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王都で暴かれる隠れた実力

 王都へ向かう街道を俺は1人で歩いていた。

 この先の人生はどうなるのだろうか。

 期待と不安が入り混じる。



 しかし、俺の足取りは力強かったと思う。



 もう、誰にも頭を下げたりはしない。

 俺の人生は、俺自身の手で切り開いていく。

 そう、決意したからだろう。





「おお……」


 やがて、遠くに王都の城壁が見えてきた。


「よし……」


 俺は小さく呟き、深く息を吸い込んだ。

 ここからが俺の第2の人生の始まりだ。



 ________________________________________



 王都は俺が住んでいた街とは比べ物にならないほど賑やかだった。

 行き交う人々、立ち並ぶ店々。

 その活気に圧倒されながら、俺は冒険者ギルドを探した。



 ギルドはひときわ大きく立派な建物だった。

 中に入ると若い冒険者たちが酒を飲んだり、談笑したりしている。


 その中の1人が俺に気づいた。


「おい、おっさん。ここは冒険者の集まるところだぜ? あんたみたいな年寄りが来るところじゃねえ」

「そーだぞ。隠居するならここはおすすめしないぜ」

「冴えないおっさんはここのギルドには不相応だ。失せろや」


 そう言って、数人のチンピラ風の男たちが俺を取り囲んだ。

 俺はため息をついた。面倒なことに巻き込まれたくない。


「悪いが俺も冒険者になりに来たんだ」

「なんだと? このヒョロヒョロのおっさんが冒険者? 笑わせんなよ!」

「世も末だな」

「ネタで言ってんじゃねぇのかよ、ああ?」

「ま、とりあえず世の中の……社会の厳しさってもんを教えてやんよ!」


 チンピラの1人が俺の胸ぐらを掴もうと手を伸ばしてきた。

 俺はその手を軽く払いのける。


「ぬ、はああああ⁉」


 男は弾かれたようにあとずさり、驚きの表情で俺を見た。

 俺は一切力を込めていない。

 ただ、彼が思っているよりも、俺の身体は頑丈なだけだ。


「もうやめておけ。お前たちじゃ、俺には勝てない」


 俺は淡々とそう言った。

 その言葉にチンピラたちは一瞬怯んだものの、再び襲いかかってきた。


「いい年して調子に乗りやがって」

「絶対にぶっ倒してやる!」

「お前ら取り囲め!」


 だが、俺は彼らの動きをすべて見切っていた。


「やれやれ。おっさん1人に若者が複数って恥ずかしくないのかよ」


 彼らの攻撃はまるでスローモーションのように見えた。


 俺は最小限の動きで、彼らの攻撃をかわし、全員を床に転がした。


「な、なんだ、あのおっさん……」

「冴えないおっさん、強すぎだろ」

「すげー」


 周囲の冒険者たちがざわつき始める。


(外野が騒がしいな……)


 俺はそんな声には目もくれず、受付へと向かった。


 受付には年の若い受付嬢が座っていた。


「驚きました。お強いんですね」


 目をまん丸にして驚いている受付嬢は感想をそのまま口にした。


「ええ、まぁ……そうですね。あの、ここで冒険者登録をすることができるって聞いたんですけど」


 別に女の子相手に自分の強さをアピールしたいとか、そんな気持ちはない。

 若いときは見せびらかしていたかもしれないが、おっさんになってからはな……。

 そう思った俺はさっさと本題に入る。


「はい、そうですね。こちらで登録が可能となっています――――ベテランさんですね」


 受付嬢はそう言って、俺の年齢を聞き、驚きの表情を浮かべた。

 52歳という年齢で新規に冒険者登録をする者はほとんどいないのだろう。


「登録には模擬戦を受けていただく必要があります。対戦相手は『ギルドマスター』です」


(いきなりギルドマスターかよ)


 受付嬢の言葉に俺は少し驚いた。

 ギルドマスターが直々に模擬戦の相手をするのか。


(ここのギルドマスター、変わってるな)


 少なくともリチャードのあいつならこんなことはせずに全部部下に投げているだろうな。



 ――――そのとき、受付の奥から1人の女性が現れた。



「わたしが王都ギルドマスターのミアよ。冒険者登録、ご苦労さま」


 そこに立っていたのは、俺の娘でもおかしくない年齢の若くて美しい女性だった。


「おお…ミアさまだ」

「今日も美しい」

「しなやかな肢体にあの豊かな果実……」

「結婚してぇ」


(こいつらずっと喋ってんな……)


 彼女の年齢はせいぜい18歳といったところか。

 大きな胸を揺らしながら、彼女は俺に笑顔を向けた。


「模擬戦の相手はあなたね。よろしくね、おじさん」


(おじさん……まぁ、事実だな)


 ミアはそう言って、俺を闘技場へと案内した。

 観客席にはギルドにいた冒険者たちが集まっている。


 彼らは俺が若いギルドマスターと戦うのを面白がっているようだった。


「では、始めます!」


 ミアの合図で模擬戦が始まった。

 ミアはまるで軽やかに舞う蝶のように剣を構えた。

 彼女の剣筋は美しく、そして鋭い。




 ――――だが、俺にはすべて見えていた。




 彼女の剣が俺の喉元を狙う。

 だが、俺はそれを一歩も動かずに避ける。

 ミアは驚きの表情を浮かべた。


「へぇ、やるじゃない。でも、これじゃどうかな?」


 ミアはさらに速度を上げ、俺に迫る。

 だが、俺はさらに軽く、その攻撃をかわす。



 ――――ミアの額に汗がにじみ始めた。



 俺はあえて攻撃はしなかった。

 ただ、彼女の攻撃をかわし続ける。



 ――――そうすることで、彼女に俺の強さを知らしめるのだ。



「なぜ、攻撃してこないの⁉」


 ミアは叫んだ。


 俺はゆっくりと口を開く。


「いや、別に手加減しているわけではない。お前では俺に攻撃を当てることすらできないからだ」

「――――なっ」


 俺の言葉にミアは憤慨し、全力で俺に斬りかかってきた。


「舐めるな!」


 その攻撃はA級冒険者としての実力を十分に感じさせるものだった。


 だが、それでも俺にはまるで子どもの遊びのように見えた。


(実際、子どもだしな)


 俺はミアが剣を振り下ろした瞬間、彼女の懐に潜り込み、その肩に手を置いた。


「――――終わりだ」


 俺は静かにそう言った。

 ミアは動きを止めた。

 俺の手に彼女の身体が硬直しているのがわかった。


「くっ……! わたしが、負けた……?」


 ミアは信じられないといった様子で俺を見つめた。


「ま、ま……参りました。まさか、一撃も当てられないなんて……。おじさん、侮っていたわ。本当にごめんなさい!」


 ミアは深々と頭を下げた。

 観客席からはどよめきが起こる。


「――――あのおっさん、ギルドマスターに勝っちまったぞ……」

「ありえねえ……」

「化け物だろ」


 俺は冒険者登録を済ませ、晴れて王都の冒険者になった。

 ランクは、F級から。

 下から這い上がっていく形だ。


「おじさん、よかったら……お酒でもどう?」


 ミアが俺に声をかけてきた。

 彼女はさっきまでの悔しそうな顔とは打って変わって、少し上気した顔で俺を見つめている。


「悪いな。今日は疲れたから、また今度」

「えー、付き合い悪いなー」


 俺はそう言って、ギルドをあとにした。

 ミアは俺の背中をずっと見つめていた、っぽい。


 俺はこのギルドで、この街で、冒険者として新しい人生の一歩を踏み出した。

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