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結論から言うと、紅茶はとっても美味しかった。うん。格安安売りな味じゃなく、高級店で100gン万円の味。
一回だけお付き合いで飲んだ事があるから、間違いないはず。
ハァ…明日も飲みたい。
けど、ね。
「こんな高い紅茶飲んでて大丈夫?」
赤字、な魔界だよね。
不安で仕方なくて、はりせん片手に現れたアスターニェを見ずに聞いてみた。
「こちらの領地は細々とやっておりますから大丈夫ですよ。前女王様時代に蓄えていたものもございますから。
どうやら、女王様は魔王様の対らしく、無垢ではなくしっかりとした方の魂が引っ張られる傾向にあるみたいですね」
「え? 何それヤダ」
思わず呻く様な声を出しちゃったじゃない。
それを言われると、魔王の浪費が激し過ぎるから堅実な赤字工場の事務員の私が引っ張られた、とかそういうオチ?
「微妙…」
「ふふ。私は嬉しいですよ。此度の女王様がこのようなしっかりとしたお方で――…調教するのかされるとのか、どちらでも楽しみです」
「……」
無駄に素敵な笑顔。
きっと、一般の女性ならウットリとしちゃう程の美形。
言ってる内容は難しかないけどね。
「寝言は寝てからいいなさい。じゃ、魔王とかいうヤツの所に行くわよ」
はりせんをアスターニェからぶんどると、私は感の赴くままに足を進めようとする。なんとなくこっちのような気がする。
「流石は女王様です。魔界は初めてであっても、わかるんですねぇ」
どうやら合っているらしい。
「女王様。魔王様との初対面です。衣を…」
「んん?」
相変わらず何処から取り出したか分からないけど、アスターニェが手に持っているのは真っ白なマント。
ふわんふわん。
こんな可愛いの似合わない、と言いかけようとして止めた。そういえば、容姿が違うんだっけ。そんな事を考えてぼんやりとしていると、アスターニェが甲斐甲斐しく私の服を外出用に変えていく。
あら可愛い。
もこもこのフード付きマント。
肌も白いから、本当に全身真っ白という感じ。
「…白色なんだ? 白って、天界っていうイメージがあるんだけど?」
この身体にはとっても似合ってると思うのよ。ナルさん的な発言じゃなく、この身体が自分のものだっていう実感がまだないからだと思うんだけどね。
「本当に面白い事を仰る。女王様が似合うならば何色でも構わないのですよ。女王様には白色が。輝くような純白が似合う。なので、私の衣も女王様に合わせてみました」
「………似合うね」
そして手品か。
一瞬でアスターニェの服が変わる。
いや、似合うよ。似合うんだけどね……。
「似合うでしょう?」
コイツこそナルさんだろう。
うん。ナルさん決定。
「まぁ、いいや。さぁ、行くわよ」
「……何がいいのかわかりませんが。きっと女王様の事ですから碌な事を考えていないんでしょうねぇ」
少しだけ目を細めて私を見たアスターニェの言葉。
「……アンタも大概失礼だよね」
ホントおかしいなぁ。
まだ出会って間もないはずなのに、何でお互いこんな扱いになってるのかなぁ。