ビーフシチューと牛柄模様
おはようございます!
こんにちは!
こんばんわ!
今日もよろしくお願いいたします。
俺の前でグツグツと、目の前の鍋が煮える。
3日かけて煮込まれたビーフシチューは、店長のとっておきだ。
しこみも味も店長がやって、焦がさないように、あたためるのだけ任せてもらえている。
入ったばかりの頃は、それすらやらせてもらえなくて、随分悩んだ。
他のスタッフのように、学業と兼任だったり、兼業だったりするわけじゃない。
店長の弟子になりたくて、ここに入ってきた。
料理の専門学校で基礎は学んだ。
美味しい料理を作りたい気持ちもある。
ただ、実務経験がない。
学生の頃も、料理のバイトはしていたけれど、冷凍の料理を温めて、提供する店だった。
人がすぐいなくなる職場で、辞めるタイミング逃して、卒業した後もずるずる居続けた。
凄いシェフがカフェを作るって聞いて、自分もこの人のところで働きたいとやっとそこを辞めた。
ここに入って、しごいてもらって、みっちり働こうと思ってたのに。
「ホールとキッチン、両方入れるように顔採用だよ。君、細マッチョだし、シュッとした顔のイケメンだよね。虎獣人なのも、最高にかっこよくていいよ!」
入って初日。
会って挨拶した後、店長から言われた言葉に思わずがっくりきた。
そんな店長に認められるために、言われた雑用は何でもやって、任された軽食のしこみは手早く丁寧に。
できる限りやってきた。
ビーフシチューの温めも、任せて貰えるようになったのに。
それなのに、大事な料理をしている最中に、頭の中の雑念が消えない。
「はぁ……」
思わず大きなため息をつく。
「タイガくん、どうしたの?ため息つくなんて、珍しいじゃない」
店長は、パスタを綺麗に盛り付け、仕上げると俺の肩に腕を回した。
「注文も今のでさばいたし、ちょっとだけなら相談のれるよ。なんだろう、何の悩みかなー?料理の悩みなら、タイガくんは、ちゃーんと僕に聞いてくれそうだし。誰にも言えず、大きなため息つくしなんて、これは、恋かな?恋の悩みかなー?」
によによした店長の顔が、なんだか腹立つ。
でも、内容は近い。
女の話なのは、間違いない。
店長は、美人な豹獣人の奥さんもいるし、イケメンだから、若い頃はさぞモテただろう。
によによした顔は腹立つけれど、ずっと悩んでるわけにはいかないし、悩みが解決するなら、話すか……
「ホールのスタインさん、いるじゃないですか……。」
「牛の獣人のモナちゃんね。グラマラスな体型で、大人びた顔立ちなのに、人見知りで、おしとやかさんな所が可愛いよね。面倒見が良いフワリちゃんとよく一緒にいるね。見た目は長身のモナちゃんが、小柄なフワリちゃんをかまっているように見えて、実はフワリちゃんのが、精神的にお姉さんで、モナちゃんの面倒見てるんだよー」
「店長、なんでそんなに詳しいんですか……」
「休憩室で、店長は見た!ってね。」
「それで、スタインさんて、ちょっとドジな所があるじゃないですか……」
「確かに、モナちゃんは、おっちょこちょいな所あるよね。大事な所は間違えないのに、同じお客さんに水を2回もっていったりとか、注文の時に噛んじゃったりとか。ちょっと涙目なモナちゃんは、たまにフワリちゃんによしよしされてるよ」
「この間の閉店後。ホールに、俺とスタインさんが二人でいた時、スタインさんが何もないところで転んで……。盛大にスカートがめくれ上がったんです。スタインさんは慌てて、スカート直して立ち上がってどこかに走っていったけれど、その時の真っ赤になった顔とパンツが頭から消えてくれなくて……」
パチ。ガシッッ。
素早く火を消した店長に、左肩を強く掴まれた。
「それで、タイガくん。モナちゃんのパンツは、何色だったんだい?」
店長は、真剣な顔だった。
「な、何を聞いているんですかー!?」
そこには、丁度オーダーを届けに来たスタインさんがいた。
顔が、真っ赤だ。
「店長、セクハラで訴えますよ。タイガさんも絶対ぜっーたい、店長に言ったらだめですからね!!」
スタインさんは、素早くオーダーを置くと、顔を隠しながら足早に去っていった。
「太ももに巻きつけたしっぽ。余程恥ずかしかったんだろうね。いや、セクハラで訴えられるのは嫌だから、もう聞かないことにするよー。……おや、タイガくん、顔が赤いね。」
「ほっといてください。」
当分、赤い顔と牛柄の模様は、俺の頭から消えてくれそうにない。
あれ?恋愛を書くつもりが、どうしてラッキースケベの話に?ここから始まる恋愛、それはそれであり?あれ?(作者の頭はこんらんしている)
次回更新は、2/8の0時です。
その後の更新はまったりゆっくり行います。
よろしくお願いいたします。