首の皮一枚つながりました
「大丈夫か??震えてるようだが...」
彼に言われて初めて、自分が震えていることに気がついた。
あまりの衝撃に頭と身体がついていけてないのだろう。
これから私はどうしたらいいの...?
「とりあえず、君の身元がわからないならばこの国に置いておくわけには行かない...国境まで送るから自分で帰り道を探せるか?」
彼の言葉に全身の血の気が引いていく。
こんな訳のわからない土地で一人きりにされるなんて絶対にいや!
「お願いします!何でもするから、この国においてください!
私、行くところがないんです...お願い、お願い....」
「そう言われても、これが国の決まりなんだ」
彼の足にすがりつき懇願するが、団長という立場もあるからか折れてくれない。
どうすればいいのかわからず、絶望から涙で目の前が霞んでいたとき私と彼の間に何かが割って入った。
「ウー!ウォン!ウォン!」
それはさっきまでご機嫌で私の腕の中にいたレティだった。
毛を逆立てエメラルドグリーンの瞳を輝かせ、明らかに威嚇している。
「....レティ?」
「レティ!なんでこの子をかばうんだ!?」
飼い主であるはずの彼を威嚇し、さっき会ったばかりの私をかばう姿におどろく。
しばらく吠えて威嚇すると、今度は私の頬を舐めてくれた。
触ってみるといつの間にか私の頬には涙が伝っていたらしい。
「ありがとう、レティ。慰めてくれるの?」
「クゥーン」
私とレティのやり取りを見て、信じられないものを見た顔をしているクレイグ。
しばらく、うーんとうなりながら考えこむとため息を吐きながら仕方ないと肩をすくめた。
「レティがそんなに気に入ったなら、君を無下に追い出すわけにはいかないな。
しょうがないから、レティの世話係として我が家で働くならおいてあげよう」
「はい!もちろん!
レティ、本当にありがとうー!」
「ウォン♪」
嬉しくてレティを抱きしめる私。
それを不思議そうにながめながら、私の手を取り立ち上がらせると彼は歩き始めた。
「とりあえず、ここでは落ち着いて話もできないから家まで行こう。
うちには私とレティしかいないからゆっくり君の話を聞けるだろう」
少し歩くと独り暮らしにしては大きい家についた。
立派な家に、玄関で尻込みしていると後ろから大きな手に背中を押された。
「昼間は本家の方から手伝いのメイドが家事をしにくるが、今はもう帰宅したあとだろうから遠慮しないで入りなさい。」
「は、はい!わぁー!」
玄関を入るとホールになっていて、頭上にはシャンデリアが輝いていた。
体験したことのない世界に、開いた口が塞がらない。
そんな私なんてきにせず、先を歩いていく彼を慌てて追いかけた。
「さ、座って。飲み物を入れるから落ち着いたら君の国のことについて話してくれ。」
「はい、ありがとうございます。」
通されたのはダイニングのようなところだった。
横には広いキッチンが併設してあり、見たことのない調理器具がいっぱいぶら下がっている。
私がキョロキョロしているとティーポットとカップを持ったクレイグが戻ってきた。
ポットに茶葉を入れて持つと、小声で何かを唱えポットが赤く輝き始めた。
「っ!!!」
「少量だから、楽な作り方をして済まない。だが、紅茶好きなメイドが買ってきた茶葉だから味は保証する
。
ほら、レティにも水だ」
私が驚いて見つめているのを勘違いしたのか、見当違いな謝罪をしつて、床においてあるレティのお皿にどこかからか水が湧いてくる。
「.....これって、魔法ですか?」
「魔法が珍しいのか?
クルノイアでは魔法は当たり前なのだが」
そういうと、手に持っていたポットから紅茶を注ぎ始めた。
さっき茶葉しか入れてなかったのに、ちゃんと紅茶になってる...
もとの世界との違いに私の頭はパンク寸前だ。