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ティア

いつも読んで頂き、ありがとうございます!


「ティア〜私の大好きな彼女〜」


若い男女に人気のある映画を調べた時、おすすめにあがったのが、このドキュメンタリー映画だった。

ノンフィクションの映画が、2週連続で映画ランキング1位をとったのは、珍しい気がする。

話題性抜群らしいし、フワリちゃんと見るなら、この映画かなとチケットをとった。

主人公ティアは、最近テレビの出演が増えた、有名な雑誌の読者モデル。

現役大学生の狐獣人の女の子だ。

スラリと伸びた身長に、ハンサムショート。

すっきりとしたツリ目をした彼女は可愛いというよりは、かっこいいし、美しい。

そんな彼女に、熱愛報道がでたのが、事の発端だ。

どこかの店の裏だろうか。

相手は、完全にモザイクで消されているが、これはキスの写真だろう。

最近人気があってファンが増えていたこともあり、snsが一気に炎上した。

彼女の公式snsは悪口でいっぱいになった。

応援していたのに、裏切られた。

もう嫌いになりました。

ファンを辞めます。

ずらりと並んだ誹謗中傷に、ティアは家から出られない生活が続いた。

仕事も激減した。

読者モデルに彼氏がいても、オレは普通のことだと思うのだが、ファンの思いは違うのだろう。

ただ、その流れが完全に変わる出来事があった。

snsの1つの投稿だ。

アイドル候補生で女子高校生の兎獣人のユリナが、私のティアをいじめないでくださいと涙ぐみながら、動画サイトに投稿したのだ。

ユリナは活動を始めたばかりで、知名度はなかったが、とても可愛かった。

小さな身長と高校生でありながら、もっと幼く見える彼女の涙ながらの訴えは、snsの誹謗中傷を止めた。

彼女は動画の中で、騒動ででいた以外の何枚かのティアとのキス写真を見せて、私の彼女を泣かせないでくださいとファンにお願いしたのだ。

高校の時の先輩で、いじめられていた私を助けてくれた、とってもかっこいい人なんです。

もう2年もつきあっている大事な人なんですと。

動画は10分程だった。

有名なインフルエンサーのソウが、紹介したことで、再生回数は爆発的に増えた。

ティアへのアンチコメントは減り、擁護するコメントが増えてきた。

風向きが決定的に変わったのは、紹介したソウの投稿だろう。

どこかの野郎とのキス写真じゃなくて、こんなにかわいいユリナちゃんと美しいティア様のキス写真だよ?

むしろ、お金払って見るべきものじゃない?

ソウの投稿は、2億いいねを集めた。

ティアは芸能界にまた姿を見せた。

仕事はうなぎのぼりに増え、今ではテレビで見ない日はない活躍となっている。

また、アイドル候補生だったユリナは、アイドルとしてデビューした。

2人組アイドルグループLiuで、もう1人のメンバーは、心が女性で、好きな相手は男性であると告白したチンチラの獣人でインフルエンサーのソウだ。

元々かわいい系のイケメンだったソウは、メイクとウィッグと服装で、儚げ美人へと変わっていた。

2人はそれぞれの骨格や雰囲気に合わせた、お揃いではないが色味が統一された衣装を着て、嬉しそうに笑いながら歌っている。

新しい曲が発売される度に、2人の衣装やメイク、mvの表現やダンスが話題になった。

この映画のエンディングを歌っているのも、Liuの2人で歌唱力の高さが際立っていた。

何かのお昼の番組で、3人で街ブラロケをして、人気のパフェをリポートし、ティアとユリナがお互いにパフェを食べさせ合い、それをソウがにこにこ見つめる場面は視聴率がとても高く、それを切り抜いたsnsの投稿もバズった。

ティアとユリナの仲は、すっかりファンの公認となり、いちゃいちゃしたデート写真をsnsにあげて、それをソウがコメントするのが一連の流れとなった。

俺が通っているピーニャの写真も出てきて驚いた。

3人とも、ピーニャのスタッフらしい。

フワリちゃんも、映画のワンシーンに映り込んでいた。

まさか話題の映画にピーニャや彼女も関係していたなんて。


「うっ。うっ。」


映画の途中、ティアが誹謗中傷される辺りから、フワリちゃんが泣き出したのはわかっていた。

ハンカチを取り出し、目元にあてている。

オレのハンカチは濡らしちゃったから、出来ることは彼女の手をそっと握るだけだ。

エンディングが流れ、最後に監督の名前がでて、オレ達以外の客が部屋を出ても、フワリちゃんは泣き止まなかった。


「……ティアちゃんも、ユリナちゃんも、ソウちゃんも、みんなピーニャのスタッフなんです。今はティアちゃんは忙しすぎて出勤してないですけれど、ユリナちゃんとソウちゃんは、今でも月に1回位は出勤しています。」


「有名モデルとアイドルとインフルエンサー。ピーニャは凄いね。」


「この騒動があったから、ピーニャは予約の必要な人気店になったんです。それまでは、あまりお客様も入らなかったのに、3人を見ようとするお客様が多くて……。」


「そっか。オレ、何も知らなくて。ごめんね、映画もっと調べてからくれば良かった。」


「シロウさんは、開店当初からの常連さんですけれど、来店の時間帯が3人と出勤時間と被ってませんでしたから⋯⋯。私、こんなに泣いちゃってごめんなさい。でも、シロウさんとこの映画見られて良かったです。」


フワリちゃんの目から、溢れる涙を指ですくう。

かわいいこの子をオレが守ってあげたいな。


「ねぇ、フワリちゃん。オレと付き合わない?」


「え?はい。はい!」


フワリちゃんの涙の量が増えた。

あごに手を当てると指の腹で優しく涙を拭う。

こんなに目を赤くしちゃって、友達の為に泣けるなんて優しい子だな。

もう指じゃ追いつかない。

涙でいっぱいの目元を口づけると、頬まで真っ赤に染まった。

林檎みたいだ、美味しそう。


「あの、心の準備ができていな⋯⋯」


「好きだよ」


真っ赤な唇に口づけた。

急展開。バレンタインだから、甘くしたいなって、涙でしょっぱくなっちゃいましたが。

これからもよろしくお願いします。

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