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お客様は異世界人

作者: イモムシ少佐

初めて小説を書きます。

いたらないところばかりですが、暇つぶしとして読んでいただけたら幸いです。

「いらっしゃいませ。ただいま揚げ物全品20円引きです。」



 目が点になるとはこういうことだ。


 ここはどこだ、私は自室の扉を開けたはずだった・・・・はずだったが、誰だこの女は・・

まさか隣国の間者かっ!


「貴様!何処の国の者だ!私の部屋で何をしている!!」


「私の部屋?いいえ、ここは私の店です。まぁ、厳密に言うと大型チェーン店のコンビニなんですが」


「こ・・んびに・・・?いやまて、店だと?そんなはずはあるか。ここは私のへ・・や・・・」


 そこでようやく自室の違和感に気ずいた。


 薄暗かった部屋は日が昇っているような明るさになっており、所狭しと詰まれた研究資料の山や机、壁一面の本棚などが消え、代わりに見たこともない瓶や箱・・・店というくらいなのだから商品だろうか・・?それらが綺麗に並べられている。


「な・・んなんだいったい・・・幻覚か?やはり弟子達の言うとおり仕事のしすぎか・・・」


 医者からは、これ以上無理をすると命に係ると言われたくらいだ。その前兆か?余りの突拍子のないことに痛む頭を抱えた。


「あらら、お兄さんお疲れのようですね。目の下に隈できちゃってますよ!よく見ると顔色も悪い。あれですか、今流行の社畜ですか?」


 何だ社畜とは・・女はこちらに警戒することもなくカウンターから出ると、慣れたように薬品棚と思わしき所から一つの瓶を手に取り、私の目の前に差し出した。


「はいっ!そんなお疲れの方におススメの『レ~ポ~ビタンDD~』これを飲めばどんな疲れも吹っ飛びますよ。」


 パララッパラ~


 オイ今、お前の背後で陽気な音楽が鳴ったぞ。


 疲れが吹っ飛ぶ?ふんっそんなことをいって大方私を毒殺でもしようとしているんだろう。甘いな、王族付魔術師に毒なんぞ効くはずがない。魔術といえど、研究対象で薬草関係も扱うからな。毒耐性の術を常に自分自身にかけている。


「あ、もしかして毒だと思ってます?やだなーお兄さんも疑うんですかー」


「私もだと?」


「はい、ついこの間もなんか魔法使いっぽいローブを着たおじーちゃんにすっごい疑われて~毒じゃないって説明するのに半日もかかったんですよ」


「当たり前だ、不審者の出した薬などそうやすやすと飲めるか」


「でも最後は飲んでくれましたよ?」


 何処の馬鹿かは知らんが、そんな怪しい薬を飲むなんて間違っても魔術師ではないだろうな。どうせ只の村人だろう。


「確か、ある・・ふれっど?ろい・・・ろいたー?って名前だったかなぁ?こっちの世界の人の名前って長くて覚えづらいんだよなぁ~」


 あるふれっどろいたー・・・アルフレッド=ロイターだと・・・ッ!?ば、馬鹿な!その名前は・・・


「確か、おじーちゃんみたいな神経質そうな人が来たらこれを見せるといいって・・・」


 そういうと女は上着から一枚の金で出来た小さな板を取り出した。


「これ本物の金かなぁ?齧ってみようか・・どう思います?」


 それは私達魔術師が神とさえ崇める、この世に始めて魔法という存在を創りあげた人物の結晶板だった・・・。

 偽物か?いや、結晶板は偽物を作れない。その証拠に板には本物である証拠の魂の欠片が付いている。あの燃えるような恐ろしくも美しい欠片は、以前この国に赴かれた時に国王へお渡ししていた物と同じであった。

 私は混乱していた。何故こんな素性もわからない女に結晶板を・・・


「おーい。お兄さん?ねぇ、これ齧っちゃってもいいかなぁ」


 やめろ。今すぐ口元からはなせ。


「いや、むしろこの綺麗なまま質屋に売り飛ばすか・・・本物だったら新車一括で買えちゃうよね」


 くるまがどんな物か知らんが、やめろ。おい、本当にやめろ!


「それは本物の金だ!しかもその結晶板は、魔術師の始祖となるお方のものだっ!!今すぐそのような邪念は捨て去れっ!!!」


「冗談だってば。お店の売り上げだから勝手に売り飛ばしたら捕まっちゃうもんね」


 こ の お ん な ! !


「さて、それでどうする?お兄さん。レポビタンDD買う?」


 もういい・・・もう疲れた・・あの方のお墨付きならば安全だろう。さっさと買ってこの場から離れよう・・・


 「・・・では一本貰おう。」


 私がゲッソリとした表情で言うと女は腹が立つほどの笑顔で


「お買い上げありがとうございます!150リゲルになります!」


 やっと開放される・・・そんなことを思いながら扉をくぐり閉まる瞬間


「またのお越しをお待ちしております」


 パタン。


 静寂が訪れた。またのお越しを?二度と出会うもんか!しかしここを開けるとまたあの奇妙な女がいるのでは・・・わずかな不安を抱き再び扉を開けると、そこはなんの変哲もない膨大な資料の山が詰まれた私の部屋だった。



後日、いつ過労死してもおかしくない顔をしていたグラン王国筆頭魔術師が、今までに見たことのないようなスッキリとした顔で弟子と医者を大層驚かせたそうな




 


 

  



ここまで読んでいただき、まことにありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
[良い点] さらっと読みやすく、おもしろかったです。 [一言] 思い付いたときでいいので続き書いてください。
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