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魔界の二柱  作者: 国見炯
第一章・誕生編・完
3/32


 ざっと説明を受けました。

 大まかだけど。そこから分かった事といえば、赤字工場のしがない事務員だった私は、あのバスの事故で顔面強打。その際頭も強く打ち付けたらしく、ほぼ即死。ほぼ、ね。ほぼ。

 あの顔面強打なんて体験は死んだ後も忘れられておりませんとも。


 しかし、と改めて辺りに視線をさ迷わせてみれば、私が聞いた澄んだ音の残骸が私の周りに散らばっていた。


 これはなんでしょう?


 視線だけで蝙蝠の羽の人に問えば、にっこりと艶やかな笑みを返される。


「これは、女王様の卵です」


「へぇ、卵」


「えぇ、卵です」


「私って卵から生まれたの?」


「勿論です」


 ……勿論、だって。

 軽くカルチャーショックを受けちゃったりしているんだけどどうだろう。

 そんな私の疑問も蝙蝠の羽の人はさらりと流し。あれ、絶対気付いていると思うんだよね。気付いてて流してると思うんだよね。

 …いい性格してる。どこぞの社長みたいなヤツ。


「こちらは、元はこのぐらいの大きさの卵石でした。魔界においては一番価値があり、尊い鉱石でもあります」


「へぇ」


「銀色の卵石には、女王様が宿り生まれますから。我々にとっては何を置いても守るべきものなのですよ」


「ふぅん。銀色の卵石にはって事は、他の色もあるの?」


 銀色が女王の色なら、金色は魔王だったりしてね。魔界って言ってたし。


「勿論です。金色の卵石には魔王様が。こちらは300年ほど前にお生まれになっておりますが」


「……300年。それはまた長生きだね」


 生前の私の十倍程生きてるね。


「女王様はどうやら変わった知識をお持ちのようですね。私は500歳ですが、十分の一も生きてはいませんよ」


「………へぇ~」


 それはとっても長生きな種族だね。

 そして、私の中身が生粋の魔界の住人じゃないという事も、理解ありですか。他の人たちが、私に対してひたすら頭を下げている中、蝙蝠の羽の人だけが私の前に立ち、悠然と微笑む。

 うん。つまりはかなりの実力者。でもって頭もいいよね。性格は悪そうだけど。


「本来ならば、女王様は魔王様の対の存在。同時に生まれるはずが、魔王様の力が強く、対である女王様の誕生が遅くなってしまったのですよ」


「強いんだ」


「勿論。対である女王様の力も、魔王様と拮抗しておりますが」


 そうなんだ。

 魔王と拮抗って事は多分、魔界じゃ一番って事だよね。

 でも魔王って…。


「人間と仲が悪かったりしてるの? 勇者に退治されたりしない?」


 私自身がある意味ありがちな体験をしているという事は、勇者に退治されるまでが一連の流れ、という事もありえるんだよね。

 そう思って聞いてみれば、思いっきり笑われた。

 顔……崩れ過ぎじゃない?

 けど、大口を開けても美形はやっぱ美形。

 例えお腹を押さえるようにしつつ身を捩じらせても、角度を変えても美形は美形なのよ。


「魔王様は既に6回程人間界を壊滅状態に追い込み、 勇者と名乗る人間は両手じゃ足りない程塵に返してますよ」


「………何で300年で6回も? 多くない??」


 そんなに回数が多かったら立ち直れないね。そう思って聞いてみたんだけど、返ってきた返答は予想の斜め上をいくものだった。


「資金不足だからでしょうね」


「…資金不足?」


「はい。魔王様は集める事が好きですから。天界への襲撃もあわせたら、両手では足りない数ですよ」


「……はい?」


 今、色々と変な事を聞いたような気がする。


「攻め込むと、お金になりますから」


 私の引き攣った頬を眺めながら、蝙蝠の羽の人が言い切る。

 いや、だからね。

 資金調達で攻め込むって……。


「リスト頂戴」


「はい?」


「魔王が買った購入品リストを用意してくれ、と言ったのよ」


 節約もなしに、他所から分捕ったのか魔王というヤツは……赤字工場の事務員経験者としては、本当に見過ごせない。

 寧ろ、リスト次第じゃ殴り込みに行くからね。

 実力は拮抗してるって言ってたし、殺されはしないでしょ。多分ね。






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