始まりの始まり
嫌いだ。
理不尽な人間たちも。こんな力を与えた神も。なにもかもままならない世界も。
気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。
そんなに僕が嫌いなら近づくな。触るな。話しかけるな。関わるな。
すべて無駄だ。僕の態度が、性格が、考え方が変わるわけない。
僕はお前らには心を開かない。揺らがない。
あぁ、何もかも疲れてきた。なにも学ばない人間の相手をするのも、そんなことに時間を費やしている僕自身にも。
それなら、いっそ、世界を閉じてしまおうか。そうすれば、誰も干渉してこないだろう。
あいつらには悪いことをする。でも、あいつらは僕がいなくても生きていける。そう、僕なんか必要ないんだから。
……ごめんね。さよなら。
__かくして彼は、世界を作り上げた。
誰にも認識されず、干渉されず、自分の時すら止めてしまう世界を。
その扉を開けるのは、はたして。
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「ま、待ってくれよ!!そんな、そんなことしたらお前は…!」
「大丈夫。だって、お前は迎えに来てくれるだろ?」
「当たり前だろ!でも俺には、お前を置いてくなんてそんなことできねぇ…っ」
「もう、時間がない。ほら、早く行け」
世界が闇で染まっていく。あいつの、魔王の力でどんどん切り取られていくように世界は黒く侵食されていく。
ギリギリまで追い詰めた魔王は、最後の足掻きで究極魔法を発動したらしい。
世界を飲み込む魔法など、発動しても自分ごと飲み込まれてしまうというのに。
そんな世界から、男の親友は男を逃がそうと転移魔法を発動させていた。
魔王と戦っていたこともあり、現存する魔力では人ひとりを飛ばすことで精一杯。
いやだいやだと抵抗する男を彼は力が入らない手で、魔法陣へと押し込んだ。男を認識した魔法陣は起動し、青白い光を発しながら男の視界を塞ぐ。
男が最後に見たのは、こちらへ微笑みながら闇へと呑まれていく、親友の姿だった。
__かくして、その世界は闇の中で胎動を繰り返すものに成り果てた。時が流れず、停滞し、全てが生きながらにして死んでいる世界へと。
その世界を打開するのは、はたして。