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懐かしむ少年


日々成長していく心。


それには空もびっくりしていた。


言葉を教え込めば、楽に覚えるし、


一度、教えこんだものは、すぐに完璧にこなす。


しかし、やはり今は人間のようだ。


一般人のように、できないことを


覚えるのには時間がかかる。


しかし、徐々に心の精神は確実に成長している。


人間の気持ちもわかるようだし、


ましてや空よりも精神年齢は高いのかもしれない。


それは人の見方にもよるが…。



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



空「今日で…心がやってきてから半年か…」


空は日記を読み返していた。


【心のおかげで俺は何か変わった気がする。

 感情の大切さや思いやりの大切さ。

 心のおかげで改めて思い知った気がする。】


まさしくその通りだった。


空は何回もそのページを読み返す。


が、しかし、1つだけ、


何度読んでも心に引っかかる文があった。


【昨日、俺の部屋に送られてきた、

 元ロボットの人間で、】


この文を読むたび、疑問が思い浮かぶ。


数多(あまた)の疑問のうち、一番気になるのは


やはり、なぜ空のもとに心という存在が現れたのか。


心が現れてから半年も経ったものの、


その真実(こたえ)のヒントは一向に出てきそうにない。


必ず空でないといけない理由があるはずなのだが…。


本人もわからないというのならば、


自分が何とかしようと思った空だったが、


心の記憶(メモリー)はすべて消されてしまっている。


その記憶(メモリー)も消す必要があったのだろうか?


それとも、ロボットにはメモリーを


記録する能力もなかったのか?


真実(こたえ)を解きあかそうとすればするほど、


心の霧は増していくばかりだった。


このままでは拉致があかないと、空は考え事をやめた。



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



「この液体はなんだ。」


さしている傘から零れ落ちる雫に


指をさしながら、心は言う。


空「これは雨って言ってね、

  梅雨時にはよく、空から降ってくるんだ。」


すると、心は黙って頷いた。


―――いつもならば原理だのなんだの

   聞いてくるのに…。今日はいいのかな?


空はそう思い、言葉を付け足す。


空「あ、ちなみに、この雨が降ってくる原理は、

  空気の中に含まれている水蒸気が、

  空の上に運ばれて雲になっ―――」


心「いい。」


空「え?」


心「今は原理はいい。なんとなく…

  わかるような気がする…。」


空「あ…そう……か。」


今日の心はなんだか憂鬱だ。雨のせいだろうか。


すると、心は唐突に口を開く。


心「夢を見た。」


空「え?」


心「こんな風に、空と並んで傘をさして、

  道を歩いていた。しかし、少しだけ違った。

  僕と空は幼くて、手をつないで、

  まるで兄妹のようだった。

  なんだか…不思議な感覚に陥った。」


空「兄妹…か。」


―――俺もそんな夢…よく見るような気がする。

   憂鬱な時に。自分よりすこし背の小さい

   少女と並びながら、街を歩いている夢

   なぜか懐かしい気持ちになるんだ。

   だけど、歩いているだけで、少女が突然立ち止り、

   何かをしゃべろうとした瞬間に

   決まったように目が覚めるんだ。


そんなふうに空が考えていると、


心が


「いくぞ。」


と、また歩き始めた。


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