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魔界の二柱  作者: 国見炯
第一章・誕生編・完
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 私の質問に、魔王はあっさりと言ってのけた。

 あっさりし過ぎて聞き間違いをしちゃったかなぁ、何て思える程さらりと言ってのけたんだよね。



「別に、天界や人界を半分程滅ぼす頃には解消されてるだろう。そんなもの」



 魔王の答えに、胃の辺りがキリキリとするが、それはきっと気のせいではないだろう。何て物騒な事を平然に、さも当然とばかりに言い切るのか。

 あのですね。元々日本という場所に住んでいた私は、割合平和主義者なのよ。降りかかる火の粉を払うんじゃなくて、火の粉自体発生させないように生きてきたっていうかね。

 というか自分で作った赤字を解消する為に攻め込むな。

 流石のお姉さんも怒っちゃうよ?


「そんなもの。そんなもの、ねぇ。この赤字が」


「……何か問題でもあったか?」


 私の機嫌が急降下した事に気付いたのか、魔王が聞き返してきた。


「問題でもあったか?ねぇ……」


 あぁ、額がぴくぴくとする。

 年とって随分丸くなってきたと思ってたのに、やっぱ赤字は駄目。給料ボーナスに直結しすぎる赤字だけは駄目。

 ある種のトラウマだといっても差し支えがない程、赤字には抵抗力が働きすぎる。

 そういえば、そろそろボーナスの時期だからかなり頑張ったよね。皆で。食事代程度でいい。ささやかなものでいい。いいから、気持ちボーナスを貰うぞってはりきってたよね。

 ……貰い損ねたけど。


「必要じゃないものを買わない! それは基本です。

 欲しいものを吟味して吟味して吟味しまくって、一週間程それが本当に必要か審査して、部下に聞いて購入するか決めなさい!!」


「吟味が多いですねぇ」


 後ろでアスターニェが何か言ってるけど、無視を決め込む。


「……ひょっとして、女王はそれを言いにきたのか?」


 戸惑いながら魔王から発せられた言葉。

 …今更気付いたのか、少し呆れたが混ざった眼差しを私に向けてくる。


「それ以外に何を言いに来るのよ。この赤字! 本人さえも覚えていない衝動買い! なんて羨ましい……のはあるけど、自分の所の経済ぐらい安定させなさいよ。

 特産品や売れるものはあるんだから!!」


 新しい服を買ったのはいつだっけか。

 そんな事も覚えていられないほど、慎ましい生活を心がけてた。

 ちょっとやっかみが混ざったような気がしないでもないけど、元人間の私としては、赤字で戦争を仕掛けるなんてとんでもない。



「…歴代の女王では初めてだろうな。女王、お前は何者だ?」



 何を思ったのか、思いついたのか。

 魔王は至極真面目な表情でこちらを見てくる。

 そうやって好戦的じゃない真面目な表情はやっぱり美形。

 美形過ぎて嫌味だけど、鑑賞用としては悪くない。

 けれど、魔王の質問を前に、私の表情に疑問が浮かんだ。

 何者って……元人間でただの事務員なんだけど、それが通じるのかな。






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