case1.ぅゎょぅじょっょぃ
本編開始
・・・・・・
(ここは…)
見覚えがある。あぁ、そうか俺は死んだのか。そう以前も来たあの場所だ。30年たっても忘れるわけがない。
「あなたは任を果たしました。報酬の転生時の優遇ですが…使用しますか」
(管理者か…)
折角、手に入れた権利だ。利用してなんぼだろう。
「あぁ、勿論だ。条件は…」
俺が提示した条件はこうだ。
1.今回と同じスキルを持つこと。熟練度やレベルも継続すること。
2.今回よりも遥かに平和な地域が良い。
3.かわいい女性の幼馴染が欲しい。
理由だが、1は使い慣れたスキルがやっぱりいいだろうという判断だ。前世でも使い方を考えるのに時間を取られたくらいだ。ここで新しいスキルを選べばまた1からやり直しだ。
それと、どうにもこのスキルはレアらしい。劣化互換のスキル保持者すら見つからなかった。どうせなら希少価値あるスキルがいいだろう。
次に継続なんだが、スキルは肉体に宿るものではないことが分析出来ている。精神や魂に宿るのではないかと推測している。ならば、記憶が引き継げるなら、熟練度やレベルも引き継げる可能性がある。
まぁ、駄目なら駄目で諦めよう。
2は、流石に今回戦闘ばかりだったからなぁ。平和に暮らしたいと思ったんだ。どうせなら、今回みたいな危機なんてない平和な世界に転生したいものだが、ここにいる時点で別の世界に渡れていない。
まぁ、任務達成したってことは元凶を倒せたはずだし、魔物も減っていくだろう。
3は、その…なんだ。戦闘ばかりでむさい男ばっかりだったんだよ。現実にかわいい女戦士なんているわけないだろ。
いろいろ功績があるんだからちやほやされただろって?
そりゃぁ、魔物は倒す。抗う為の強化法の開発と人気は高かったよ。自覚あるよ。
でもさ、魔物の巣と呼ばれた場所って地味に遠かったんだよ。きっと、魔物が進行していくことも考えて成長するまで安全な位置に転生させたんだろうけどさ。
お陰で、点々と街を移動しないとならなかったから女っ気の欠片もなかったんだよ。準備が出来たらすぐ出発。30年だぞちくしょう。あの後、どこかで定住すればモテたはずなんだ。
そりゃぁ、幼馴染がいたからって恋愛につながるとは限らないけどさ、近くにいてくれるだけでもいいのよ。ほんと。
「わかりました。それでは良き生を…」
視界が暗転する。
(え、何これ。またかよ。相変わらず唐突な…)
しかし、中々目が覚めないな。
(あー、なんだこれ?まぁ、寝てればその内目覚めるだろう)
戦いで疲労したまま死んだ所為なのか、俺は無性に眠かった。眠気に任せて意識を落とす。
・・・・・・
目が覚めた。
今の僕は、前回の経験を踏まえて、3歳くらいだろう。どうにもこれくらいの年齢にならないと自我が覚醒しないらしいからな。もちろん、3歳になるまでの記憶も少しは残っている。
今の僕の名前は、アークだ。どうにも意識は肉体に引っ張られてしまう。さっそく、スキルの確認をしよう。
「冷たいっ」
<<全属性霊素操作>>を使用して、空気中の水を集めてみたのだが、途中で制御を誤り、顔に水がかかってしまった。<<分析>>の結果、イメージ不足が原因のようだ。まぁ、3歳の脳だから当然かもしれない。
「ねぇ、どうしたの?」
可愛らしい声で小首を傾げている少女がいる。そうだ、幼馴染のスーフィアと遊んでいたんだった。
スーフィアは、僕の両親の友人の娘同い年。家は隣りにある。愛称はフィアだ。
平和かどうかは未だ分からないが、条件は守られているようだ。
(なんて答えればいいんだろう?)
いきなり水が降ってきたのだ。説明が難しい。まぁ、適当でいいかな?
「えっとね。水を集めてみたんだけど…」
「…?どうやれば、できるの?」
ぐぬぅ。どうやるかかぁ。うっかり説明しちゃったけど、これはまずいのでないだろうか。3歳でこんな事ができるとフィアから親に伝わったら、僕は化物扱いされるのでは…
そう思うと急激に不安になる。年齢の影響で感情が上手く制御できない。
「どうしたの?いたいの?」
「あ、いや…えっと」
まずい、どんどん混乱していく。涙が溢れている。
すると、フィアはこちらに手をかざした。
「いたいのは~とんでけー」
その瞬間、フィアの手が光る。とても暖かな光だ。心が落ち着いていく。
「ん?わぁ、ありがとう。でも、今の何?」
「んーとね。かいふくのひかりっていうんだって」
舌っ足らずなその回答を効いて驚いた。<<回復の光>>は、前世でも使える人はいた。かなり上位のスキルで扱いが難しいはずだ。3歳でここまでできるのはどう考えても天才の領域だ。
「ねぇねぇ。それより、さっきのお水どうやるの?もういっかい見せて」
(うーん、フィアがある程度スキルを使えてるなら問題にならないかな)
フィアの要望に答えて霊素を制御し、水を集めていく。
「わぁ、お水だ~。すごいすごーい」
フィアがきゃっきゃっとはしゃいでいる。
僕がその様子に得意気になっていると。おもむろにフィアが手を掲げた。
「お水さんおいでー」
すると、なんということだろうか、空中に水球が浮かんだ。
「え。えぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
驚きすぎて大声を上げてしまった。
<<分析>>していたからわかる。わかってしまう。彼女は霊素を水に変換していた。集めているのではない変換しているのだ。
「え、何。フィアこそどうやったの?」
「水のせいれいさんにおねがいしたの~」
水の精霊?何を言っているんだ?
「えっと、フィアの両親はフィアがそういうことできるのは知ってるの?」
「うん、しってるよー。フィアはゆうしゅうなんだっていってた」
優秀?いやいやそんなレベルじゃないだろう。霊素を変換なんて前世の僕はできなかったぞ。落ち着け、きっと皆は、これがどれだけ凄いことか分かっていないんだ。
「あ、レイちゃんは火のたまとばしたらものすごくおこられたっていってた。どうしよう、みずのたまでもおこられちゃうかな…」
「え、あ…火?火の球?」
混乱してしまった僕は、フィアが泣き出すのを止めることが出来なかった。
「う…うわぁぁん。えっぐ」
「フィア、大丈夫だよ。泣かないで」
遠くから急いでいる足音が聞こえてくる。騒ぎを聞きつけた僕の両親が駆けつけてきたようだ。
「フィアちゃんどうしたの?」
「アーク。どうしたんだ」
僕は慌てて両親に何が起こったか説明した。
「えっとね、フィアは、僕が水の球を作ったから、真似しちゃったの。だから怒らないであげて」
「あー、水の球くらいなら問題ない…と言いたいところなんだけどなぁ。アーク、魔術は一歩間違えると、とても危険なんだ。必ず、近くに大人がいる状態で、許可をもらってからじゃないと使っちゃダメだぞ」
「はい、ごめんなさい」
父に謝りながら僕は盛大に混乱していた。
(魔術って何?というか皆平然としてる?え、どういうこと)
わからないなら、うん分析だ。前世において魔物の戦闘力を図る際に使っていた分析法を試してみる。これは、生命力のようなもの-便宜的にオーラと呼んでいる-が体から出ていて、その大きさや濃度から大体の強さを図るというもの。これを使うには、霊素を操作し目に集める必要がある。まずは、近くにいる父からだ。
「こらっ。アーク何をしている。魔術の気配がするぞ」
軽く頭に手を置くように優しく叩かれる。
「え、これが魔術なの?」
「あー、そこからか。そうだよなぁ。でも魔術に関しての知識は5歳からって言う規定があるんだ。詳しくは5歳になったら教えるから、それまではさっきのを使わないようするんだぞ」
その後、母に慰められ泣き止んだフィアが近づいてきた。
「アークだいじょうぶだった?」
「あ、あぁ。大丈夫だよフィア」
「よかったぁ」
ひまわりのような満面の笑顔。あぁ。なんてかわいらしいんだ。
フィアの笑顔に見惚れていると。両親は元の位置へ戻っていった。
(駄目と言われても気になるよなぁ)
約束した父には悪いが、好奇心というか、この混乱を収めるには分析するしかない。かといって、父には気が付かれたし、母も気づくかもしれない。
となれば、フィアか…。さっきの発言からも、僕が何をしているかはわからないだろう。
僕は、フィアに対して分析法を行ってみることにした。
(分析開始…)
え、なんだこれ。
そのオーラは、前世の自分の3倍は強いものだった。
やはり、展開が難しい
3行まとめ
・転生したよ。前世のチートスペックを保持したよ。
・幼馴染はかわいいよ。
・ぅゎょぅじょっょぃ。