日本について話しました
クレイグが入れてくれた紅茶は、さっき彼が言っていたようにとても美味しかった。
美味しい紅茶で私の心も少し落ち着いてきた。
向かいに座るクレイグをこっそり観察してみる。
2m近くありそうな背丈に、剣士というだけあってガタイもいい。
紅い髪は短く刈り込まれ、眉間には常にシワが寄っている。
相手を威嚇するような鋭い目にきりりと結ばれた口元、表情は乏しいが整った顔をしている。
袖のゆったりとした白いシャツにブラウンのパンツ、足元は黒いブーツとシンプルな服は仕事が休みだったためだろうか?
とりあえずここは元いた世界とは全く別の世界で、ここで生きていくには彼に頼る以外方法がない。
どう説明すれば彼が納得してくれるのか、私は頭をフル回転して考えた。
「さっきよりだいぶ顔色も良くなってきたな。
どうだ、話はできそうか?」
紅茶飲んで一息ついたクレイグが、私の表情を伺いながら声をかけてきた。
「えっと、たぶん信じてもらえないこともたくさんあると思うんですけど.....一つずつ話しますね」
「ああ、ゆっくりでいいぞ」
「私がいた国は、地球という惑星の日本て言うところです。
こことは違って、魔法はなく科学が発展したところでした」
「かがく?....聞いたことないな」
私の話は彼にとってわけがわからないもののようで、眉間のシワがさらに深くなっている。
それでも少しずつ頭を整理しながら話を続ける。
「私はそこで会社員として働いていたんですけど、家に帰って寝たと思ったらいつの間にかここにいたんです。
それに、クルノイアという国名も今まで聞いたことがないし、私のいたところでは魔法は存在しない架空のものでした。
きっと、信じてもらえないと思うけど私違う世界から来たんだと思います....」
いろいろ言い訳も考えてみたが、信頼されるためにも真実を伝えたほうがいいと思いすべてをありのまま話した。
クレイグは私の話をありえないと笑い飛ばすこともなく、真剣な顔で聞いてくれた。
そして、考え込むようにしばらく無言になった。
不安な気持ちで私が彼を見つめていると、私の視線に気づいたのか目を見つめ返し口を開いた。
「違う世界からきたなんて信じろという方が難しい話だが、君の瞳を見ると嘘はついてないと思う。
なにより、レティがそこまでなつくのだから危険ではないということだからな。
私は君を信じよう」
そう言うと、眉間の力を抜き僅かに表情を緩めてくれた。
彼なりに微笑んでくれたつもりなのかな?
「よ、よかったー」
「ウォン♪」
信じてくれた喜びとともにそれまでの緊張がとけ、体の力が抜けた私は机につっぷした。
足の間ではレティが嬉しそうにこちらを見上げている。
そのきれいなエメラルドグリーンの瞳に吸い込まれていきそうだった。