魘されし少年
「うっ⋯ぐ⋯うぅ!」
⋯
[悪魔の子なんかこの家にいらないんだよ!!]
[僕は悪魔の子なんかじゃない!!]
なぜか攻め立てられる。
[お前のせいで会社も首になる羽目だ!!
おかげで外出もできない!!]
僕のせいなの⋯?
[僕のせい⋯じゃ⋯うっ⋯うえーん!!!]
[やめてください!! お父さん!!]
すると、父親と思われる人物が
自分を庇う母に襲いかかった。
母ちゃんが⋯危ない!!
⋯
「母ちゃん⋯!!」
ガバッ
空は当たり前のようにベッドの上にいた。
自分の息が荒かった。
――なんだ⋯夢か⋯
隣には心。寝息を立てている。
――父上は⋯あんな人じゃない⋯
しかし、真実など空にはわからない。
もういない父親の顔や言動も、
今ではほとんど薄れている。
真実を知っているのは真理亜ただ1人だ。
しかし、いくら問い詰めても彼女は真実を
教えてくれようとはしなかった。
その時、
「空⋯。」
隣からかすかに声が漏れた。
空「なんだ、起きてたの」
心「人が動いた気配がしてな。」
空「そう⋯。ちょっと⋯悪夢を見ちゃって⋯
昔の夢だったけど⋯
現実を見させられた感じだった。」
心「過去などに戻る必要はない。
人間みな希望を持って生きなければ
生きがいなどないであろう。」
空「俺の過去は最悪さ!!
他人とは比べ物にもならない⋯。
希望なんてちっともないさ。」
心「残念だが僕は自らの過去をしらない。
それが例え最悪でも、僕は今を生きるのだ。」
そう言い残し、心は1階に下りて行った。
空「教えろよ⋯⋯。希望ってなんだよ!!
俺には⋯わかんないよ⋯⋯。」
それは、人間やロボット以前の問題なのだと
空は感じた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
3日目でありながらも、
なかなか心は笑顔を見せなかった。
――心は自分の過去をしらない⋯。
いずれ、その真実を知ってしまう
という恐怖は僕と変わりないはずなのに⋯
俺と心は同じ環境なのに⋯。
自分で自分を追い詰める。
それが空の幼いころからの癖だった。
するとふいに、
「心⋯、笑ってよ^^」
と言ってしまった。
なぜか急に心の笑顔が見たくなった。
そうすれば気持ちも晴れるかと思った。
心「⋯なぜに。」
空「いいじゃんっ♪ 見たいんだよ
心の笑顔が。」
心は不思議そうな顔をしていたが
精一杯に笑顔を作っていた。
それはやはりひきつるような形だったのだが
空には充分、笑顔に見えた。
すると、空は自然と笑顔になった。
空「あははっ♪ その調子っ」
そういって、空は心の頭をなでてあげた。
その瞬間の心の顔は、まさしく【笑顔】だった。