牛虎と羊狼
いつも読んで頂きありがとうございます!
「店長のスケベ……」
「モナ、顔真っ赤だけど、どうしたの?」
フワリちゃんがわたしの様子に気づいて、こっちに来てくれました。
「フワリちゃん、聞いてください。店長がスケベなんです。転んじゃった時の話を、タイガさんに聞いていて、店長がわたしのパンツが何色だったか、確認していたんです……。」
フワリちゃんの顔から、表情がすんと消えた。
「この間の閉店後の話だよね?それはアウト。セクハラだ。店長に後できつく言っておく。」
流石、フワリちゃん。見た目はこんなに小さくてかわいいのに、しっかりしてます。頼れる年上のお姉さんです。
「ありがとうございます。もう、あんなことがあって、タイガさんと顔を合わせづらかったのに、ますます顔を見られなくなっちゃいました……」
フワリちゃんは、じとっとした目でこちらを見てきます。
「モナのタイプは、よくわからない。あの料理バカで、無口な虎男のどこがいいの?」
「あわわ。フワリちゃん、声が大きいです。厨房に聞かれちゃいます。さあ、お仕事しましょう!」
まだ何かを言いたそうな目をしたフワリちゃんの背中を軽く押しつつ、接客に戻ります。タイガさんに今の会話が、聞かれてませんように。
それにしても、タイガさんの前で転んで、パンツ丸出しなんて、本当にわたしはバカです。せめて、かわいいパンツとか色気のあるパンツだったら、まだ救いがありましたのに、ダサい牛柄パンツ……。タイガさんに幻滅されてないでしょうか。子供っぽすぎて、恋愛対象じゃなくなるとか……。もう転ぶ気なんてないけれど、もしも、もしもの為に、今度かわいい下着を買いに行きましょう。
カランカラン。
ドアベルが鳴ったので、新しいお客様です。
おや?
あの犬の獣人のお客様は、フワリちゃんがお気に入りの方では?
フワリちゃんのしっぽが、ものすごい勢いで動いてますし、間違いなさそうですね。
前回の来店時に、フワリちゃんが連絡先を渡したと聞いていましたが、どうなったんでしょうか。
とても気になるので、こっそり様子をうかがってみます。
「お客様、久しぶりのご来店ですね。お待ちしておりました。」
「前回店に来た時、白井さんは出勤してなかったから、会うの久しぶりになっちゃったね。」
「私のことは、フワリで大丈夫ですよ。」
「そう?じゃあ、フワリちゃんって呼ぶね。」
「はい。私も店の外では、シロウさんとお呼びしますから。」
「その呼び方は、何だか新鮮だな。よし、今日はガトーショコラにしよう。ホットのミルクティーもつけてもらえるかな?」
「ガトーショコラとホットのミルクティーですね。かしこまりました。」
「うん。お仕事頑張ってね。」
あのお客様、シロウさんは、手のひらをひらひら振りながら、フワリちゃんを見送った。凄い。フワリちゃん、かなり積極的だ!私の話しかけられないヘタレさとは全然違う。もう名前呼びしてる。
「モナ、固まってどうしたの?あっちのお客様が呼んでるみたいだよ?」
何卓か先で、静かに手を挙げているお客様がいらっしゃった。
「す、すみません。すぐにお伺いいたじます!」
いけない。仕事に集中しなきゃ。とりあえず、勤務が終わったらフワリちゃんとたくさんおしゃべりしよう!
ゆったりのんびりマイペースに更新していきます。これからもよろしくお願いします。