閑話 とある狂戦士の1日
ちょっぴり百合
ザンッ――
平原に巨大な獅子の首が切り落とされ、地面に転がった。
「きゃはははっ!!!」
茶色の髪を返り血にまみれた少女は、剣の先を濡らす血を振り払うと、そのままその場を去っていった。
ここはシリスの街の兵たちの訓練場として開放されているダンジョンの第三層。
「あー、楽しかったぁ!!」
特記戦力相当のフロアボス、アーマード・マンティコアは、シリスの街最強戦力であるアチェリーにとってはいい遊び相手だ。
「次はどうやって殺してあげよっかぁ?」
フロアボスは一定時間経つと復活する。
――残虐、残酷、そして冷徹。
戦いを、殺戮を、強さを、アチェリーは貪欲に求める。
ラズリーとヴェルディを除けば、シリスの街において彼女の右に出る者はいない。
高出力の魔法も無しに、純粋な身体強化と雷魔法の応用による神経伝達速度の向上……。一見地味な芸当のみで『最強』となった怪物。
そんな彼女の普段の様子はというと――
「うにゃあぁぁぁぁぁっ!!! 恥ずかしいいぃっ…………!!!!!!」
……ダンジョンでの自身の言動を思い出しては、布団の上でうつ伏せになり真っ赤な顔をまくらに埋めて悶絶していた。
「にゃー」
そんなアチェリーの気持ちなどお構い無しに、ペットの猫は彼女の背中をふみふみする。
「何が〝次はどうやって殺してあげようかぁ?〟だよ!! 痛過ぎるってば!!!」
「にゃー」
……ダンジョンから帰ってくる度に、アチェリーはこうして自身の羞恥心に白旗をあげて一人脳内大反省会を開催するのだ。
アチェリーは殺し合いになると、普段の様子からは想像もつかないほどの残虐な性格へ豹変するのである。
「あれー? アチェリーちゃん帰ってたの?」
「あう、うぅ……メリーちゃん……」
白髪の女の子――アチェリーと同じく『上位精霊契約者』のメリーが、アチェリーの部屋へ遠慮もなしに入ってきた。
「にゃー」
というかここはメリーの部屋でもある。
二人は同居しているのだ。
*
「かかっておいで」
「い、いくよっ……!」
メリーがくいっと手まねきをする。
対するアチェリーは、木剣を握りしめてメリーへと間合いを詰め――
「だ、大丈夫メリー!?」
「いやー、アチェリーちゃんやっぱ強いわー」
地面に大の字に横たわるメリーへ、アチェリーはおろおろしながら駆け寄った。
精霊契約者同士の一対一の模擬戦。
攻撃魔法を使用せず、純粋な近接戦闘のみという条件下ではあるが……アチェリーはやはり最強であった。
他3人の契約者たちはアチェリーを前に20秒も戦えるか怪しい。
そんな中で、アチェリー相手にまともに戦うことができるのがメリーなのである。
メリーのアチェリーに対する勝率は3割ほど。
ただ今回は負けてしまったようだ……
「け、怪我とかない……?」
「大丈夫だよー?」
むっくりと上半身を起こし、メリーはにっと笑ってみせる。
二人はラズリーがこの街へ訪れる前から、時々模擬戦をして高めあってきた仲でもあるのだ。
「アチェリーちゃんほんっと戦いの天才だよねぇ。そのうちラズリーさんにも勝てるんじゃない?」
「さ、さすがにラズリーさんには勝てないよ……。
というかほんとにあの人何者なんですか……。やたら強いだけじゃなくてみんなをこんなに強くして……」
脳裏に1度も勝てたためしのない強者の顔を思い浮かべ、アチェリーは口を少し尖らせた。
「どう考えてもラズリーさんは追放されたっていう聖女でしょ? 名前一緒だし、ここに来た時期も合うし」
「セイジョ……? なんですかそれ……?」
「え、知らないの?! ……いや、まぁ他所の国から来たアチェリーちゃんなら知らなくても仕方ない……のかな?」
メリーはアチェリーが聖女について知らない理由に一人納得する。
――アチェリーは未だ、自身の出生について語ったことはない。
彼女がこのシリスの街にたどり着いたのは、今から四年前のことだ。
路地裏で弱り果てていたアチェリーを拾ったのはメリーである。
その一年後、アチェリーは自ら兵役に志願し鍛練を重ねてきた。当時からアチェリーは、平和なシリスの街の中では頭ひとつ抜けた強さを持っていた。
「もっと、つよくならなきゃ……」
臆病で泣き虫で引っ込み思案なアチェリーが、それでも貪欲に強さを求める理由。
それはきっと、語らない過去にあるのだろう。
――いつかわたしにも教えてくれたらいいな
そう、心の内に秘めるメリーなのであった。
お読みいただきありがとうございます!
なんと!
この作品がテレビアニメ化確約の『アニセカ小説大賞』の最終選考に残りました!!
応募数6000作品中の29作品のひとつです!
ここまで来れたのは皆様の応援あってこそです。ありがとうございます!!
最終結果の発表は5月頃です。
これからもよろしくお願いいたします。




