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魔界の二柱  作者: 国見炯
第一章・誕生編・完
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 結果、ソファまで魔力で運べました。便利だなぁ……魔力って。


 相手のサイズとか一切関係なく、魔力で身体を覆い持ち上げる。一瞬、おぉファンタジーなんて思っちゃったけど、ここではそれが当たり前だったね。


 何せその魔力というわけのわからないモノを操っていたのは紛れもない私なのだから。解らないのに使用可能な私の魔力。女王という身体のハイスペックさを感じずにはいられない。なんてチートな身体だ。


 あのキィラの対なのだから、当然といえば当然なんだろうけど。


 たった一人で天界を手玉にとり、勇者を殺し、人界を何度も追い詰めた。キィラがもの凄く強いのはわかった。何となくだけど感じ取る事が出来る。


 天界からも人界からも、キィラ以上の力は感じ取れない。例え力を抑えていたとしても、何故だかわかってしまうのだ。


 そんなキィラの対として生まれた私。300年女王を待っていたキィラの表情は楽しげに瞳を輝かせていた。自分と互角の力を持つ女王の出現に。


 少年みたいだなって思った。


 魔族にとって300年という年月はたいした事ではないという事は、あながちその表現が間違っているとは思えないけどね。


 しかし、こっちの資料はしっかりしてる。キィラの所みたいに赤字なんてない。どうやってるのかは知らないけど、コピー機やパソコンなんかがあって、地球です。と言われたら納得してしまえる程の慣れ親しんだ機械たち。


 ただ、地球の工場の事務所と、ここの執務室とは雲泥の差があるけど。


 魔力もあって、伝記も通ってて、その2つが両立している違和感。


 じきにこの環境にも慣れてしまう事を理解しながら、ファイルを取り出し、次から次へと資料に目を通す。


 どうして地球の電化製品を買っているのかと思ったら、案の定地球の様々な場所に会社を持っていた。


 これで私の好きな飲み物や食べ物を仕入れるのに問題は全くない。


 どうしよう。それだけでテンションが上がる。諦めていただけに、嬉しさは半端じゃない。


 いつもの飲み物。


 気分に応じて、甘いのから苦いのまで何でも有り。後でパンフレットを見せてもらおう。アスターニェが気を失っているから、聞くのは後回しになっちゃうけど。


 しかし何で気を失ったんだろう。


 意味がわからない。



「不思議な人だなぁ」



 心底とばかりに呟く。アスターニェの何を知っているかといえば、はっきり言って何も知らない。


 相手もそうだろう。だってこの世界で女王になってからは一日しか経っていない。そうだよ。昨日だったよ。それなのに、もう何週間も経ったかのような濃い一日だったような。働きすぎて疲れ果てた感覚。一日寝ても疲労はとれない程疲れてるような気がする。主に精神的に。


 あぁ働き過ぎた。


 ある程度のサービス残業は仕方ない。何といっても赤字工場だったから。皆同じ思いで時間という壁に立ち向かっていった。


 けれどここは違う。


 赤字工場なんかじゃない。


 時間を自覚した私は急激に疲れだした。気を張っていて全く気付かなかった。


 疲労。


 まさしくそれ。体と精神が疲れた状態で仕事をしていても、効率が悪くなるだけ。まさしく時間の無駄使い。


 こんな状態なら、早朝出勤をした方が効率はずっといい。私は何て恐ろしい事をしようとしていたのか。怖っ。時間を有効じゃなくその逆をしようとしていたなんて。


 今日のお仕事は午後からにしよう。


 魔力の補充もしておきたい。さっき起きたばかりだけど、完全に戻っていない。自覚する前はやるぞー!ってコーヒーまで飲んですっきりしていたのに。


 あぁ、自覚って恐ろしい。


 アスターニェにメッセージを残し、もう1つの長いソファに横になり、魔力で自分の部屋から転移させた毛布をかける。


 うん。仮眠には上等過ぎる場所だ。私が使っていたベッドよりもふかふかで寝やすいぞ。



 それじゃあおやすみなさい。


 小さく呟くと同時に、眠る私。


 その後起きたアスターニェが、私がソファで仮眠をとっている姿を見て唖然として立ち尽くしているなんて思いもよらず、仮眠のつもりが深い眠りへと落ちていく。


 あぁ。やっぱり疲れていたんだなぁ。精神的にだけど。





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