あったかいココアを2つ、レギュラーサイズでお願いします。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
噴水の有名なレンガ作りの広場。
10時に噴水の前で待ち合わせ。
limeのやりとりで、シロウさんと映画を見に行くことになった。
今は、9時30分。
ちょっと早かったかな。
噴水近くのショーウインドウの前で、身だしなみの最終確認をする。
グレーのニットのミニワンピに黒いニーハイブーツ。
白いケープコートはもこもこで、モナに絶対これです!と勧められて買ったものだ。
シロウさんに、子どもっぽいと思われないだろうか。
ショーウインドウを鏡代わりに、風で乱れた髪をささっと直す。
髪の毛もはねたりしてないし、大丈夫そうだ。
よし、行こうかな。
「お姉さん、かわいいっすね。自分達とお茶でもどうですか?」
金髪。
ジャラジャラとつけられたアクセサリー。
タバコ臭い。
ヤンキーみたいな見た目の2人の男性が、私の前に立ちふさがった。
ニキビの出来た顔は若く、自分と同じ位だろう。
私の一番苦手なタイプだ。
「待ち合わせをしている人が、いるので……」
2人の脇をすり抜けようとする。
バシッ。
左手を掴まれた。
結構痛い。
「友達と待ち合わせですか?俺ら2人だし、ちょうど良いですね。」
何もよくない。
待ち合わせが友達となんて一言も言ってないし、そもそも友達だったとしても、貴方達と遊ばないし。
「痛いです。離してください!」
「かっわいい声。超タイプなんだけど」
会話ができないらしい。
本当に腕が痛いから、今すぐやめてほしい。
腕を振り払おうにも、力が強く、びくともしない。
どうしよう。
「痛かってるでしょ。離して。」
メキッ。
「いってぇ!」
掴んでいた腕の力が弱まったので、急いで男から離れた。
男の腕を、シロウさんが掴んでいた。
「大げさだな。全然力いれてないよ。まだ、骨にヒビもいれてない。」
シロウさんの顔が怖い。
カフェで甘い物を食べて、にこにこしている顔と全然違う。
「す、すみませんでした……」
「謝る相手、オレじゃないよね?」
「す、すみませんでした!」
男は泣いていた。
「も、もういいです。」
私がそうに言うと、シロウさんは男の腕を離した。
「次はないから」
「「はい。すみませんでした!」」
男たちは、広場を去っていった。
「フワリちゃん、大丈夫?」
「シロウさん、ありがとうございます。助かりました」
「怖かったよね。ごめん。オレのミスだ。フワリちゃんは、こんなにかわいいから、ナンパされることなんて予想できたのに。今度待ち合わせをする時は、ああいう輩がいない、ファンシーショップとかにしよう。」
真顔でそんな事を言われるから、思わず笑ってしまった。
「シロウさんが、私の事をファンシーショップで1人で待っててくれると思ったら面白くて」
ファンシーショップで、私を待つシロウさんは浮くだろうな。
「トラウマとかになってたら、どうしようって思ってたんだけど、笑えるなら良かった。」
シロウさんも笑ってくれた。
が、突然真顔になる。
「フワリちゃんの腕、あざになっちゃってる」
私は腕を見ると、男の握った形にあざがうっすらついていた。
言われるまで気づかなかった。
「やっぱり、ひびくらい入れとけば良かった……。フワリちゃん、ちょっとそこのベンチに座ろう」
シロウさんに優しく手を握られると近くのベンチに促される。
「ハンカチ濡らしてくるから、ちょっと待っててね。これ、虫よけで羽織ってて」
シロウさんは、着ていた上着を脱ぐとふわっと私の肩に羽織らせる。
この香りやっぱり好きだな。
シロウさんはすぐ戻ってきた。
きつくしぼったハンカチを私の腕に巻いてくれる。
冷たくて気持ちいい。
「ハンカチ、ありがとうございます。」
「痛い?」
「痛くないです。」
「このまま少し冷やしてよう。フワリちゃん、温かい飲み物何が好き?せっかくだから、そこのカフェで2人で何か飲もう。」
シロウさんの指さした先には、有名なチェーン店のカフェがあった。
「たまには、チェーン店もいいよね。」
カフェに入り、カウンターで注文をする。
2人でココアを頼んだ。
シロウさんは、上に生クリームをのせられないことがわかって、少し悲しそうだ。
商品を受け取り、テーブル席に座る。
ピーニャのココアと比べると少し物足りない感じはあるけれど、甘くて美味しい。
「ココアを飲んで、腕がダメそうだったら一緒に病院に行こう。」
「そんな、病院なんて大丈夫です。もう、痛くないですし。それよりも、私シロウさんと映画を見るの楽しみにしていたんです。」
「無理してない?映画は、別の日でも良いんだよ。」
「大丈夫です。」
「そっか。じゃあ、これ飲んだら、映画に行こう。」
この後、カフェをでて、映画館に行くまでの間、おそるおそるシロウさんの手を握ってみたら、優しく握り返してくれた。
好き。
シロウさんは、狼の獣人なので、怪力です。タイガさんも怪力。悟さんも鍋振るので、ムキムキです。