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第3話 『店の責任』

ショッピングモールの一角で、小さな悲鳴が上がった。振り返ると、子ども用おもちゃが並ぶ棚が倒れ、その前で幼い男の子が立ち尽くしている。足元には散乱した商品と、倒れた棚の破片。すぐに駆け寄った母親が、震える声で叫んだ。


「大丈夫!?怪我はない?」


男の子は首を振り、かすかに涙を浮かべているだけだった。それを確認した母親はほっとした表情を浮かべたが、次の瞬間、険しい顔つきで店員に詰め寄った。


「この棚、どうなってるんですか!子どもが触ったくらいで倒れるなんて、管理が杜撰すぎます!」


店員は明らかに戸惑いながらも、平身低頭で謝罪を始めた。しかし、そのとき近くにいた別の客が静かに口を開いた。


「でも、それって本当に店だけの責任なんですか?」


母親は振り返る。

「どういう意味ですか?」


「棚に『危険、触らないで』って注意書きがありましたよね。それに、子どもが棚を揺らしているのを見かけました。店側も問題があったかもしれませんが、あなたがもう少し注意していれば防げたのでは?」


母親の顔が紅潮する。だが、言葉は出てこない。


店長が現れ、母親に丁寧に話しかける。

「今回の件、棚の構造にも一部問題があったかもしれません。ですが、こうしたトラブルを防ぐにはお互いが注意を払うことが大切だと思います。」


母親はしばらく沈黙した後、震える声で子どもに目を向けた。

「ごめんね、ちゃんと見ていればこんなことには…」


店側と母親、双方が歩み寄ることで、ようやくその場は静かに収まった。棚が倒れた音よりも心に響いたのは、互いに責任を認めるその静かな対話だった。


(完)

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