78 再会の喜びを(ちょっと冷えてきてません?)
「……お母さん、もう負荷しないから潰さないでぇ……」
一体、アワーフレッタさんはどのような夢を見ているのでしょう?
うなされている彼女に内容を尋ねたいと思っていたら、目が覚めたようです。
「わ、私、何をしていたの? 確か、聖女様がお城に攻めてきていたような……」
私の目と目を合わせながら、彼女はまだ夢の中にいるようでした。
「あの、人の膝の上で本人に失礼な事を言うのは止めませんか?」
「え? ええ!?」
彼女が私を見つめている時、私もまた見つめているのです。それに気付いた彼女は慌てて飛び起きました。
「わ、わた、ひざっ。せい、ひざっ」
「そこまで動揺しなくても良いではないですか。私達の仲なんですから」
「え、その、良いんですか?」
謁見の間で再会した時の凛々しさや勇ましさが出ていませんが、私が知る懐かしい反応をするアワーフレッタさん。
「もちろんです。所で、体の方は大丈夫ですか?」
「体ですか? 何だか前より調子が良いように思いますよ」
良かったと、ホッと胸を撫で下ろしました。
意図したものでは無かったですし、もちろん全力で回復魔法を使いました。その上で何かあったらと考えたら不安だったんです。
「それで、ええっと、私はどうして聖女様の膝で眠っていたのでしょう?」
その辺りの記憶が無くなっているようです。でしたら、無理に思い出す必要は無いでしょう。
「アワーフレッタさん」
「は、はい」
「あなた、疲れていたのよ」
私は、自分なりに考えた温かい目で彼女を見つめ、肩を叩きました。
「確かに、とても疲れていましたね」
「私との突然の再会に大喜びして気を失ってしまったんですよ」
完全なる嘘、という訳ではありません。事実をオブラートで何十、何百と包んで元の形が分からないようにして手渡しただけなのです。飲んでもらっただけなのです。
「ああ~、そうだったんですね。でも私、渾身の負荷魔法を聖女様にかけた記憶があります。あの時、そんなに大喜びしてたのでしょうか? 寧ろ、潰れていた聖女様にがっかりしていたような……」
私としては、突然居なくなった事に対しての鬱憤をぶつけられた感じでした。
でも、二人で訓練していた時は結構すぐに順応していたので、そこもまあ、アワーフレッタさんにとってはがっかりポイントだったのでしょう。
「不意打ちという事もあって、時間がかかっただけですよ。それに、私としていた時よりもずいぶんと強力な負荷になっていましたし。かなり使い込んだんですよね?」
私はそう言って彼女の努力と研鑽を称えました。彼女はそれがとても嬉しかったようで、表情がとろけたマシュマロか、チーズかとばかりに緩んでいました。
「ちょっと因縁を付けてきた雑兵達を一から鍛え上げ、昼夜問わずに負荷魔法を使い続けましたから。あ、聖女様の考案した訓練法で、精鋭が出来たんですよ」
「で、できたんですか……。それは……凄いですね」
出来たという表現が物のような感じで、ちょっと見ない間に言葉にのこぎり的なギザギザが付加されるようになったなと思いました。
「今日は仕上がったので、一度休ませていた所だったんですよ。明日には王様に進言しようとしていたんですよ」
「進言? 何についてですか?」
「聖女様捜索の増援です。でも、戻って来てくれたので、明日からもまた訓練させますね。もしよろしければ、明日にでも聖女様の訓練法の効果を見てもらえませんか? 絶対に皆も喜びますから」
そう言って笑う彼女の表情に少し狂気が見えた気がして背中が寒くなりました。




