第九話 夢
敦は暗闇を歩き続けていた。
(又この夢か)
行けども行けども闇の世界。
(一体この闇は何を意味しているんだろう)
止まってみるが、何も見えない。
いつもと同じ、建物も自然も無い、ただの空間。
そんな自分をどこからか見ている自分がいる。
客観的に見ているような、そうでもないような。
ひたすら歩き続けると扉が見えてきた。
ぼんやりとほの白く浮かんでいる扉。
(あの扉だ!)
脳裏に真央の言葉が甦る。
「次に夢を見たら、扉を開けてみれば?」
(そうさ。今回は開けるぞ、開けて何があるのかしっかりと見極めるんだ)
扉に近づき、ドアノブに手を掛ける。
するといつもと同じ様に、脳を揺るがすような深みのある男性の声が響いてきた。
『開けてはいけない』
体が硬直する。
しかし、いつもなら動けずに終わる夢が終わらない。
目だけを動かしあたりを確認するが、人の気配が無い。
敦はためらいながら、ドアノブを掴んだ。
すると男の声が脳に語りかけてきた。
『そのドアを開けてはいけない』
その声を振り払うように、敦の手が力強くドアノブを右へ回した。
カチッという音と共に扉が開いた。
次の瞬間、真っ赤なバラの花びらが敦に向かって吹き付けてきた。
思わず悲鳴にも似た声を出したらしく、そこで夢が終わった。
目が覚めると、新しい朝が来ていた――。




