お仕事もらいました
そういえば、さっきからレティのおかげで私は助けられてる気がする。
一体この子は何者なんだ?
「あ、あのー。
レティってどういう生き物なんですか?」
「あぁ、レティはレシティアントという種類の生き物でクルノイアではとても珍しいんだ。
魔法の力があり、自分の心を許した相手にしかなつかない。
そしてその相手のためなら、自分の魔法をいいことにも悪いことにも使ってまでつくそうとする。」
クレイグの説明を聞きながらレティを盗み見るけど、パグのような鼻ぺちゃの顔してブフブフうたた寝してる姿からは想像もつかない。
「森で彷徨っているところを我々剣士団がみつけてな。
捕獲して王宮に連れて行こうとしたが、私以外には全く触れさせようとしないし食事も取ろうとしないから仕方なく我が家で保護することになったんだ。
だから、そのレティがそんなに君にはなついてることに本当驚いている。」
「でも、それで懐いてるからって私が安全とはわからないんじゃ...」
「それはな、レティはなついた人間が邪なことを考えていると姿形が変わるんだ。
瞳は赤く燃え角と牙が伸びて恐ろしい姿になる」
「え、こんなにおとなしそうなのに....」
言われてレティの頭を撫でると、たしかに耳の横に小さな角が生えている。
これが伸びてくるのかな?
「だから、レティが穏やかに君のそばにいるということが何より君が安全という証拠になるんだ」
話を聞いて改めてレティに助けられたことがよくわかった。
でも、なんで私になついたんだろう?
うーん、わからない....
「さて、さっきの君にレティの世話係をしてほしい件についてだが...」
私が一人でウンウン考えていると路地裏で話していた世話係の話になった。
そうだ!私その条件でここにおいてもらうんだった!
自分の話を信じてもらえた安堵感からすっかり忘れてた。
「はい!何でもします!」
「君にはレティの身の回りのことをすべて任せたい。
主に食事、散歩、排泄物の処理、入浴などだな。
今までは私にしかなつかなかったので、仕事とレティの世話の両立はなかなか難しかったんだ」
「了解しました!
他にも炊事洗濯なんでもできます」
「いや、家事の方はもとからのメイドがやってくれるので気にしなくていい。
君はレティの世話に専念してくれ。
食事は私が自宅で取ることがないので作ってもらってないが、改めて君の食事を頼んでおこう」
「食事!自分で作ってもいいですか!?」
「あ、あぁ、それは構わないがこのキッチン使えるのか?」
料理ができるかもしれない嬉しさに忘れていたが、ここは魔法のキッチン。
魔法が使えない私には、使いこなすことができないのだ。
「そ、そんな....料理したかった...」
「ウー!ウォン!」
ボボー!
落ち込む私にレティがすりよってきたかと思うと、急にキッチンのコンロに勢い良く火がついた。
「え?なんで??」
「そうか、レティがいれば魔導具も自由に使えるな。
では、食事は自分で作るといい。」
そうか、レティは私の望むことを叶えてくれるから魔導具もうごかしてくれるんだ!
これで、料理ができる!
「部屋はレティと一緒でもいいか?離そうとしても、無理そうだしな」
「はい!どこでも大丈夫です!」
住むところと仕事をもらえたことと自分で料理ができる喜びに私は舞い上がった。
「では、君の「繚。」
「繚って呼んでください。なんだか、君って呼ばれるのも他人行儀で悲しいので...
私もクレイグ様とお呼びします!」
「わかった。私のことも様なんてつけなくてもいい。」
「いえ、そこは私のことをおいてくださるご主人様ですので様呼びさせていただきます。」
「そうか。ま、好きに呼んでくれ
では繚、改めてよろしくたのむ」
「はい!クレイグ様♪」
「ウォン、ウォン!!」
私達二人と一匹のおかしな暮らしがここから始まった。