表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とびら  作者: 久乃☆
16/16

最終話 白の世界

 結婚式の当日は、秋晴れだった。

 

 トンボが青い空を優雅に飛び回り、二人の門出を祝福してくれているようだった。

 

 ステンドグラスが太陽の光りを浴び、キラキラと輝く。


 祭壇には聖母マリアが優しい微笑みを浮かべている。

 

 パイプオルガンの(おごそ)かな音色が、協会中に響き渡る。

 

 入り口の扉が開き、ウエディングドレス姿の真央が、父親に手を引かれながら歩いてきた。その手がもう直ぐ、敦に渡されるのだ。


 永遠の誓いと共に、二人は離れることが無いと誓い合う。


 胸が高鳴る。


 もう直ぐ、もう直ぐ愛する真央が敦の妻になるのだ。


 敦は胸が熱くなるのを感じながら、真央を見つめていた。


 その時、入り口のドアが小さく押し開かれた。


 細い光りが協会中に差し込み、ドアが閉まった。


 そして、その扉の前には見知らぬ男が立ち、次の瞬間走り出していた。


 その男は何かを叫んでいた。叫びながら、両手で持ったそれを握りなおした。


 敦の目が、男の持っているそれを捉えた。


 真央が振り返り、男を見る。途端に真央の表情が硬直するのが分かった。


 真央が何かを叫んでいたが、何を叫んだのか理解できなかった。


 敦は咄嗟に、これから起こるであろう事態を予測し、走り出した。


 もう直ぐ自分の妻となる真央のもとへ。


 そして、真央の腕を引き、抱きしめた。

 

 その途端、背中に熱いものを感じた。


 徐々にその熱は耐えられない熱さへと変わり、気が遠くなるのを覚えた。

 

 周囲から悲鳴が湧き起こり、逃げ惑う人、叫ぶ人。

 

 敦は薄れ行く意識の中で




―――『地獄絵図だな』と思っていた。





エピローグ



「結婚式当日に、新婦の元恋人が別れ話の腹いせに、協会に乗り込み新郎をさしたって」




 大学病院三階にあるヘルパー休憩室では、数日前に起こった敦の事件で賑わっていた。




「それ知ってる。TVでもやってたよね」


「新婦の上司で不倫相手だったんでしょ」


「新郎は何も知らなかったって言うじゃない」


「新婦が刺されると思って身を挺して守ったって」


「格好いいよね。私もそういう相手と結婚したかったな」


「じゃぁ、まずは不倫からだ」


「そこから相手を探さないとダメか」


「その新郎って、この病院に入院してるんだよね」


「意識不明らしいよ」


「刺されたところがまずかったって話だよ」


「でも、背中からでしょ。背中刺されたくらいじゃ、意識不明にはならないよね」


「その後の大立ち回りがあったんだって」


「詳しいね」


「看護婦さんに聞いたのよ。新婦を守ろうとして、薄れ行く意識の中で、犯人を取り押さえる美談!」


「本当かねぇ」


「さぁ、本人は寝てるわけだから、本当のところは分からないわね」




 美談と言いながら、誰も真剣に敦の事を心配しているわけではないのだ。


 同じ様な毎日に、ちょっとしたヒーローが現れ、そのヒーローが眠っているというだけのことなのだ。




そして、敦は夢の中にいた。




「何だよ、又白の世界かよ」

 



 真っ白な世界。

 

 行けども行けども白の世界だ。

 

 どんなに歩いても、白の世界が終わらない。

 

 以前は、黒の世界で扉を見つけ『開けてはいけない』という声が聞こえたところで目が覚めた。

 

 次に白の世界で扉を見つけたら、黒の世界同様開けてみようと思っていた。

 

 何故なら、真央の言うとおり、確かによいことの次に悪い事が起こっているのだ。

 

 もちろん悪いといっても、ちょっと気に入らないという程度だ。

 

 このくらいなら放っておいても良いようなものだが、黒から白へ替わって逆転が起こったのだ。


 次は何が起こるのか気になる。

 

 もしかしたら、永遠に続く幸せが待っているのかも知れないではないか。

 

 それにしても、もうどのくらい歩いたのだろう。

 

 永遠に続く白の世界。

 

 体まで白に染まってきているように感じる。

 

 徐々に、自分が白と同化しているのじゃないかと不安に襲われるのだ。

 

 いや、そんな事があるはずは無い。

 

 これは、夢なのだから。




 敦は扉を求めて歩き続けた。

 

 



 永遠を求めて――。




 

長いことお付き合いくださいまして、ありがとうございました(^人^)感謝♪

楽しんでもらえましたでしょうか?

明日から、新作をアップします。

またきてくださいね^^


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ