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魔界の二柱  作者: 国見炯
第一章・誕生編・完
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 わたわたと慌てる私とは対照的に、真白は冷静だった。うっとりと私を見つめてくる様は、冷静と言い切っていいのかわからなくはなるが、それでも冷静な方だろう。


 慌てる私ですら愛しいとばかりに、目を細めてうっとりと私を見てくる熱視線。生まれてこの方、同性は勿論、異性にもこんな目を向けられた事はない。それにたじろいでしまう私は、やはり小心者だと何故かこんな時だというのにそれを実感していた。


 ある種の現実逃避だとも言えるかもしれない。




「え……と。真白……さん」




 明らかに自分よりも年上に見える真白。さん付けをしたら、それが気に入らなかったのか一瞬、何かしら読み取れない光が瞳に宿る。きゃー。怖い。


 命の危険とかではなく、ただ迫力があるのだ。


 美人って怒っても迫力があるのよね、なんて現実逃避気味に声には出さずに呟く。




「私の事は真白、と。


 名称は結構ですよ。我が主」




 何が楽しいのか、にこにこと笑う真白。どんな表情も様になる真白は、360度死角ナシの美人さんだ。何処をどうしたらこんな美人さんになったのか。真白は確かに純白で綺麗なハリセンだ。


 つっ込み兼武器としても防具としても申し分ない威力と防御力を誇る。キィラに攻撃されても皹1つ入らないという事は、きっと数値化が難しいほどの防御力を誇ると思うんだよね。


 一体何で作られたのか。聞いてもわからないと思っていたけど、こうなってしまえば話は別だ。アスターニェにちゃんと聞いた方がいいだろう。


 とりあえず真白と一緒に執務室に移動し、重厚なテーブルの上に置かれていた呼び鈴を鳴らす。すると、それから1分も経たないうちにアスターニェが扉の前に立つとほぼ同時にノックをした。


 トントンと響く音。




「どうぞ」




 それに、私は招き入れる言葉をあっさりと口にした。隣で不用心ですよ、我が主──なんて真白の声が聞こえたが、真白がいる限り大丈夫だという安心感が、私を何処までも持ち上げる。対キィラだったら怖いけど、アスターニェに対して恐怖心は芽生えない。


 まるで格下だからと、自身に宿る魔力が語りかけているような。そんな気がするからだ。


 腹心であり、ナンバー2であるアスターニェ。確かに私の領ランドディアにおいて、アスターニェを害せる存在はいない。それと同じく、そのアスターニェといえども私を害する事は出来ないのだ。


 絶対的な実力の差。


 魔界ではそれが常識であり、不可侵でもある。


 女王は絶対的な存在。


 代々引き継がれている記憶の殆どを引き継いでいない私でも、それぐらいはわかる。未だに納得が出来ていない真白の手を取り、上を見上げた。


 真白の方が身長が高いのだ。




「真白がいてくれるから大丈夫でしょ」




 素直に、思っている事を口にした。


 すると、真白は真っ白な肌を朱色に染め、口元を手で押さえつけた。我が君素敵です、可愛いです。あぁぁぁぁ。と、残念な雰囲気が漂ってくるが、あえてそれには気付かない事にする。


 赤字事務工場の時に培ったスルースキルは、魔界の女王として生まれ変わっても健在だ。


 まぁ、真白の場合、美人なお姉さんは大好きだけど、性別を女性だとは言いきれない。ただ、女性形態をとっているだけだ、が正解だったりもする。


 私の性別が女だからだろうか。それに合わせた結果が、美人なナイスボディなお姉様になっただけだろう。そんな所は冷静に考えられるが、どうじて真白が擬人化したのかという肝心の話は、やはりアスターニェに聞かなければわからないだろう。


 重厚なテーブルと、それに合うように作られたこれまた重厚な椅子。座ってふんぞり返るような性格でもない私は、テーブルに寄りかかりながら、アスターニェを待つ。ゆっくりと、重たい扉が開かれた。


 何処もかしこも重厚過ぎて、扉はものすごく重そうだ。




「失礼いたします。女王さ……ま……」




 顔を上げたアスターニェの瞳に飛び込んできたのは、真白という存在。如何にも驚きましたとばかりに目を見開くアスターニェは、初めて見る表情を浮かべていた。どうやら、真白の存在に気付かなかったらしい。




「女王様。そちらの方は?」




 臨戦態勢を取るアスターニェと、腕を組みながらアスターニェを見下ろす真白。2人とも迫力のある美人さんたちなので、すごく怖い。


 あぁ、部屋の隅でこそっと丸くなっていたい。それが本音なんだけど、2人はそれを許してくれそうにはなかった。




「真白って言ってね。昨日作ってもらったはり……」




「我が主アリアフィナール様より真白の名を頂きました。側近アスターニェ。主の事は心配せずとも結構。私が常に近くにいますから」




 私の言葉を遮り、真白が私を背に隠すようにして前に出る。


 え? ちょっと待とうか真白さん。




「私は魔界ナンバー2ですよ。女王様の手足となるべき存在。真白と言いましたか。貴方こそ一歩下がりなさい」




 はい? ちょっと待ってみようよアスターニェさん。




「フフフフフ」




「ハハハハハ」




 とっても笑い声が怖いですっ。


 そう思った私の本能はとっても優秀で、力と力の勝負になりそうだった所を、魔力でぶった切った。室内でナンバー2とそれに匹敵する真白が戦いを始めたら大変でしょ。


 私の年収でもとても買いきれない調度品を目の前に、私のとるべき行動は1つだけ。




「いい加減にしなさいッッ!!!」




 ランドディアはキィラの所のカナディアルと違って赤字財政ではないけれど、一体幾らか金額を聞いたら泣いてしまいそうな調度品を前に喧嘩をおっぱじめ様とする2人に、私の怒りの魔力が突き刺さった。途端に静かになる2人を見て、私は満足気に頷いたのだった。








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