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魔界の二柱  作者: 国見炯
第一章・誕生編・完
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8――魔王サイド



 勇者、と名乗る人間が幾度となく勝負を挑みこんできた。

 その度に怨嗟の言葉を吐き出し、いかに魔王という存在が悪であるか。生きていけない命であるかという事を怨念をこめて吐き出す。


 まぁ、当たり前だろうな。


 特に利を得たいわけじゃなく、退屈しのぎに人界を半分程壊滅させたのだから。




「魔王様」


「……」


 側近の魔族に珍しく物言いたげな表情で話しかけられ、俺は視線だけを軽く動かす。 人界や天界に攻め込む時さえも、こんな言いたげな表情は浮かべない。


「お客様がお見えになりました」


「……客? また勇者とかいう人間か?」


 勇者はよく来る。

 天界は人界程被害がないからなのか、俺の逆鱗に触れぬように魔界へ来る事はないしな。


「いえ……違います」


 やけにもったいぶった側近の言い方に、俺の眉が微かにだが不機嫌そうに動く。


「女性……女王様です」


 側近の言葉が、俺の耳に届いてからその意味を理解するのに、ほんの少しの時間を要した。

 300年現れなかった女王。

 俺の対であり、俺と肩を並べる存在であったはずの魔界の女王。だが、俺の力が強すぎるとかいうふざけた理由で、俺と同時に生まれなかったんだったな。


 女王さえ生まれていれば、こんな退屈はしなかったのだろうか…?


 そんな言葉が、幾度と無く脳裏を過ぎった。


 その女王が現れた。

 歓喜に、心が震える。



「そうか。女王か」


 俺の、淡々としながらもその内に篭る感情に気付いたのか、側近たちが一斉に頭を垂れた。


「今回の神界への戦は無しだ。女王と遊ぶとしよう」


 目に付くものもなくなってきた。

 暇つぶしに、また神王と神女王と遊んでやろうかと思ったが、とりあえず保留にしておいてやる。

 俺の対であるという魔界の女王。本当に、対なのか。それを確かめる方が重要だからな。


「女王様にはアスターニェが付き従っております」


「そうか」


「お供致します」


「許す」


 普段は供など許しはしないが、女王と遊ぶにはあの側近が邪魔だ。そうなると、俺の側近をあてがった方がいい。


「適当に遊んでやれ」


 俺の側近――キアースと女王の側近であるアスターニェの実力は互角。拮抗を保つ世界では仕方ない事。


「勿論です」


「……」


 無表情を保ちながらも、何処か嬉しげなキアースを視界の隅に捉えながら、俺は地面につくような長い漆黒のマントを翻した。


 負けない。けれど勝てない相手との勝負。

 

 生まれてから初めてだ。


 その時の俺は、今のキアースのような表情を浮かべているのか……さぁ、女王。試してみようか。







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