しました。」
「シルフィにここまで威厳があったと思わなかったよ。」
『何それ、レインったらヒドイわ。』
「ははは、ごめんごめん。」
僕のからかいにシルフィが怒ったように軽く叩いてくるが、フォルト殿下はまさか大精霊と人間がこんなにも親しくしているとは思わなかったらしく、ポカンと口を開けたまま僕達を見ていた。




