先生、あのね
やはりルベルト様を諦められないと思ってしまった私。
今のこの状況だけを見れば、前世と同じであることは明白なのに、今世のルベルト様が私と同じ気持ちでいてくれているのではないかと感じてしまうと、どうしても彼を諦めることができないと思った。
「仕方ないわよね。前世を思い出す前にはもう、ルベルト様に恋しちゃってたんだから」
彼に恋をしていなかったら、きっともうさっさとこの婚約を諦めてしまっていたと思う。
「すべてにケリをつけたら話したいことがあるってルベルト様は言っていたけど、一体どんなお話なのかしら……」
その上で私の気持ちを尊重するとも。
彼が今、何をしているのか。
何をしようとしているのか。
そして何を思っているのか。
私には何ひとつわからない。
だけど、それを見極めてから結論を出してもいいと思うようになった。
そのために前世のように深く傷つくかもしれないけど、今世の私はそれを悲観して自暴自棄になることはないし、なんならルベルト様のあの綺麗なお顔を一発殴ってやるくらいの気概もある。
だから、私は大丈夫。
どんな結果になろうともちゃんと受け入れて、自分の人生をしっかりと生きていく。
「そんな逞しい私に導いてくれたジネット先生には本当に感謝だわ」
私は机の引き出しからお気に入りの便箋と封筒を取り出した。
以前届いた先生の手紙に、
前とは違う人生を歩むと決めた私を支持すると書いてくれていた。
私の気持ちがそのときとはまた違うものになったことを、先生に伝えたい。
先生はどう思うかしら。
私の新たな決断も応援してくれるかしら。
私は記憶の中の先生に呼びかける。
先生、あのね。
私はやっぱりルベルト様のことが大好きなの。
傷つきたくなくて、今世は自分や家族のために長生きしたくて彼とは早々にお別れして新しい人生を生きようと思ったけど、なんかいつの間にかルベルト様に絆されちゃっていたのよね。
本当に困ったものだわ。
だからもう、こうなったらとことん困って、そしてルベルト様も困らせてやろうと思っているの。
ねぇ先生、私、間違っていないわよね?
自分の気持ちに正直に生きても、いいわよね?
「……会いたいなぁジネット先生……」
私はそうひとり言ちて、ペンを手に取った。
そして今の自分のありったけの気持ちを文字にして書き進めていく。
すらすらと紙の上を走るペンの筆音が、室内に心地よく響いた。
そうして書き上げた手紙はさっそくサラに届けてもらった。
それから数日経った、ある休日のことだった。
「アイリル!お久しぶりね!」
「ジ、ジネット先生っ!?」
私の恩師、元女性家庭教師のジネット先生が私に会うために、バーキンスの屋敷へとやって来た。
あー!せっかくジネット先生が登場したのにぃぃ!
今日は書き書きの時間が取れず、短め更新でごめんなさい。
( ´>ω<)人メンゴ! ←昭和か