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魔界の二柱  作者: 国見炯
第一章・誕生編・完
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「女王は変わっているな」


 魔王に言われ、私が思った事はただ一つ。


「私から見たら、貴方も十分すぎる程変わってます」


 魔王の言葉に遠慮なく返した。暫く、お金をこんなふうに贅沢に、湯水のように使う人間を見た事なんてない。人間じゃないけど。

 でもこの数字の羅列は心臓に悪すぎる。けれど解ってもらう為にとりあえず帳簿を並べてみよう。


「何をやっているんだ?」


 並べている私に、何を並べているか解っていない魔王が覗き込んでくる。


「貴方の無駄遣いの帳簿です」


「…何故女王が持っている?」


 無駄遣いの自覚があるのかないのか。どちらか解らないけど、私が持っている事に疑問は抱いたらしい。


「生まれる女王の為に、記録だけはとってたみたいだよ」


 アスターニェが嫌がらせのように、魔王サイドに協力を要請して溜めた記録。今こうして役にたっているから、アスターニェの判断は間違っていなかったんだけどね。

 これを魔王に会う前に顔面蒼白になりながら見ていたら、尚更面白がって帳簿を持ってきたアスターニェの性格は心底悪いと思う。まだ短すぎる付き合いだけど、性格は悪い。それだけはきっぱりはっきりと言える。


「女王が生まれなかったから、暇つぶしでもしてたんじゃない?」


 私はそう思っているけど、後ろで女王様酷いです──何てアスターニェが言ってるけど、そんなモノは全て無視。無視無視。


「本当に暇だったのだな」


「そうだね。暇だったんだろうね」


 私と魔王の言葉に、アスターニェは完全に撃沈した。ちらりと周りと見てみたら、魔王の腹心だと思うキアースって魔族の人も何度も頷いている。

 …何だろう。魔王の配下の人の方が気が合いそうな気がする。頬杖をついてアスターニェをジィッと見てみる。もっと見て下さいとばかりに復活したので、あっさりとそこから視線をはずした。あー。変態も怖い。

 相変わらずアスターニェの事はほっておいて、魔王の視線を戻す。私の行動で解ったのか、あぁ…コイツか。という視線をアスターニェに向けている。ちょっと笑いそうになったけど、表には出さずに何とか内側だけで耐えた。アスターニェを見るのは止めてこう。私が吹き出す羽目になりそうだ。

 私のそんな思考に気付いたのか、私に向かってものすっごく視線を向けてきたけれど、それに応えるはずがない。

 無視だと決めたのだ。でなければ二次被害は自分にとっては黒歴史になるだろう。


「アレはほっておいて……取り合えず買う前に相談しません?」


 始めの勢いは何処に行ったのか。私の側近で力が抜けたような気もするけど、それも部屋の隅っこに置いて、和解する方に持っていこう。


「どうして女王に…」


「運動というか身体を動かしたいんですよね。その運動、私も少しなら。本当に少しなら付き合います! でも、私を通さずに買ったのなら、この先ただの一度も魔王の運動には付き合いませんから!!」


 思わず口走ったのは、そんな言葉だった。ちょっと緊張したのかテンパッタのか。どちらかよくわからないけど、よりによって口から出た言葉ってそれ?

 流石にこれはないでしょ。

 自分のお馬鹿加減を再確認する事になった言葉に、魔王は腕を組みながらソファにもたれかかり、悩んでいた……え? これって本気で悩む内容だった?

 脅しにも何にもならないと思っていたんだけど、これで本気で考える魔王の精神年齢って何歳??


「……」


「………」


 何を迷っているのでしょうか。目の前の魔王は。


「わかった。買う前にお前に相談する。これでいいか?」


「う、うんうん。そうして!」


 多少言葉を詰まらせたけど仕方ない。

 まさかあの脅しで承諾してくれるとは思わなかった。


「連絡手段も何とかなるよね…?」


 勿論、携帯なんてない世界だろうし。


「あぁ。ゲートを繋げれば簡単に行き来出来るし、連絡も簡単に出来る」


「そうなんだ。それじゃあ繋げよう。で、今更なんだけど、自己紹介しよっか」


 本当に今更なんだけどね。


「私はアリアーフィナール・レイメアル何とかってすごい長い名前なんだけど、アリアかフィナでいいよ」


 自分で名乗っていても、舌を噛みそうな長い名前。こんな長い名前を何処で活用すればいいかわからない。


「…名前で呼ぶのか?」


 戸惑い気味の魔王。


「え? 名前で呼ばないの? 女王とか魔王って役職でしょ」


「…そうか。俺の名前も長い。キィラでいい。女王の事はアリアと呼ぶ事にする」


 どうしてか、魔王──キィラが笑った。目の保養になる美形の笑顔。しかも満面の笑みだ。

 少し……じゃなく、かなり見惚れてしまったのは秘密にしておこう。







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