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第43話 シリスの悲劇 下

魔女兵器はいいぞ(亡霊)

 コード師団長と呼ばれるその男の逸話は、どれも残虐なものだった。


 滅ぼした村の人間を、ただ殺すのではない。


 母親の目の前で子の四肢を切り落とし、芋虫のように悶える子をじわじわと串刺しにする。


 そうして絞り出された母親の悲鳴をつまみに、コード師団長はワインを飲む。


 無辜の民のあげる金切り声を聞きながら飲むワインは格別だ。ストレス解消に安眠作用、とにかく心と体に良い健康的な趣味である。


 そんな彼の趣味は帝国崩壊後に始まったものではない。


 サンムルスは帝国崩壊以前にも、小規模ながら近辺へ軍事侵攻を行っていた。そしてそこで前線に立ち指揮をとっていたのもコード師団長である。



 今回も――『必要なぶん』以外は、同じように串刺しにしてやろうと、そう画策していた。



 だが――








 *








 ――どうやら気づいたようだね。


 私にはこの結界内で起こった出来事を手に取るようにしてわかる。


 街の人たちが目を覚まし、遠くで物音がすると騒いでいるところも。


 この戦場にサンムルスの兵はもう半分しか残っていないことも。


 ここから幾分か離れた所に補給基地がある、ということも。


 そして、この髭のおじさんが1番偉いということも。


 名前はコード。役職は師団長だね。彼の動向は侵攻開始前から見ていたよ。寝ている時も、体を洗っている時も、トイレしている時もね。


 彼らの敗因はふたつ。



 敵を嘗めて数に任せて突っ込んできたこと。


 それと、相手が悪かったってことかな。



 作戦会議にはこちらもリモートで参加させてもらったよ、シリスの全兵も一緒にね。


 通信水晶の術式を応用して、彼らが作戦会議していら所を空間に映像を投影したりしてね。


 それで……占領した後には、シリスの奴等の半分は串刺しにしてやるだとか、女は壊れるまで慰みものにした後にバラバラにして豚の餌にする……とか。


 ここでは言えないような事も色々。


 そんな会話を聞いたシリスの兵の皆さんは、静かにブチギレた。

 実質初めての戦闘だというのにみんなやたら殺意高いのは、そんな理由がある訳。



『く、クソッ……! なんなのだ、特記戦力がこれほど住む街など聞いたこともないぼ!?』


 おや? そんな事を呟くコードの近くにゴールくんが来てるね。

 彼も上位精霊契約者である。


『こ、今度はなんだっ!?』


 コード師団長の近くの人間が、バタバタと倒れ始めた。みんな喉を抑えて、顔を紫色に染めながらひゅーひゅー言ってるよ。


『お前がコード師団長?』


『い、いかにも! お、大人しく投降するならばこれ以上の危害は加えぬ!!』


『断る。……眠い、こいつはメリーちゃんに任せよっと……』


 ゴールくん、あくびしながら師団長に背中向けてるんだけど? いやね、彼はすんごいめんどくさがりやなのよね。


 本当なら捕まえるなりしてほしかったけど……ま、もう少し泳がせてもいっか。捕獲はいつでもできるしね。


『めんどいし消し飛ばしちゃうか……』


 ゴールくんがふっと息を吹きかけると、それはたちまち旋風となり、立ち昇り、竜巻となった。


『うわああぁぁぁっ!?』


『た、助けてぇぇぇっ』


 さて、ゴールくんは風の上位精霊契約者だ。


 その能力は風を引き起こす……だけではなく、『気体』を産み出したり操る事もできる。


 さっきは空気中から呼吸に必要な『酸素』という成分を抜いて窒息させたのだ。

 格下に限り体内の水分に作用するカトラくんの能力とは異なり、大気中に干渉する能力故に格上をワンチャン降せる恐るべき力だ。


 まあ私には効かないけど。


 ……特記戦力、っていうんだっけ。単独で万の兵以上の戦闘能力を有する『個人』あるいは『個体』、もしくは兵器。


 5人の精霊契約者たちはみんなその特記戦力に足を踏み入れているよ。

 やろうと思えば彼らのうちの一人だけでもこの敵どもを駆逐できるんじゃないかな?


 ただまぁ、戦闘経験を積んでもらうためにある程度加減して一気に狩り尽くさないようにしてもらっているけれど。





『ひぃ、ひいぃぃぃぃぃっ!!』


 逃げ場もなく、地獄絵図を走り回るコード師団長くん。

 ほらほら頑張れ頑張れ♡


 そっちには『メリーちゃん』がいるよ?





 ――刹那、白い閃光が迸る。


 ――次の瞬間、遅れて轟音が大気を叩き割る。辺りに立っていたサンムルスの兵どもは、黒く焼け焦げ倒れ伏した。


『るんるん♪』


 彼女は戦場をスキップで駆け回る。その度に辺りに白い稲妻が迸り、瞬きする間に千人もの敵兵が叩き割られた。



 ――コード師団長は、何度目かの絶望に身を打たれた。


『こっ、この場に我らの〝特記戦力〟がおれば……』


 ほうほう? そういえばサンムルス自治区って特記戦力を何体か保有してたっけ? だから帝国も安易に手を出せないままだったと聞くよね。


 まあそれは置いといて……彼女の名前は『メリー』。


 契約精霊の属性は雷で、電撃を高い出力と少ない魔力燃費で操ることができる。


 単純攻撃力なら、5人のうちで1番高いんじゃないかな? 出力を最大まで上げれば街くらいは消し飛ばせそうだし?


 ただ……彼女の本領は別にある。



『ほっ、本国に連絡しなくてはっ……!!』



 おっとぉ?


 コード師団長くん、ここで懐から通信水晶を取り出して、岩の影でサンムルス自治区と連絡取ろうとし始めたぁ!! 頑張れ頑張れ~!!


 遠くで雷をどんどん落とすメリーちゃんから目を離さず、コードくんは水晶を起動する。


『こっ、こちら東部遠征師団、コード師団長っ!! 至急戦況を報告したく連絡いたしました! どうぞ!』


『こちらサンムルス帝国(・・)将軍、マクスウェル。そんなにあわててどうしたのかね? 腹でも壊したか? ハッハッハ』


『シリスの街へ侵攻中の遠征師団四万はっ、現在進行形で壊滅……!』


『……はい? 悪い冗談はやめたまえ、四万の兵とやりあえる戦力がそのような辺境にいる訳が――』


『特記戦力です!!! シリスの街には特記戦力が――』


 そこまで言いかけた所で、コードくんは言葉に詰まった。


 ――視界から、メリーちゃんが消えたのだ。


『わたしメリーさん。今、オヌシの後ろにいるのぉ』


 ブツンッ――


 コード師団長くんの背後に現れたメリーちゃんは、即座に通信水晶を叩き割った。


 メリーは音速で移動できるのだ。


 脳や神経の電気信号を微弱な雷魔法で強化する。これにより、本来脳からの指令を行動に移すまでの0.1秒というタイムラグを極限まで減らす事に成功。


 圧倒的な身体強化に加えてこの神速の俊敏性。


 たぶん今この場にいる他三人の精霊契約者なら完封できるんじゃないかな?

 ヘブルスの街へ行った子相手だと厳しそうだけどね。あの子は相性次第だけど、たぶんシリスの兵では最強じゃないかな?


 まあ、それはともかくとして。


『し、死にたくな――』


『少し眠ってもらうよ』


 メリーちゃんはコード師団長くんの首を殴って意識を刈り取った。

 彼には捕虜になってもらおうと思うんだよね。



 さてさて、開戦から一時間弱。


 四万いたサンムルス兵は、もう1000人ほどにまで減っていた。


『もっ、もうやめてくれぇ……投降するからっ……』


 僅かな生き残りたちは武器を捨てて両手を上げ、もはや戦意は欠片もない。


 ひとまず決着……かな。彼らの処遇は最初から決まってるから一旦置いといて……


 シリス兵に犠牲者はなし。多少の怪我人はいるけど、どれもがかすり傷。


 シリスの兵士さんたちの初めての本格戦闘は、こうして大勝利を収めたのであった。








千人の処遇は……まぁ、ろくでもない事になりそうですね(よだれをじゅるりと垂らすTSケモショタロリの影……)



面白い、続きが気になると思っていただけたらブクマや星評価をよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
良いですねぇ上位者の目線で悲劇が進んで行くの  焦りも恐怖もすべてが筒抜け、見えないはずのコード師団長の焦り顔がしっかりと見えますよ……まぁこれからもっと酷い目に会いそうだけど是非もないよね  とい…
これはまとめて串焼きにされそうですね…
Q. 約1000人の処遇は? A. サンドバッグorおやつor拷問練習台 何か間違えてるだって?間違えてないさ バクッ、ゴクン ほらこの様に(自らの身を犠牲にする解説者の鏡(無限蘇生有り))
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