気遣う少女
こんなにも少女は成長していたとは、
空も予想外のことだった。
これもプログラミングなのだろうかと思ったが、
心を見ていると、違うようだった。
空「心⋯ごめん⋯」
空は独りで部屋で泣いていた。
改めて考えてみると、もし自分におこりゆる
出来事だと考えただけで、心が痛む。
それでも耐えれらる心を考えると、
自分とは比べ物にならない、異次元の人物だと
現実逃避してしまう自分が厭になる。
空「俺は⋯どうかしてしまったのか⋯」
それは、決して心には見せていけない裏の顔。
ガチャッ
いきなりドアが開いて、びっくりした。
空「わっ!!」
空はあわてて、顔を隠した。
心「どうした。何か顔を隠すことでもあるのか。」
感情はあっても、やはり、人間の衝動的な行動は
理解不能のようだ。
空「いやいやいやいやいや、
ってか、なんでいきなり来るの!?w」
心「気分。」
空「ちょっ、心に、気分とかあんの!?w」
心「まぁ⋯。」
空「で?? 小説はどういった感じ??」
心はリビングでずっと小説を読んでいた。
おかげで、本が5冊も読み終わってしまったという。
空が部屋にこもってから三日。
食事は作ってくれるものの、
心を相手にしてくれなかった。
心は気を遣っていたのか、
三日間、部屋には1度も来なかったのだが、
流石にさびしくなったのか、
自主的に部屋に来るとは珍しいものだ。
心「確信犯であります。」
空「え!? 何? 探偵モノ?!」
心「いや⋯グル。」
空「そんな恋愛小説読んでるの!?」
心「僕には感情があっても恋愛というものが
わからないからな。
小説は、恋愛小説に絞り込むことにした。」
空「じゃあ⋯心は⋯ロボット技術とかはわかるの??」
心「ある程度⋯。」
空「じゃあ⋯心はどうやって人間になったのか――とかは??」
心「以前の記憶はない。」
空「じゃあ⋯どうして作られたのか――とかは??」
ここで、心は考え込んでいた。
心「あまり引きずらないほうがよいぞ。
また自分で墓穴を掘ることになる。」
心はリビングに戻る。
心「あ、それと⋯別に僕は⋯
悲しみなどわかりやしない。
僕のことは気にしなくて結構だ。」
そういって、階段を下りて行った。
バタンッ
空「⋯なんだよ⋯わかってたのかよっ」
心のやさしさは計り知れないものだった。
本当は悲しみの末、階段のそばで座っていたはずなのに⋯。
自分を気遣う心に恩返しができない自分がいる。
恩返しをしようとしても、逆に恩返しをされてしまう。
だから、せめて自分の悲しむ顔や苦しむ姿を
心には見せまいと心に誓う空だった。