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魔界の二柱  作者: 国見炯
第一章・誕生編・完
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 人間の慣れって恐ろしい。もう人間じゃないけど。というつっこみは飲み込んで。


 広すぎる私専用の浴場につかりながら、腕と足を伸ばす。おもいっきり伸ばしても浴槽に当たる事のない広さ。うーん、気持ちいい。


 このお風呂のお湯は温泉をひいているらしく、日替わりで何処の温泉かを選べるようになっている。どういう仕組みなのかは知らないけど、魔法とか人外だとかそういうのだろう。檜風呂だし。なんて贅沢な。


 懐かしの地球に手が届くのに、私の居場所はもうない。


 時々、発作のようにそれを思い出しては泣きたくなるけど、それでも回数は減っていった。結局、慣れてしまったのだ。


 女王としての暮らしに。


 赤字工場の癖はまだまだ抜けていないけど。


 それと同時に、タイミングよく届くキィラ手紙。


 毎回却下の返事を送るんだけど、如何せんその量が多い。


 ひたすらに多い上に、長い。


 リストには地球で売っている物。ゲームとかそんなのばかり。最近は食べ物や飲み物が増えているけど、キィラにとって必要なものなのかどうか。


 新作ゲームは常に発売されているから、やるなら気になるのはわかるんだけどね。


 気持ちはわからなくもないが、キィラがゲームには手をつけないという裏は既にとってある。だからこれも却下。


 却下却下却下……。


 って、これって無駄遣いだよね。どうしてそんなに浪費が好きなのか。買い物依存症か。買い物依存症だよね。うーん。頭が痛い。


 折角の温泉なのに、こんな事を考えるなんて勿体無い。


 思考からキィラの手紙の事をポイッと投げ捨て、お湯をかき混ぜた。


 うん。やっぱお風呂は日本人の醍醐味だよね。


 この温かなお風呂。檜風呂。


 贅沢だってわかっているけどやめられない。


 日本にいた頃は、週に一回の贅沢で入浴剤を湯船にいれてのんびりとしていたけど、ここでは温泉の元なんて必要ない。なんたって天然の温泉が日替わりで楽しめるのだ。


 気持ちいいなぁ。


 うっとりと目を細めながら、檜のふちに手をかける。


 今度はサウナに挑戦してみようかな。折角あるし。


 なんていうか、日々色々なヴァージョンのお風呂が増えているんだけどね。


 理由は多分、というか絶対に、アスターニェに私のお風呂好きがばれたから。そんな事にお金を使わなくていいって言ったんだけど、アスターニェににっこり魅惑の笑みでサラッと一刀両断された。


 女王様の為に使用するお金があまりまくっていますから。使わないと逆に勿体無いというやつになりますよ。とか。これは女王様の為だけにしか使えません、とか。


 なんか色々と言われて、おぼろげだけど頷いた記憶がある。


 それ以来増え続けるお風呂。今度は温泉プールを作るとかなんとか言ってたけど、冗談ではなく本気なんだと思う。アスターニェは大体口にだした事は実行する。


 冗談は冗談とわかるけど、大体本気だ。


 侮れない。というのが、この短い間ながらもアスターニェに対する私の正直な感想でもある。なんて言うか……本当になんと言っていいのか。


 ひたすら甘いのだ。


 アスターニェは私に対して。残念なイケメンである事には変わりないんだけど。キィラの所はどうなんだろう。ナンバー2の人とかもアスターニェに似ているのかどうか。


 なんとなく苦労してそうだけど。キィラの買い物依存症の煽りをくらうのはその人のはず。名前を覚えていなくてごめんなさい。キィラの腹心の魔族さん。


 私からの同情なんていらないだろうけど。アスターニェが私に対してべた甘なのと同じく、多分キィラの周りもそうなんだろう。


 妄信にも近いかもしれない。この短期間で、それだけはわかった。ただ、アスターニェ自身は私に対して程ではないけど、やっぱりキィラの事も尊敬というか、絶対的な対象にはしているという事がわかった。


 つまり、魔界の住人にとって、魔王と女王は絶対的な存在なのだ。優先はそれぞれの王だとしても。


 パシャリ、とお湯をすくって顔を洗う。


 乳白色のお湯は、なんとなく肌に優しそうな気がする。


 さて……。そろそろでようかな。このままだと身体全部がふやけそうだし。






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