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1章 ー邂逅ー 2話
廊下は薄暗く、冷気に包まれていた。窓から差し込む月明かりが、床のモザイクを白く浮かび上がらせる。昼間は賑やかなこの城も、夜になるとひっそりと静まり返る。自分の足音が長い廊下の暗闇に吸い込まれては消えていく。壁にかかった蠟燭の炎がゆらゆらと生き物のように動き、わたしの影の形を変えた。
突き当たりの部屋に父はいる。
父の話は、きっとわたしが隣国の第1皇子へ嫁ぐことが正式に決定したという報告だろう。父の部屋には、隣国からの使者も一緒にいるはずである。
胸の中の期待は膨らんだ。
"もうすぐだ"
わたしは思わず身震いした。
扉は、もう目の前にある。