第10話 この世界の地理
「ええ、もう使われる事無いと思ってたんだけどねぇ。」
精霊王アリフェスは姉の女神エリフィスに対して呟いた。
精霊視スキルは暇つぶしに女神エリフィスが600年前につくったスキルであり、精霊が可視化していなくても見えるスキルである。
しかしそのスキルを習得するには精霊との親和性が極めて高けなければならず、これまでスキル保持者はいなかった。
「ふふふ、そうね。精霊視スキルを身につける人が現れるとは、作っておいた甲斐があるじゃ無いか。」
「まぁ、とりあえず精霊視スキルの話は置いておいて、どのような感じなの?」
「どのようなって、何が?」
「風の大精霊の事よ。シルフィの事。」
精霊王アリフェスが惚けたような顔をしたのを見て女神エリフィスは気がついているでしょ?といった感じて言った。
精霊達の事は精霊王であるアリフェスに筒抜けである為、シルフィが何をしたかなど全て知っているのである。
「あぁ、シルフィは四六時中ずっと一緒にいるみたいだよ。常に何か話をしているからね、相当気に入ったんだわ。まぁ、精霊界に招待するほどだからねぇ。」
「なるほど、他の大精霊達の反応はどうなの?」
一番人間に対し懐疑的であった風が人間と契約を結んだとあれば、その他の大精霊達も動きがあるかと思ったのだ。
いくら精霊王といえ、大精霊の行動に一々口出しは出来ない。
「水と光は直ぐにでもレインと契約したがっていたわ。」
「水はともかく光まで?珍しいわね。あの子は結構大人しかったようだが?」
「さぁね、光は風と仲よかったから、レインと仲良くしている風を見て自分も、と思ったんじゃ無い?」
光と水の精霊は比較的契約しやすい精霊であり、風は契約しにくい精霊であるが、これは大精霊の性格が現れている。
しかしその大精霊である風が人間と契約した為、眷属に影響が出ていると思ったのだ。
「ふ〜ん、で?他はどうなの?」
「前ならあり得ない。って言ったんだろうけど、人間に対しての融和に一番懐疑的だった風が人間と契約したからねぇ〜?」
「まったく、レインも大変ね。貴方がレインと契約するって言いださなければ良いけど。」
「私が?流石に無いわよ。精霊王の私が人間と契約しては駄目でしょう。」
精霊王であるアリフェスは全ての精霊を従える王である。
各属性の眷属しか(充分)従えられない大精霊とは影響力及び力が別格なのである。
「別にいいんじゃない?レインも風の大精霊と契約した事、誰にも話してないんでしょう?それどころか風の下位精霊と偽っているでしょう。まぁ流石に大精霊と契約したって言えないわよね。」
「いくらアルファス家だと言えそれは無理よね。まぁ、風とレインが言い出さなければ分かり得ない事だけどね。」
アルファス家はこの世界で最も精霊との親和性が高い有名な家である。
過去の高いレベルの精霊と契約したのもアルファス家の名前が出てくるほどである。
「私は別に貴方がレインと契約しても良いと思ってるわ。あの子にはそれだけの素質があるもの。精霊視スキルを持っている事が何よりの証拠だわ。」
「でもレインを含めた家族が騒いでいたわよ。」
「え?何を?」
「女神エリフィスの加護があるって事。これからは隠す事にして、誰にも話さない事にしたけど、貴方が加護を与えるのも珍しいわね。」
今まで女神エリフィスが加護を与えた人間は数えるほどしかいない。
女神エリフィスの加護は無くなる事もある為、死ぬまで持っていた人は一人もいない。
その為、加護は他の従属神がつくのが一般的である。
「そりゃあ、私が誤って地球の輪廻転生から外れさせてしまったのだもの。それにあの子はなんだか見ていて楽しそうだから。」
「後者の方が本音のような気がするけど、まぁレインって子についてはシルフィが精霊界に連れてくるまで待ちましょう。」
「そうね、それまで私はレインを見守りましょう。」
レインが精霊界に行くのがいつか分からないが、永遠の時を生きる精霊にとってあっという間なので問題無いのである。
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「まぁ、お前も伯爵家の次男として地理などの事は最低限、知っておいた方が良いからね、私などが教えても良いけど風の精霊がいるならそちらの方が詳しいだろうから教えてもらいなさい。1週間後テストするからちゃんと勉強するように。」
今いるのは僕の部屋でお父様が地理に関する本を数冊持っている。
いくら僕の知力が高いからとはいえ学園に入学するにはそれなりの高度な(この世界基準)知識が必要なのである。
それにただ入学すればいいと言うものではなく、お兄様とお姉様はSクラス入学した為、次男もそれに似合うだけの結果が求められるのである。
「風の精霊ってシルフィの事?」
「あぁ、そうだ。風の精霊に限らず精霊は知識が豊富だからな、下手に私が教えるより良いと思ってな。では、私は仕事があるからシルフィ、頼んだよ。」
そう言いお父様は僕の部屋から出て行った。
どうやらこの後、別の領主との会談があるみたいだ。
「だそうだから、シルフィよろしく。」
『まぁ、良いけど。私が先生か、悪くないわね。』
「ん?シルフィ、どうしたの?」
『い、いや、なんでもない。じゃあまずはこのあたりの地理から始めるわよ。このアルファス領はルクレール王国の東部海域に位置する島の領地よ。地球の知識で言うとルクレール王国は日本の約15倍の540万平方キロメートルあって、アルファス領がある南アルファス島と北アルファス島、北アルファス島とその周辺の島々を含めた合計面積は約76万平方キロメートルあるわ。大体、日本の2倍ちょっと大きいほどの広さね。』
日本国の面積が37万平方キロメートルの為、ルクレール王国もといアルファス領はかなり大きい。
アルファス領はルクレール王国本土から東に800キロ行った場所にある領地であり、北アルファス島と南アルファス島とその周辺の島々から成り立っている。
アルファス領から本土までは転移魔法装置が設置されている為、移動はそれほど難しく無いが魔力が足りない為、普通は船である。
島であり、領地としては格段の広さがある為、他の領地に比べ軍事力も高い。
ルクレール王国の国民1600万人のうち約2割に当たる300万人がアルファス領に居住しているが、世界でも有数の貿易港•商業都市の為、400万人はいると言われている。
ちなみに前世日本や地球の事はシルフィに教えた為、シルフィもそちらの方が分かりやすいだろうと、例えてくれるのである。
「日本本土よりひろいの?随分と広いんだなぁ〜」
『ふふふ。でもその内、精霊に捧げている土地、いわゆる聖地が2割弱の15万平方キロメートルあるから実質的には61万平方キロメートルね、この聖地がアルファス領にあるからアルファス領は他の領地に比べて特別なのよ。』
「へぇ〜。アルファス領が精霊の加護があるって本当なの?」
アルファス領の作物の出来は他の領地に比べ格段に良い。
その為、税収も多く他の領地より税率は低いのだが、同じ人口の他の領地と比べ格段に税収が多いのである。
『ええ、そうよ。アルファス家の160年前の領主が、精霊達の為に当時最も自然豊かだった森を自然保護区にして精霊王に譲渡したの。精霊王はその心意気を感じアルファス領地に精霊の加護を授けたのよ。』
「自然保護区ってどんなんなの?」
『まぁ、簡単に言うと、ここは精霊達の土地とアルファス領主が決めて、人の立ち入りを制限したの。元々人間は殆ど入らない森だったからね。更に毎年、精霊達に感謝する祭、精霊祭を開催しているのよ。一応貴方の御先祖様なのよ。』
貴方の御先祖様って、地球の御先祖様の方がしっくりくるなぁ。
まぁこの世界も輪廻転生で回っているみたいだし、今はこのアルファス家の人間だからまぁいいか。
「自然保護区ってあのとても高い樹が生えている所だよね?」
『ええ、そうよ。その樹の名前は精霊樹。木の大精霊が立てたまぁ象徴みたいなものかな?』
「へぇ〜、なるほど。」
『うん、そうなの。まぁその事は置いておいて。まぁ、この星は地球の4倍ほどある大きな惑星だからね。広いんだよ。』
地球の4倍!?どうりで地平線が遠くまで見える訳だ。
「地球の4倍!?大きいんだねぇ〜、そういえば月が4つあったけど、連星なの?」
『いいえ、違うわ。あの4つの月はこの惑星の衛星よ。地球の月の6倍ほどと2倍ほど、3倍ほどと9倍の4つがあるのよ。』
「なるほど、大きいから連星かと思ったよ。」
『まぁ、地球に比べたら大きいのかな?それはさておき、この星には12の大陸があって、4つの大洋があるのよ。大陸が12個あると言っても地球の北アメリカ大陸と南アメリカ大陸のようにくっついている大陸や隣り合っている大陸は無いのよ。最低でも2000kmは離れているわ。それでルクレール王国があるのは4番目に大きい大陸のエルクシオ大陸と言う所よ。』
自分が住んでいるルクレール王国は540万㎢の面積を誇り、人口1600万人の国家である。
各領主に地方の自治を任せている実質的な連邦制の国家であり、エルクシオ大陸では2番目の規模を誇る国家である。
「お父様にはエルクシオ大陸には沢山の国があってルクレール王国が2番大きいって聞きましたけど、540万平方キロメートルしかない国家が2番目の規模なんですか?」
いやまぁ日本よりは遥かに広いけど地球には1710万平方キロメートルとかいう化け物国家おそロシアがあったからさぁ。
ちなみに日本は37万平方キロメートル。
『ん〜とね、地球は海と陸の比率が7:3だったけど、この惑星は海と陸の比率が8:2、いやそれ以下なのよ。だから大陸と言ってもオーストリア大陸程度しかないの。まぁ島は多いけどね。』
海と陸の比率が8:2って、まぁ4分の1の大きさの地球よりは陸が多いみたいだけど、海が広そうだなぁ。
太平洋レベルの大洋がその辺にありそうだ。
「じゃあそんなに広かったら大陸間の交流はないんじゃない?」
『いいえ、一応あるみたいよ。少なくとも一般常識で大陸は12個あると知られている程度にね、だから文化の違いはあれ、文明レベルはどの大陸も似たようなものなのよ。このアルファス家からも帆船が見えるでしょう?』
ここアルファス領は海に面している領地であり、アルファス家の屋敷(城)がある場所も港の高台に位置しており、ベランダから港町が一望できるほどの絶景が見えるのである。
そして反対側にはパレス湖という綺麗な湖がありそこから海に流れているのである。
ちなみにこのパレス湖はアルファス家所有の湖であり、他には誰も入れない為、僕達の遊び場でもある。
ちなみに屋敷はパレス湖の上に建てられている。
「うん、地球でも昔、帆船が使われていたからよく知っているよ。」
『そう、まぁ、私が教えられるのはこのくらいね、では授業終わり。』
「ありがとう、シルフィ。」
『まぁ、契約者として当然よ。』
なんだか、私に任せなさい的な感じだけど今日はシルフィに教えてもらったから良しとしよう。




