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3/3

長いプロローグお疲れさん。そして本編こんちには

大敗した。全敗した。完全負けだった。

人志は試合に負けた。武志は戦いに敗けた。

そんな知らせを聞いて一番に駆けつけたのは田嶋であった。

そして、何も言葉を交わさずに帰ったのも田嶋であった。

なぜか?それは簡単な話だ。

敗けた人志が運ばれた医務室に行き、その人志の容態を見れば分かる話だ。

『空前絶後のチビ』は、『小さき魔獣』は、『パーフェクトチルドレン』は、『チャンピオン:人志武志』は。

その小さき体は、ボロボロのバラバラであった。

解体死体という意味のバラバラではなく、見た目の意味のバラバラであった。

顔は腫れ上がり、両腕は骨折、右足はひん曲げられ、全身強烈な擦過傷や切り跡。

鼻は折れ曲がり、片耳は取れていた。

裏格闘技トーナメントにはルールがない。

だから、武器使用もOKなのだ。

この人志の容態を見るに、擦過傷や切り傷、また片耳の傷などは刃物類で攻撃されたのだろう。

そして、両腕と足。

こちらの方は武器だとすると打撃類の武器であろう。

人志の対戦相手がよほどのパワー男でない限りは武器であるはずだ。

刃物に打撃武器。それを使うことに異論も反論もない。

だが、田嶋は内心思う。考える。

それにしても、ここまで残酷に半殺しできるものだろうか?と。

確かに人志の被害状況は、大まかにいうと骨折と切り傷だけだろう。それ以上もそれ以下もなく。

だが、見た目は最悪だ。気持ち悪いくらいグロい。

不思議なほどエグい。そんな感じであった。

だがそれよりも重大なことが一つだけある。

もう人志武志は、もうこの男は、もう小さいチャンピオンは、


チャンピオンではなくなったということだ。




※※※



起きた時には、体は包帯でグルグル巻きにされていた。

というか、全身包帯しかなかった。

腕を動かすことはできなかった。

痛いというよりは動かないという方が正しい表記であろう。

足はまだ動いた。といってもあまりの激痛で動かそうとすれば気を失いそうではあるが。

まぁ、左足が無事なだけ良しとすることとしよう。

耳は片方なかった。これには驚いた。

異様に耳が軽いと思ったが、そのことを聞いてから成る程とも思った。

他にもあちこちが痛いのだが、気にはならなかった。

というか、気にしたらどうにかなってしまいそうではある。

俺が負けたすぐにも医務室に来たと言っていた田嶋が俺に会いに来てくれた。

田嶋が言うには、俺は三日間起きてなかったそうだ。

いやに腹が減った理由はそれかと納得した。

「あー。腹減った。なんか食い物買ってきてくんねぇ?」

「なんで、俺がんなことしなきゃなんねぇんだよ。んなことより、はよその体を治せ。気持ち悪いんだよ」

「あー、そゆこといっちゃう?俺怪我人だぜ?全身包帯マンなんだぜ?少しの親切心くらいいいだろー」

「俺が倒れたとき無理矢理俺の嫌いなピーマン食わしたお前に食われたかねぇな武」

「まだそれを根に持つか。ってかそれはお前が悪いだろ。ピーマンくらい大の大人なら食えってんだ。子供かよお前は」

「子供っぽいお前がそれいうのかよ」

苦笑というように笑う田嶋。

自然と俺も微笑をする。

そして、苦い。苦い話を田嶋がし始めた。

「お前、負けちまったんだな」

「…あぁ」

「ま、仕方ねぇだろ。相手が武器使用をしてたとしたらさ。いくらお前でも─────「使ってない」」

俺の言葉が田嶋の言葉を遮る。

「……は?」

「だから使ってねぇんだよ。武器なんて。俺の対戦相手は武器を使ってない」

少しだけ黙る田嶋。不可解という顔を一瞬する。

「は?おかしいだろ?ならお前のその切り傷はなんだよ?まさか、その対戦相手は素手で切ったってのか?」

「あぁ。そのまさか、だ。アイツの拳だし、アイツの技だ」

驚愕といったように抜けた顔になる田嶋。

「嘘だろ…。そんなに完璧な切り傷を素手でかよ…。そんな几帳面で綺麗な切り跡、動物でも出来ねぇぞ」

「そうやって几帳面で綺麗な切り方できっから技なんだろ、多分。名前はなんだっけな?確か、『慚攻拳(ザンコウケン)』だったっけな。素手で行う斬撃拳法みたいだぞ」

「……マジか」

「マジだ」

信じられないといった顔になり、その後、顔をこちらに向けて、「お前、これからどうするんだ?」と言った。

「『どうするんだ?』ってなにが?」

「もうお前はチャンピオンじゃねぇだろ。まだ裏格闘技トーナメントで戦うのか?」

「いや、戦わない」

俺は即答した。

「そうか。…そりゃそうだよな。」

「あぁ。だから、これからは道場破りしてみる」

「そうか。……って、はぁ!?」

急に田嶋は大声を出す。ぶっちゃけうるさい。

「うるせぇーよ…。なんだよ、いきなり。俺今耳塞げねぇんだぞ」

「あ、あぁ。悪い…じゃなくて!まだ戦うのかよ!?あんな目にあったのにか!?」

「うん。そりゃあな。俺戦うのが好きだし、戦うことしかできねぇし、それに負けっぱなしは嫌だしな」

そんな俺の台詞を聞いて、溜め息を吐く田嶋。

「呆れたというか、なんというか。」

「おうおう。呆れろ呆れろ。それでも俺はするぞ」

「あぁ。存分に呆れさせてもらう…。」

そしてそういったあと、「まぁ、それが俺達格闘家だしな」と一人で納得した田嶋であった。

「それで?どこの道場破りするんだ?空手か?ボクシング?それとも柔道?」

「いや、そんなポプュラーな格闘技はもうしないよ。俺が破るのは裏流派御七家だな」

「裏流派技御七家?なんだ?それ?」

全く知らないと言ったように田嶋は問う。

「やっぱお前も知らねぇのか。まぁ、俺もこの前、というか三日前か。に、知ったんだけどな」

「三日前?それってお前の試合の日じゃねぇか?どうやって知ったんだよ?」

「もちろん試合中だぜ?俺の対戦相手が教えてくれたんだ」

「戦い最中に教えるって……なんだそりゃ」

「あー。そうそうそれで思い出したけど、この俺の怪我だって、そんとき教えてくれる代償として食らったもんなんだぜ?腕一本で一つ、片耳で一つって感じでな」

「なんだそのヤクザ者みたいな交渉方法は。ふーん。成る程。だからお前はそんなにダメージ受けてたのか。」

「そうだよそうだよ田嶋君よ。納得したか?俺にダメージがこんなあることを」

「納得はしないが理解はした。んな交渉乗るなっつの」

怒られた。せっかく、田嶋の疑問を解いてやったというのに。薄情な奴だ。

せっかく、田嶋の疑問であった。

裏格闘技トーナメントのチャンピオンであるこの俺が、あの大会最強のこの俺が、こと試合おいて“ダメージを受けたことのない”この俺が、あれほどに綺麗な切り傷や擦過傷を受けたのか?という疑問を。

「…まぁいい。そんでもって?なんだよ?その裏流派御七家ってのは?なんかの一派か?」

「んー。そういえばそうだろうな。言ってしまえば武術の最強集団みたいだぜ?」

「最強集団?」

「あぁ。絶対に表には出せないほど、残酷で残虐で非道な武術を使う集団。それゆえに強い武術集団。それが裏流派御七家ってらしい。」

「はぁ。…それがどうしたんだ?なんかすごいのか?」

「凄いに決まってんだろ。言ってしまえばそれは“表には出なかった武術”だぜ?それが名前の通り七個あるわけだ。そんな不可解で不思議な拳法学ばない手はないだろ?」

「あぁ。成る程な。そういうことか。」

「そういうことだ。俺はその“最強の七個の武術”を学ぶ。否、奪いたいわけだ」

そう。そういうことだ。

言ってしまえば裏流派御七家とは、不思議な武術を学んだ七の武術集団。

一つ一つの家に一つの武術が学ばれているというもの。

「『慚攻拳』もその一つだってか?話の流れからいうと」

「いや、違うみたいだぞ。似たようなものはあるらしいけどな。『慚攻拳』自体はアイツのオリジナルらしい」

少しだけ自慢気に俺は語る。理由は分からない。

「そうなのか。………俺も、俺もついていこうか?」

「……は?」

思わずすっとんきょうな声が出てしまったが、それほどに虚を突くような形で田嶋が言ったのだ。

「いや、だから。その道場破りを、だよ。」

「…?なんでだよ?」

理解できずに聞き返す。

「いや、なんでだよって。お前、あんま常識も良識もねぇしさ」

「んだそれ。道場破りだぞ?礼儀正しくするようなもんじゃねぇって」

「それぐらい分かって……あーも。分かんねぇのかよ。俺もその“不思議な武術”ってのが気になるんだよ」

「あー、そゆことね」

普通に納得した。

「なんだよ。そゆことなら早く言えよ。単刀直入にさ」

「あー。まぁな。でも、な。恥ずかしいもんだろ、そゆーのさ。」

「どこがだよ。ホント、お前そう言うどーでもいいところ初だよなー。気持ち悪ぃー」

「うるせぇ。ぶっ殺すぞ」

本気の殺意を感じたので、弄るのを止めた。



そういうわけで、始まった道場破り巡り。

七つの不可思議武術を、七つの不思議武術を、七つの不可解武術を、巡るお話の始まり、始まり。

本格格闘技ならば、ここで勝ったのでしょうか?

または、負けてリベンジなんでしょうか?


それは誰かにしか分からない


そして本作は何処に向かうのか…


─テスト期間終了!じきに投稿予定─

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