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閑話 アズマ親子の会話

ある日の夜遅く。

親子で寝酒を酌み交わす、ジルベールとジラルド・アズマ親子の会話を盗み聞き。




「それにしてもようやくか……ようやくお前が“戻る前”の時代に到達し(たどり着い)たな」


「……やっぱり親父には気付かれていたか。薄々そうじゃないかとは思っていたけど。いつだ?いつ俺が巻き戻った俺だと気付いた?」


「そんなものは最初からだ。十六のガキんちょだったお前にお前の魂が重なった感覚がしたんだよ。それで“コイツ時戻りの術をしやがったな”と思ったんだ。他のどんな魔術を探してもそんな状況になるものは存在しないからな」


「まさか最初からバレていたとは……さすがだね、恐れ入ったよ」


「ふふん。こちとら伊達に数々のダンジョン攻略をしてないさ。……それにしてもよくあの古代魔法を成功させたな」


「……俺ひとりの力では成し得なかったと思うよ。もう一人の人物の凄まじい執念が成功に導いたんだ……」


「そうか。……ではその人物が対価を?」


「ああ……」


「……なぁ、レリーフのトリセツに記されてあった、身近な者への影響というアレ、間違いなく母さんの奇病だったと思わないか?」


「……じつは……俺もそう感じていた……」


「影響というのはある意味代償のようなものだ。そのことについて何も考えなかったのか?」


「身近な者に起きるとあったから、判明した時点で対処するしかないと思ったんだ。あのときは本当にもう、それしか方法がないと思ったから。それに身近な者への影響ならもう終わったことだと思っていたんだよ……」


「もう終わったと?なにかあったのか?」


「ケルベロス牧場から引き取った、俺の愛犬ベロスのシッポがハゲた……地獄の門番の一族の者がシッポハゲだなんて……見ていられないくらいに気落ちしてっ……可哀想だった……!」


「おまっ……ふざけんなよっ!!古代魔法の影響がそんなもんで済むわけねぇだろっ!よくも俺の小芋ちゃんをっ!!」


「悪かったよ!本当に申し訳なかったと思ってる!俺だって大切な母さんを病に罹らせてしまって辛かったんだよ!だから命懸けでダンジョン攻略をしたんだっ!」


「んなものは当たり前だっバーカ!」


「バカとはなんだっ!」


「バカだからバカと言ったんだっ!!」


「なにおうっ!?」


「やるか?久しぶりぶりにやるか?まだまだお前なんぞにゃ負けんぞ!!」


「上等だっ!!」



「…………うるさい。何をやっているの」


「メ、メル……」

「か、母さん……」


「トイレに起きたらリビングからギャーギャーと聞こえて何事かと思ったわよ。ご近所迷惑でしょ」


「「だってジルの奴がっ」親父がっ」

「うるせぇっつってんのがわかんねぇのか」

「「あ、ハイ……」」


「わかったらとっとと寝ろ、人の安眠を邪魔すんな。わかったか?」


「「ハイ……」」


「ったく……」


「あ、メル待ってくれ…!ベッドに戻るのか?大丈夫か?体は辛くないか?」


紫竜(パープルドラゴン)の薬のおかげですっかり良くなったって言ったでしょう?それよりも安眠妨害の方が切実な問題よ」


「ごめん、ごめんな小芋ちゃん」


「もういいからイチイチくっつかないで。ホラもう寝るわよ。おやすみジルベール、あなたも早く休みなさいよ」


「わかった。おやすみ、母さん。……そしてごめん」


「男が一度決めたことを悔やむのは()しなさい。大切な人のためにしたことでしょう?それに、たとえ医師が匙を投げるような病だったとしても、あなたとお父さんなら何とかしてくれると最初から信じていたもの。ある意味奇病に罹ったのが私で良かったわ」


「母さん……ごめん、本当にありがとう……」


「さ、じゃあ休みなさい。ジネットちゃんの安眠を妨げるんじゃないわよ?」


「うんわかった。……おやすみ。母さん」


「おやすみ」


「ちょっ親父、こっそりアッカンベーをするなよ。子供かよ……」





そうやってアズマ家の夜は更けていくのであった。





メルシェの奇病は時戻りの術の副作用だったようです。

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