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幼なじみの男の子に呼び出されたので告白されるのかと思ったら、ちんちんの話しかしやがらねえ!

作者: 藤孝剛志

「えっと、なに? あらたまって話って」


「いやあ、わるいなー。わざわざきてくれて」


「別にいいけどさ」


「誰かに話したくて仕方なくてさ。けど、誰にでもできる話でもないしどうしたもんかと思ってたんだけど、お前なら聞いてくれるかなって」


「どういう系? 恋愛相談とか?」


「そーゆーんじゃないんだけどさ。始まりは先週の月曜日の朝でな」


「その日休んでたよね。風邪ひいたんだっけ?」


「風邪は嘘だったんだけどな」


「仮病かよ! 心配して損したわ!」


「いや病気は病気だったんだよ。で、朝のトイレだ。いつものようにおしっこしてたんだけど、なんか変なんだよ」


「変って?」


「感触が違うんだ。で、ちんちんを見てみるとだな、腫れてたんだよ!」


「帰っていい?」


「帰んなよ!」


「帰るわ! なんでマクドでちんちんの話を聞かされなあかんねん!」


「こんな話を聞いてくれるのはお前だけなんだよ!」


「おかしな方向で買い被らないでくれるかな! そんな話は男の友達にしなよ!」


「恥ずかしいだろ!」


「聞いてるこっちが恥ずかしいわ!」


「頼むよー。誰かに話したくて仕方ないんだよー」


「……わかった。聞くよ。聞けばいいんでしょ? で、腫れてるって、その、朝なら朝立ちってやつなんじゃないの?」


「アホか。そんな見慣れたもんと間違えるかよ。これだから女は」


「わざわざ女にくだらない話してるのはあんたでしょうが! 帰るよ!」


「悪かったよ。だから、続けていい?」


「……どうぞ」


「腫れてるってのが、もう本当にびっくりするぐらいで。巨根になった! とか喜んでるような場合じゃなくてな? えーと、あれだドーナツでもちもちした、丸いのが輪っかになってるあれ?」


「ポン・デ・リング?」


「そう! ちんちんの先っぽにポン・デ・リングがついたみたいになってんだよ!」


「あー。そりゃ、ちょっと話したくなるかも……」


「見る? 写真撮ったんだけど?」


「見るかよ! スマホ出そうとすんな! 見せたら絶交だからな!」


「そう? すげーんだけど」


「とにかく異常なんでしょ? そんなんだと痛いとかは?」


「それが痛くはなかったんだよ。だからトイレに行くまで気がつかなかったんだけどな。まあ今でこそこうやって笑い話にできるけど、見た瞬間はパニックになってな」


「パニックな割には写真は撮ってるのな」


「慌てて病院に行こうと思って、学校には風邪で休むって連絡したんだ」


「まあ、ちんちん腫れてるから休みますとは言えんわな」


「で、スマホで泌尿器科を探してだな。近所の病院に駆け込んだわけだ」


「そーゆーのは泌尿器科でいいんだ。産婦人科の男版みたいなのはないの?」


「さあな。診てもらえたから、そこでよかったんだろ」


「それ、おばさんには言ったの?」


「言うっつーか、大騒ぎしてたらばれたな」


「それでどうなったの?」


「受付で保険証だしたら、問診票を書くわけだ」


「普通はね」


「どのような症状ですか? ってな。で、チェックしようとしたら、ちんちんがどうのって項目はないんだよ! 残尿感が、とか、尿漏れが! とかそんなんばかりでな!」


「まあ、泌尿器科だからね」


「仕方ないから、その他の欄に書くしかないんだけど、そこで悩んじまった」


「腫れてるって書けばいいじゃない」


「そうだけども! 高校生にもなって、ちんちんが腫れてるって、書くの頭悪そーじゃん!」


「さっきから散々連呼してるけどな」


「思いついたのはペニスだったんだけど、どう考えても日本語じゃないし正式名称じゃないだろ?」


「もう、わかればなんでもいいじゃん……」


「で、漢字の方がまだましだろうと思って、男根が腫れてるって書いてな」


「それは……もうちょっと、なんとかならなかったの……」


「じゃあ正式名称はなんなんだよ?」


「なんで私に聞くの……その、正式名称なら陰茎……なんじゃないの?」


「あー、そうか! それか! 頭いいな、お前!」


「それで、どうなったの?」


「問診票を提出したら、今度は検尿だ。けど、俺、ちんちん診てもらってる時に尿意を催しても困ると思ったからさ、おしっこは出し尽くしてから行ったんだよ! いやーあれは困った。なんとか絞り出したんだけどな! お前も泌尿器科に行くときは気を付けろよ!」


「デリカシーのかけらもないな!」


「そして、結構待たされて上でようやく診察だ。どうしましたか? って聞かれてさ。問診票はなんだったんだと思いつつも、ちんちんが腫れて驚いてますって答えたんだよ」


「結局言うのかよ。痛いとかじゃなくて、驚いてるだけなのかよ」


「でな、性病にかかるような心当たりはありますか? って聞かれるわけだよ。なので、全くありません、童貞ですから! って答えたらなんか笑われてな」


「そんなに堂々と言われても笑うしかないな」


「でまあ診てもらったわけだよ、ちんちんを。そしたら、一目で病状がわかったらしくてな、これは嵌頓包茎かんとんほうけいですね、と」


「……」


「なんか言えよう!」


「言えるか! 反応に困るわ! で、なに、そのなんとかなんとかって、どういうことなの」


「嵌頓包茎かんとんほうけいな。これぐらい覚えろよ」


「言いたくないんだよ!」


「まああれだ。皮がめくれた状態で勃起して、そのままになってると皮の根本が圧迫されて血液とかリンパの循環が滞るらしいのな。で、行き場がなくなって膨らむらしいんだよ」


「……反応待たれても困るから。特にリアクションないから」


「いやーびっくりだよ。今までそんなんなったことないからさ。で、治すのは簡単でさ。皮を元の状態に戻せばいいんだ。お医者さんが、こうぐにっと皮を引っ張って、先っぽが埋まるような感じにしてさ。これで様子を見てくださいって。で、次の日には治ってたよ」


「よかったね」


「なんだよー。反応薄いなー。俺は簡単に治ったけど、下手すりゃ手術が必要になることもあるんだぞ?」


「はいはい、おめでとう。治ってよかったね。つーか、セクハラだよね、これ? 訴えたら勝てるんじゃない?」


「病気の話をしてるだけだろー。イヤラシイ要素全くないし」


「話ってこれだけ? このために私を呼んだの!?」


「うん」


「……帰るね!」


「なんで怒ってるんだよ!」


「なんで怒らないと思ってんだよ!」


「なんか知らんが悪かったな! あ、これだけは重要なことだから覚えといて」


「なに?」


「勃起した後は、ちゃんと皮を戻す! これ、重要!」


「知らんわ、あほ!」

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