第44話 末路
たいへんお待たせしました。後書きにご報告がございますのでよろしくお願いいたします。
「お、俺たちはどうなるんだ……?」
「だ、大丈夫だ! きっと本国から助けが来るはずだ……!」
あちこちにクレーターだの焼け焦げた跡などの残る、だだっ広い平原のど真ん中。
そこに赤い鎖帷子を着た兵士たち千人ほどが手を縛られて1ヶ所に纏められていた。
彼らはサンムルス兵の生き残り。
40000人はいた軍勢も、我がシリスの脳筋軍には敵わずほぼ全滅。
……確か3割が死亡でも全滅なんだっけ? まぁここでは文字通り全員死滅の意味で通すけども。
そんな訳で僅かな生き残りである千人が投降してきたんだけど……
「じゅるり……おなかすいた」
「ヴェルディちゃんさっきもご飯食べたでしょ?」
「おやつは別腹……」
何やら意味不明なことを言ってるヴェルディちゃんを撫でて、私はサンムルス兵の処遇について考える。
ベープさんと相談した結果、彼らの未来は既に決まっている。
――死だよ、死!
千人も捕虜とかいらないし、そもそも養ってやる理由も余裕もこの街にはない。
よって死刑! 私が責任を持ってぶっ殺します!!
ただまぁ、彼らには彼らなりの事情もあるのだろう。
聞くだけ聞いておいてあげようか。
……〝嘘をつけない結界〟の中でね。
――――
「何故貴様らは投降した?」
ベープさんが千人のサンムルス兵に対して腕を組みながらそう問いかける。
周囲には何かあってもいいようにシリスの兵400人がサンムルス兵どもを取り囲むように待機している。
「これ以上の戦闘は無意味であると判断したからです……」
「つまるところ、我らに怖じ気づいたと?」
「……はい」
千人は皆、静かに頷いた。
「質問を変えよう。投降して何を企んでいる?」
「た、企みなどっ……! 何もしません! 労働力が必要ならば従事いたしましょう!」
「それは本当か?」
お、ベープさんからハンドサインだ。
私は『嘘をつけない結界』を作り出し、彼らを包み込む。
「『嘘です』なっ!?『隙を見て住民を人質にし、蛮族たるお前たちと交渉する計画だ』――く、口が勝手に……!?」
「『本国の特記戦力が来ればお前たちなど虫のように踏み潰してくれる!』」
「『お前たちの娘も嫁も犯して串刺しにしてやる』」
口々に千人のサンムルス兵たちは『本心』を言葉にしてゆく。
……本気でもう害意がないならちょっとは慈悲をかけてやろうか考えてやらんこともないと思ってたけど、こりゃもう決まりだね。
「ほう? さすがは誇り高きサンムルスだ。希望を失っていないようだ」
青筋を浮かべ、ベープさんはシリスの兵たちを退かせる。
……このサンムルス兵の処理は私がやるつもりだ。さすがに拘束して無抵抗の奴らを嬲らせるのは彼らにとっても教育上よくないからね。拷問の練習台はもういるし、他はいらないかな。
それじゃ、シリスの兵たちも全員避難したし新技で殺っちゃおっか。
「や、やめてくれ! もう危害を加える気はないから!!」
「故郷で妻が待っているんだ!!!」
このだだっ広い平原のど真ん中にサンムルスのウジ虫どもを纏めて置いておく。
私は一定距離離れた所から、『詠唱』を開始する。
――「『異相』」
空が割れた。
――「『不空』」
割れた空に紅い光の粒が集まって行く。
――「『霹靂の産声』」
天に集まった光の粒は、やがて巨大な弓をつがえる両腕の形となり――
「かみさま、助けて……」
地上から見上げるサンムルスの兵は、ガチガチと歯を鳴らしながら祈るように手を合わせた。神にすがるつもりかな? その神様はお前たちに死ねと仰っておりますが?
――私とてこの1ヶ月、アルコア様に修行をつけてもらっていたのだ。体感時間を引き伸ばして、実質一年くらいの修行だ。
その果てに開発した、新たな魔法。
「 術式解放――【蕃理の雷霆】」
そして矢は地上へ放たれた。
ほんの刹那に満たない一瞬。
天を衝くような紅き光の柱が立ち登り、昼間だというのに太陽の光すら打ち消す極光が辺りを照らした。
本来の威力は都市くらいなら消し飛ばせる程度。ただし結界や指向性を持たせることで、攻撃範囲は可能な限り狭めている。
これなら、神にも通じるかもしれない。
紅き雷光は千人ウジ虫を苦痛なく焼き尽くし、魂を神の元へと送り届けたのであった。
……痛みはなかったでしょ? これが聖女たるの私からの慈悲。
ま、アルコア様がその魂をどうするかは知ったことではないけどね。
*
「――あ、あれ? 俺たち生きてる……?」
瞼を開けたサンムルスの兵たちは、自分たちが生きていることに困惑していた。
平原にいたはずなのに、なぜか今は森の中にいる。その数はおよそ100名。
「た、助かったのか……?」
「やっ、やった……!! シリスの蛮族どもめ、いずれ後悔させてやるからな……!」
未だ手足は拘束されたままだが、最大の命の危機は脱した。どうにかして拘束を解くことができれば、後は補給部隊と合流し逃げ帰るべきだ。
そう、誰もが考えていた。
「……活きが良いね」
そこへ現れたのは、灰色の獣人の子供。顔つきからして一見少年のように見えるが、ピンク色のフリフリのスカートを履いているあたり女の子なのだろう。
「ちょうどよかった! そこのキミ! ちょっとこの手を縛ってる紐を解いてくれないかい? 美味しいものあげるから!」
兵の一人は、獣人の少女にそう頼み込む。
「美味しいものくれるの?」
「あ、あぁ!」
――ラズリーが極光の矢を放つ寸前。ヴェルディは、転移によりサンムルスの兵100名ほどを街から遥か遠くの森へと隔離させていた。
――消化不良だった。
本当は戦場でたらふくお腹を満たしたかったのに。
シリスの兵に戦闘経験を積ませる……という名目で、ヴェルディは今回戦いに出ることはなかった。
――だから、つまみ食い。
「はぇ? や、やめろ! 来るなバケモ――」
森の奥で悲鳴がこだまする。
ある者は母親に助けを求め、ある者は口汚く罵った。
しかし、ここは人里離れた山間の森の奥。何をしようとも彼らの運命は誰一人として変わらなかった。
「――けぷ。ごちそうさま」
お腹いっぱいになったヴェルディは、そのまま転移によりシリスの街へと何事もなかったかのように帰るのであった。
おやつ補給ができてご満悦なヴェルディちゃんなのでした。
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【大切なお知らせ】実は私に脚本の案件が舞い込んできたためしばらく更新頻度が落ちると思われます。案件の詳細は明かせませんが、エタるわけではないためご安心くださいませ。
書籍化じゃないヨ。




