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魔界の二柱  作者: 国見炯
第一章・誕生編・完
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 スチャッとはりせんが宙をきる。

 うん。振り回し具合はオッケー。調子はいい。どうやって測ったのかはわからないけど、私の手にこれでもかというぐらいに馴染むはりせん。

 アスターニェに案内されながらたどり着いた魔王城の前で、私は腕を組んで城を見上げた。女王の城も広かったけど、魔王の城も広い。

 小市民にとっては一生縁のない、場違いな場所。

 けれど今日はそこに一歩足を踏み込み、魔王と対峙する。と思って気合をいれてみるけど、少し心臓がガタガタ言ってるかなー。

 

 ……どうしよう。色々とやばかったら。


 頭の中で思い浮かべている魔王像といえば、RPGに出てきそうな感じの魔王。想像力が貧困とか言うな。多分、見た所美男美女が多いから、きっと魔王も美形だとは思うんだけどね。

 だけど美形が全て目の保養になるかといえば、なるわけがない。

 美形なのに目の保養から外されたアスターニェが私の後ろに控えているし。しかし、さっきから余裕だよね。アスターニェって。


 魔王領の魔族からは何だこいつら?なんて眼差しを向けられているんだけど、それを軽く流している感じがするし。


「大丈夫ですよ。女王様に敵う存在はおりません」


「……魔王と引き分けだっけ? けど、力の使い方なんて知らないよ」


 アスターニェの言葉に、首を横に振りつつも私の表情から笑みが消える事はない。小市民の心臓がガタガタ音をたててはいるけど、なんとなく安心感もある。

 大丈夫。何とかなる、とかそういう女の感?

 多分、女王だから、とかそういう単純な理由なんだろけど、どうにも害される気がまったくしないのよね。



「さぁ、行こっか!」


 はりせんを振り回し、先を城へと向ける。

 気合は十分。

 書類の準備もおっけー。

 さて、この詳細を聞きに行こうと足を踏み出した私のマントを、アスターニェが遠慮なく掴んだ。ズルリと転びそうになったのは私の所為じゃない。

 おもいっきり後ろに引かれれば誰だって転びそうになると思う。

 顔面強打の次は後頭部強打なんて洒落にもならない。私は重力に引っ張られる身体を、無意識に魔力で浮かせた。

 それによって中途半端な体勢で宙に浮かぶ私の身体。


 ……魔族って空……飛べるんだ。


 いやビックリ。

 ちょっと憧れてたけど。

 嬉しいけど。

 浮かぶんだ。


「浮かびますよ。飛べない魔族はある意味希少でしょうねぇ」


「……」


 人の感動をあっさりと打ち砕くアスターニェ。私が魔族の生態に慣れていない事は知っているのに、仕方ない女王様ですねぇ。何て嬉しそうに言いながら魔力で身体を浮かせる。


「……」


「どうかしましたか?」


 どう見ても。角度を変えても魔力よね。宙に浮いてるのって…。


「羽で飛ばないの?」


 蝙蝠の羽があるのに。

 あぁ、でも。人を飛ばすにはちょっと小さいのかな。身長が180cm程なのに比べ、羽は広げたとしても50cmぐらい?


「もう少し形態を本性に近付けたら飛べますよ」


「…形態? 本性??」


「はい。それよりも魔力で飛ぶ方が楽ですが。慣れていますので」


「へぇ…」


 やっぱ、見た目はほとんど人と変わらなくても魔族っていう種族なんだね。しみじみと実感しちゃった。


「…女王様」


「何?」


 当初の目的を頭の片隅において、まじまじと蝙蝠の羽を見てたらアスターニェのちょっとだけ真面目な声が上から降ってくる。

 そういえば、こういう真面目な声は珍しいかも。大体観察してるか、遊んでいるような声だけだったから。


「どうやら、女王様の魔力に呼応してくれたみたいですよ」


「……ん?」


 私の魔力に?


「それって…」


 ひょっとして。

 と、言おうとして止めた。


 階段を上がりきった場所に立っていた男性。

 深い闇を体現したような男の人が、ただ口を噤んで私を見下ろしてた。


「魔王…」


 まさかここまで出迎えてくれるなんて。

 ちょっと、驚いちゃったかな。まぁ、やる事は何も変わらないんだけどね。





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