友達
僕なんかといてもつまらないでしょう?
心のなかで何度もそう訊いた。
東京へ行ったとき、新幹線の車内でも、地下鉄で移動してるときも、僕はただ○○くんの隣で心配そうな顔をしているだけだった。
僕は電車の窓の外をぼうっと眺めていて、○○くんはスマホを見つめていた。
僕と一緒にいても、○○くんはスマホの向こうの友達とやり取りをしていた。
思えば不思議な関係だったと思う。
中学からの友達で、高校が違っても、○○くんは僕のことを遊びに誘ってくれた。普通は学校が違えば疎遠になるはずなのに。僕といると楽しいのか、それとも別の感情から来ているのか判別できなかった。
それでも誘ってくれることが嬉しかった。
○○くんと友達と言えるようになったとき、僕たちは中学生で、まだ正常と異常の境が曖昧で、きっとあの頃からおかしかった僕も、まだ人のなかにいることに暖かさを感じていた。
あの頃が懐かしい。
僕の時間はあの頃から止まっている。
僕がまだ普通で、いちおう友達と呼べる人たちもいて、普通に笑ったりもできていた。はずだ。
今の僕は親の顔もまともにみれない。
人と喋っても言葉が出てこない。
心が石みたいになって、頭が真っ白になって。
どんどん自分がおかしくなっているのを感じる。
小学生のとき、朝顔だかトマトかを植える授業があったのを思い出す。結局、僕の苗は育たなかった。いや、僕だけじゃなく、クラスの半分は上手くいかなくて、支柱から幹がはみ出したり、そもそも芽が出ないのも多かった。
人間も、そうなんじゃないかと最近思う。
僕は芽が出ない苗を抱えて部屋にいるよ。
成長が止まった苗は僕だけなんだろうか。
外の広い世界に出ていく人もいれば、部屋の中で過ごす人もいる。
○○くんは、僕を東京に連れて行ってくれた。
だからどうってことはないだろうけど、○○くんがスマホを見ている横で見た窓の景色が、不思議ときれいな思い出として残っているよ。




