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はじまり


「紗良、やっぱ俺ら別れね?」



吉良は軽い感じでそう言って笑った。

始まりも終わりもこんな感じ。

彼にとってはたいしたことではなかった。



高2の冬。





おそろいで買った星形⭐のイヤホンジャックは彼のスマホから消えた。…それに気づいた時、苦しくて…ズキズキ痛む心をなぐさめるように手で覆った。



彼は私の痕が消えたスマホで誰かと話してる。

笑った…。楽しそう…私と目が合うと、彼は視線をそらした。そしてまた何事もなかったかのように笑った。


吉良の中に、私はいないんだと実感した。





私と付き合っても…彼はきっとつまんなかったんだと思う。


だって…私と彼は全然タイプが違うから。

吉良は左耳にシルバーピアス。髪も茶髪…目立つ存在だった。1度タバコが見つかって停学になったこともある。


彼の周りは似た雰囲気の子たちが集まっていた。男も女も。


私はというと…平凡。いや、むしろ地味系に入ると思う。マジメとよく言われる。メガネをかけているからそう余計に見えるのかもしれないけど…『マジメ=つまらない』の方程式があって、言われるとなんかへこんでしまう。これといって取り柄もない。



だから、接点のない彼のいる世界はどこか怖かった。今思えば憧れもあったんだと思う。






「なぁ、お前さ莉乃とヨリ戻した?」



「あぁ?何?」



「いや…莉乃から聞いてさ…元サヤ、よかったじゃん」


「…あぁ」





莉乃…吉良の元カノの名。あ…今カノでもあるのか…。ずっと昔から吉良の守ってあげたい人。彼女は、吉良の前でも堂々としていた。私みたいに緊張したりしないんだろうな。だって…莉乃さん、美人だし。彼女もまた左耳にシルバーのピアスをしていた。

おそろいだったんだと思う。怖くて…聞かなかったけど。


私のおそろいの星⭐はすぐに消えてなくなったけど、彼の耳にはピアスがなおも光っていた。


また私の心はズキンと叫んだ。




***



きっかけはクラスメイトにからかわれたこと。

その日、黒板のすみに書かれた日直の名前…




吉良星名

星名紗良


ややこしいけど…


キラ セイナ

ホシナ サラ





「なぁ、お前らってなんか名前似てね?」


吉良のつるんでる友達の思いがけない一言に


「え!?」


「はぁ!?」


私たちはほぼ同時に声をあげた。



「あ!!…セイ、お前星名んとこ婿行けよ。星名星名って…マジうけんだけど」



勝手に人の名前で遊ばないでほしい…



「お前ら付き合っちゃえば」


そしてみんなで笑った。こういうノリ好きじゃない。だってバカにしてるし。



「お前ら勝手に盛り上がんなよ、星名とかマジありえねぇし」



低くて強い声。そこに彼の苛立ちを感じた。

私だって…なのに、先にこうきっぱり言われたことで恥ずかしい気持ちでいっぱいになる。


うつむいたまま私は何も言い返すことができなかった。


「うわ~セイ、ひでぇ。見ろ、星名かたまってんじゃん」


……。


こんなん余計みじめになる。


日誌を急いで書き終えると、私は逃げるように職員室へ向かった。





職員室から出た廊下のとこ、吉良が立ってた。

私に気づくと挑むような目でこっちを見る。

うわ…まだ帰ってなかったんだ…。



「おい」


……。



「おい、シカトすんなって」


……。もう、ほんとにほっといて欲しい。

彼はあんな酷いこと言ったくせに、悪びれる様子はなかった。



「なぁ、さっきのマジ怒ってんの?」


「怒ってない…です」



ため息をつく吉良…


「やっぱ怒ってんじゃん…そういう態度俺苛つくんだけど」


苛つく…彼から出た酷い言葉に泣きそうになる。



「ほら、それ。なんでそんなびくついてんだよ。俺とからかわれんのなんて、星名にしてみりゃ、最悪だったかも知んねぇけど…」


え!?


何言ってんだろ…吉良。

もしかしてさっきの…



「お前も、言いたいことあんならはっきりあいつらに言えばよかっただろ」


あ…今度は吉良が不機嫌そうに横をむく。



……。


ブフッ


私は笑いをこらえられなかった。

なんだ…吉良は「私が」嫌がったと思ったんだ。

「吉良が」じゃなくて…まぁ、「吉良も」私とじゃ嫌だったかも知れないけど…。



「お前…何笑ってんだよ、しかもブフッてさ」


呆れた顔で私を見た彼だけど…

いつのまにか、吉良も笑ってくれてた。



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