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第26話、決断

 


「こちらです、レイルズ様。」


 そう言うと案内の近衛兵は立派な装飾が施された木の扉の前に立った。


「あぁ、ご苦労様。」


「では、私はここに居ますので。」


「あぁ、失礼します。」


 ここはルクレール王国国王の執務室であり、家臣のレイルズ・アルファスにとっては見慣れた部屋である。

 ここには防音の結界が張られており、中で話した事は一切外に漏れない話ごとをするにはもってこいの部屋であった。

 そしてレイルズが失礼します、と言い扉をコンコンとすると中から入ってくれ、と声がした為、レイルズは部屋の中へと入って行った。


「久し振りだなレイルズ。」


 20畳くらいの部屋は実用一辺倒で煌びやかさや豪華さなどは一切無かった、執務室つまり政務を行う為の仕事部屋の為、華やかさや煌びやかさなどは無いのが当たり前だが他の国々ではかなり豪華である。

 そしてそんな部屋の机にある椅子に座っているのがこの部屋の主であり第15代ルクレール王国国王グレン・レア・ルクレールである。


「はぁ、全く貴方は。いや、もういいです。しかし、私を呼びつけたんですからそれなりの理由でしょうね?」


「理由はお前が一番わかってるんじゃないのか?」


 知り合いの様に呼ぶ国王に飽き飽きしながらも呼ばれた事に心当たりがあるレイルズはその話を置いておいた。

 その原因は1週間程前にゲートミラーと呼ばれる小物を遠く離れた場所に送る為のアーティファクトを使い送った手紙に書かれていた事である。


「・・・・息子の事ですか?」


「あぁ、前代未聞だからな。」


「ですね。」


 その事になんの疑問も持たずに同意した、今回の事はそれだけの事であったからである。

 大精霊と契約した、それは契約したせいの属性を自由自在に操れる事を意味しており、それは国家にとって軍事力ともなり得た。

 それは、精霊を女神エリファスの使徒とするエリファス教と精霊を女神ルフに刃向かう邪悪な存在としているルフ教が長年に渡って激しく対立している原因でもあった。

 過去に遡っても精霊との契約は上位精霊が最高であり、それも過去に1人しか居なかった、それがまだ10歳で大精霊と契約(本当は3歳で契約したのだが、レイルズは10歳で大精霊と契約したと報告した)したのである。


「・・・まぁ、いい。ところで精霊の属性を聞いてなかったな。何属性だ?水か?」


「いまだに私も信じられませんが、レインが契約したのは風の大精霊様です。」


「・・・・すまない、まあ一度言ってもらえるかな?」


「息子が契約したのは風の大精霊様です。」


「聞き間違えじゃあ無かったか。・・・しかし風属性は下位精霊ならまだしも高位精霊は人間嫌いじゃなかったか?下位精霊と契約している精霊術師はそこら中にいるが、高位精霊は一人もいない。」


 風属性の精霊は基本的に人間を信用しておらず、下位精霊ならまだしも中位精霊以上の高位精霊は過去にも1人も居ない。

 その理由は何人もの考古学者が調べているが不明のままであった。

 それもそのはずその理由が5000年も昔の古代文明にあるとは誰も予想していなかったからである。


「大精霊様が何を思って息子と契約したのかは分かりませんが、あれは完全にレインを主と認めていました。ちなみに息子はその風の大精霊にシルフィと名付けていました。」


「大精霊と契約するのも前代未聞だが、まさか契約したのが風属性だとは。まぁ、シルフィ様と呼ばせてもらおう。」


「ええ、私も相棒に聞くまでは下位精霊だとばかり思っていました。」


「そうか、実はお前を呼んだのはな、大事な話があったからなんだ。」


「そうでしょうね、わざわざ正式な手続きを踏んでまで私を呼びつけたんですからね、普通なら自室で話しますからね。」


 何時もなら遠距離魔導通信機で話すくらいなのだが、わざわざ転移装置を使ってまで王城に呼んだ理由がレイルズには分からなかった。

 つまり、それだけ重要な話だという事である。


「分かってたか。」


「何十年の付き合いだと思っているんですか?」


「ふっ、実はなレイルズ、お前国王になる気はないか?」


「・・・・私は王族ではありませんよ、それに王妃になんて言われるかな?」


「ルクレール王国じゃない。」


「・・・・独立しろと?」


「あぁ、そうだ。」


「私に独立心はありませんよ。確かにアルファス領だけで国は維持できるでしょう、しかし他の貴族がなんて言うか、」


 アルファス領は大陸有数の領地である。

 精霊の加護と言う効果のお陰で領地は豊かであり、他の領地より低く税を設定しても納められた税は他のどの領地より遥かに多かった。

 そんなアルファス領を見て他の領主も精霊に土地を献上して精霊の加護を貰おうとしたが精霊が加護を授ける事は無かった。

 更にアルファス領は大陸有数の貿易都市を領地内に抱えており、その税収も莫大であった。

 人口は一領地としては格段に多い400万、その豊かさから分割案が出た事も一度や二度では無かったが、精霊が果たしてアルファス伯爵家以外を認めるか、と言う事になりそのまま今日までルクレール王国の3分の1もの広大な領域を誇る。

 更にその豊かな領地から納められる国税もまた莫大であり国庫に与える影響も決して低くは無かった。


「その貴族達が言いだしてきたんだ。」


「どういう事ですか?」


 レイルズは一瞬、国王の言った意味が分からなかった。


「大方、精霊なんかの加護がある領地はルクレール王国に相応しくない、だろうな。」


「ムセル公爵ですか?」


 そう言った国王の言葉に思い浮かぶ人物がムセル公爵であった。

 ムセル公爵は国王を輩出出来る御三家の内の1家であり、精霊を女神ルフに危害を加える存在としているルフ教信者であり反精霊派の主要人物であった。

 アルファス家は伯爵、ムセル家は公爵、伯爵と公爵では明らかに公爵の方が立場が上であった。


「中心はな、精霊派の筆頭のアルファス伯爵が居なくなれば、反精霊派の勢いが増す。間違いではないが。」


「精霊派は私だけではなくこの国の貴族の約3分の2が精霊派ですからね。ただ、上に行けば行くほど話反精霊派が多いですから、頭の痛い問題ですね。」


 ルクレール王国には国教と言う物がない、しかしルクレール王国の3分の2の貴族は精霊派であるエリファス教、残り3分の1が反精霊派であるルフ教である。

 そして位が上に上がれば上がるほど反精霊派は多かった、御三家の内精霊派は1家、反精霊派はムセル公爵を含む2家であり、その為ルフ教も認めているのである。

 そしてそんなルフ教からして見れば精霊の加護を受けて豊かなアルファス伯爵領は目の上のたんこぶであった、追い出したいと思うのは当然であろう。


「あぁ、さっさと隠居したいよ。」


「ルクレール王国国王が王妃に頭が上がらないとは見事な笑い話ですね。」


「お前もだろ。」


「・・・・お互いに女性には勝てないですね。」


 お互いに女性には頭が上がらない様である。

 レイルズもグレンも書類仕事は苦手で良く部下や奥さんに押し付けている為、頭が上がらないのである。


「ふふ、そうだな。」


「はぁ、独立するのは我が領地全てですか?」


「あぁ、そうだな。1年で国軍は撤退する、その間に領地軍を強化してくれ。」


 アルファス伯爵領には現在、領地軍1万2000と国軍4万5000が駐留していた、アルファス領は帝国が密かに狙っているという事もあり他の領地より配備数も多いのである。

 アルファス家にしても今まで防衛を担っていたルクレール王国軍が撤退するのは相当な痛手であった。

 軍ほど金のかかる物は無いからである。

 本国軍が完全撤退したらアルファス領は自国防衛の為6万弱の兵力を整えないといけない、単純計算で今までの5倍もの予算が必要になるのである。


「いいんですか?我が領地からの税収は全ての3割を占めていたはず。」


「アルファス領にいた国軍を本国に戻したら他の国軍を減らしたらいい、規模は縮小するが国庫は問題ない事はない事は財務大臣に確認済みだ。」


 グレン国王の用意周到さに内心驚くレイルズだったが、それは顔に出さずに話を続けた。

 そもそも独立するかと言って特にやる事に変わりはない、外交と防衛が加わった程度だ。

 そもそもルクレール王国の地方自治が殆ど各地の領主に任せていた為、地球で言うアメリカみたいな国家体制である為である。


「仕事が増えそうで今から憂鬱です。これは国王による要請でよろしいのですね?」


「あぁ、1ヶ月後に発表する今年の8月に独立だ。」


「随分と準備がよろしいですね。ってか早すぎませんか?」


「・・・反精霊派の動きが予想以上に早い、そうなれば真っ先に狙われるのはアルファス家の誰かだろう。お前とアルシアは警護が付いているから外すとして、リフェルティア学園にいる子供の内の誰かとなる、そうならば、」


 反体制派の事だ、アルファス領を独立させて独立による混乱中にルフ教が国教の帝国が攻めて来て滅ぼすくらいの事はするだろう。

 そしてその混乱に拍車をかける為、アルファス家の誰かを殺るぐらいはやりかねない。


「レインに被害が出る可能性が、しかし。」


「あぁ、お前の息子は大精霊と契約している、しかも風属性だ、風属性は人を嫌っている。そんな風属性の大精霊が契約したほどだ、普通では無い。レインに危害が加えられたら絶対に動く。」


「レインから下位精霊として紹介された時もシルフィはレインを絶対に守ると言っていましたし。相当気に入ったんでしょう。」


 基本的に精霊は契約した人間を守ろうとする、気づいていないがレインとシルフィは通常契約では無く、より親密度が高い尊重契約である。

 それに風属性の精霊は人間の事を信用していない、襲って来た奴らを殺す事くらいは平気でやるだろう。

 それが襲って来た奴で済んだら良いが、場合によっては学園が壊滅し兼ねない、それだけは避けなければならない。


「そうか、お前が上司とは言えリフェルティアには私から話して置こう、独立の事もな。」


「あぁ、分かった。」


 こうして、ルクレール王国アルファス伯爵領は政界争いによりルクレール王国から独立する事となったのである。



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