信じる少女
家に帰ると、すぐさま夕飯の支度をした。
空「ほらほら、心も手伝って!!」
心「何をするのだ。」
空「えっとぉ⋯。」
ハンバーグの作り方は、
ひき肉に、塩とタマネギ等の野菜類の
みじん切りと胡椒等の香辛料を加え、
パン粉を混ぜ、こね合わせ円形に形整え、
焼くだけという、一見簡単なものだ。
だが、これを少しアレンジするだけで
おいしさも変わるという料理なのだ。
空「まぁ⋯心は初めてだし、
まずは簡単に作っちゃおっか♪
えーっとね、じゃあまず⋯」
空は、心に、手取り足取りで教えてあげた。
空「じゃあ⋯まずは、野菜を切ろっか」
しかし、慣れないのか、なかなか手つきがおぼつかない。
心「あ。」
ゴトッ
包丁が落ちた音がした。
空は、まさかと思って心の手元を見たが、
手は紅の色に染まっていた。
それほど切り傷は深くないようだが、
初めて包丁を持つ者だったらば、
泣きわめいてもおかしくない。
空「ダイジョブ!?!?!?」
空はあわてて心の手をつつみ、包帯を巻いてあげた。
空「今日は⋯休んでたほうがいいよ」
心「⋯」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
結局、心は夕飯ができるまで
小説を読んで待っていた。
よほど小説が気に入ったのであろう。
空「心ちゃ~ん♥ ご飯ができました~っ♪」
随分と上機嫌で空がやってきた。
心「厚かましい。普通に話せ。」
空「あっそう?? いや⋯、
ノリっていうんだよ、こ・れ・は♥」
――僕に気を遣っているのか??
今の空はなんだか変だ。
そのまま心は苦笑いをしておいた。
空「なんだよぉーっ♥ 心ちゃんが作った
ハンバーグなんだよ?
おいしいに決まってるじゃんっ」
心は呆れた顔をした後、
心「ほとんどお前が作ったんじゃないか。
気を遣う必要はないぞ。」
空「気ぃなんか遣ってないよ?
むしろ、遣わないほうがおかしいよっ」
心「指を切ったくらいでなんだ。
以前は僕は戦ってばかりいたって
ツルタニが言っておった。
空「⋯? この時代に戦うなんてあるの⋯?
僕にはないと思うけどな。」
心「僕も其処までは知らぬ。
人間にされる前に
記憶はある程度消去したらしい。」
空「(消去する必要があるのか⋯?)
まぁいいや。ご飯食べようよ^^」
心「あ、おう。」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
心にとって2日目の夕飯。
特に食べ物の好き嫌いはないようだ。
あれこれ喋っている間に、午後8時を回り、
今日は1人ずつでお風呂に入って、
昨夜のように、寝る準備をした。
そして、電気を消した。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
30分しただろうか。
空はまだ眠れなかった。
空「心⋯。まだ起きてる?」
しばらくしても、返答がなかった。
――もう寝ちゃったか⋯。
薄暗闇の中、わずかに差し込む光が心の寝顔を映していた。
――人形の寝顔だな⋯
空は心の顔を覗き込むと、目がぱっちりとあいた。
心「そんなに起きてほしいのか。」
空「いや? 眠れないからさあ⋯」
心「僕も⋯。なぜか眠れない。」
空「それが、人間ってもんだよ^^」
すると、空が心に寄り添ってきた。
心「⋯!///」
空「心はさぁ⋯何のために人間になったの?」
心「⋯わからない。記憶もない。
だけど⋯」
空「だけど??」
心「信じたいことがある。」
空「信じたいこと??」
心「それは⋯人の役にたつために
生まれたということ。
それ以外に働けというのであれば、
僕は偽善者にはなりたくない。」
空は、よくわかっていないようだった。
だけど、心は悪い子なんかじゃない。
そう信じているからころ、一緒にいる。