一緒に出かけました
ガチャ
「今帰っ「クレイグ様、おかえりなさいませ!」
「ウォン!」
家の扉を開けて美味しそうな匂いがしてきたと思ったら、帰宅の挨拶より前にキッチンから一人と一匹がバタバタと走って駆け寄ってきた。
「ああ、今帰った。
何か変わりはなかったか?」
「大丈夫です!何もありませんでした♪
クレイグ様、すぐにランチにできますよー!」
「そうか、じゃあランチにするとしよう」
私を見上げる繚は褒めて褒めてと尻尾を振る犬のようでおかしくて、つい表情が緩んでしまう。
彼女の隣にいるレティと同じ子犬のようだ。
小さな頭に手をのせてくしゃくしゃとなでると抵抗を示してくるが、本気で嫌がっているようには見えないので好き勝手させてもらう。
「もう、また!髪の毛ぐちゃぐちゃになっちゃいます!」
「ああ、悪かった。
で、今日のランチはなんだ?」
「はい!今日は私が昔からよく作ってる海鮮塩焼きそばですよー♪」
「ヤキソバ?初めて食べるな。楽しみだ」
私のマントと剣を受け取るとキッチンへ向かって歩き出す。
繚は前の世界で食べていた料理を作って出してくれる。
そのどれもが私にとっては珍しく、そしてうまい。
今日の料理はどんなものなのか、期待に心が踊る。
「これが、焼きそばです!ぜひ召し上がってみてください♪」
ダイニングテーブルにつくと、すぐに皿にもられたヤキソバが出てきた。
香ばしい薫りが食欲をそそる。
早速口に運んでみると、海鮮の甘みと程よい塩気が口の中に広がった。
「うまい。エビやいかがたくさん入っているのがいいな」
「良かったー!クレイグ様のお口に合わなかったらどうしようかと心配だったんです」
「海鮮は好物だ。これはパスタの一種なのか?」
「パスタの仲間?のようなものです!茹でるときに重曹をいれると食感が変わるんです」
「そうか、うん。うまい」
「じゃあ、私も失礼していただきます♡」
繚も私の前の席に座り、食事を始めた。
はじめは使用人だからと頑なに食事をともにしようとしなかったが、私が一緒に食べたいと言うと渋々応じてくれた。
最初の頃は会話もなく食べていただけだったが、徐々に色々話をしてくれるようになり、今ではこの食事の時間が私達のコミュニケーションの時間になっている。
「今日は市場の魚屋さんが大きな魚を仕入れるみたいで、午後から解体ショーをするんですよ!」
「ほう。で、それを見たいのか?」
「はい♪どんな魚なのか見てみたくて!」
「では、せっかくならその魚でディナーにするか」
「わぁ!いいんですか?
どんな魚かわからないので、何を作るかは後で決めますね♡」
料理の話になるととたんに目を輝かせる姿は、おもちゃをもらったときの子どものようだ。
そんな幼い姿も可愛いと思ってしまうのは、小動物を見ているときと同じ気持ちなのだろうか?
自分の気持ちに自問自答しているうちにランチは終わってしまった。
「では片付けをしてまいりますので、クレイグ様はコーヒーをどうぞ。
解体ショーに間に合うように、終わったらすぐに出発しましょう!」
「わかった。待ってる間に出かける準備もしておこう。」
コーヒーを飲み終わり、団服からラフな格好に着替え終わると準備を終えた繚が大きなバスケットを抱えて待っていた。
「毎日それで買い物をしてるのか?」
「はい!私達の食事以外にレティの野菜も買わなきゃいけませんから」
体に見合わない大きなバスケットにたくさんの食材を入れて抱える繚を想像すると申し訳ない気持ちでいっぱいになり、彼女の手からバスケットを奪い取る。
「買い物の荷物持ちは今後私がやろう。」
「そんな!持たせるわけにはいけません。
今まで一人でなんとかなってたので大丈夫ですよ♪」
「それでは私の気がすまないんだ。私がいるときだけでもやらせてくれ」
「そんな..じゃあ、今回だけおねがいします」
納得いってないという表情の彼女を促し、街へ出かける。
昼間の市街はとても賑やかで、あちらこちらから活気ある店主たちの声が響いている。
「あら、繚!この間のレシピ美味しかったわ♪
また教えてちょうだいね!」
「任せてください!またメモに書いてきますねー」
「繚!これレティに。この間のお礼よー!」
「わあ!大きなりんご!レティも喜びます♪」
「ウォーン♡」
「繚ちゃん。この間は手伝ってくれてありがとうね」
「いえいえ、気にしないでください。
また困っているときは声かけてくださいね」
歩いている間に、いるんな人に声をかけられそれに答える繚。
この短い間にこんなにも知り合いが増えているなんて....
「繚は随分と知り合いが多いんだな」
「最初の頃、困っていたのを助けてもらったんです。そこから買い物のたびに話すようになりました。」
「そうか。この街に馴染めているようで安心した。」
「ふふ、ありがとうございます♪
あ、クレイグ様!あのお店ですよー!」




